第33話 冒険者ギルド支部長に説明しよう
ヴァージルは状況を詳しく把握するためフィオンとレイナにまで説明を求めた。翔太やレイナはもちろんのこと、いつも冷静なフィオンでさえもヴァージルのあまりに鬼気迫る様子にドン引き気味にこの訊問に付き合った。
翔太達の説明が終わった後、ヴァージル達ギルドの職員がなぜそれほど慌てたのかの簡単な説明があった。
翔太達が倒したボスコカトリスの名称は『コカトリスロード』、コカトリスの上位種であり幻獣種の一つ。Aクラスのコカトリスのさらに上位種であることからもわかるように凄まじい戦闘能力を有する魔物である。通常この生物の生息域は魔の森の『深域』と言われており、『中域』や『浅域』には出てこないのが通常だ。
だが凡そ35年前に空を飛べる魔物がこの『深域』、『中域』を超え近隣の街にまで現れた事があった。それがコカトリスロードであり、この魔物により2つ街がいとも簡単に壊滅した。そしてこの壊滅した二つの街が今のエルドベルグとメガラニカである。
その教訓として、今でもエルドベルグでは冒険者ギルドの職員になった初日にコカトリスロードがいかに恐ろしい化物かを聞かされ骨の髄までその恐怖を叩きこまれるらしい。
これは再度のコカトリスロードの襲来に対して迅速に行動させるためであろう。以上の事情からコカトリスロードの討伐推奨クラスはSSSであり、【局所災害指定魔物】というおまけもついている。
この【局所災害指定魔物】とは冒険者ギルドがギルド全体で討伐すべきと指定した魔物の事を言う。この指定がなされた魔物が出現した場合には、一定クラス以上の冒険者に討伐参加義務が生じる。これが冒険者に対し冒険者ギルドが課す唯一と言っても良いほどの義務だ。
この局所災害指定クラスの魔物を討伐した場合には冒険者は速やかに冒険者ギルドの支部長へその報告をする義務がある。そのコカトリスロードの魔晶石を翔太はギルドの窓口で他の魔物の魔晶石と一緒に提出したのだ。ギルドの職員が慌てふためくのも無理はない。
フィオンも倒した魔物がコカトリスロードだとは思ってもいなかったらしくたいそう驚いていた。レイナも同様で小さな口をポカーンと開けていた。
ヴァージルは翔太達自身が討伐した魔物がコカトリスロードだと気付かなかった事を理解したらしく、酷く頭を抱えている様子だった。
自分達がひどく悪い事をしたような納得がいかない気分を味わいながらヴァージルにこれからどうすればよいのかを尋ねようとしたとき、ネリーが小走りに戻って来た。
彼女は翔太達にギルド支部長が呼んでいるので来てほしいと頭を下げて頼んでくる。翔太としては正直拒否したかったが、場の雰囲気がそれを全力で否定しているので仕方なく了承する。するとヴァージルがギルド支部長の部屋へ案内してくれた。
ギルド支部長の部屋はギルドハウスの最上階である4階にあった。
この4階は客を招く客間のような階になっており、他の階とは比べられない程の豪華な作りとなっていた。
通路には赤いカーペットが敷かれており、窓際の台の上には豪華な壺が置かれ、壁には如何にも高そうな剣が飾られている。この階がかなりの財をもって作成されたことは間違いあるまい。その一番奥の一室にギルド支部長の部屋があった。
ヴァージルが部屋をノックして全員が部屋へ入る。その部屋はかなり質素で、他の客間とは一線を画していた。この部屋の主の趣味なのだろうか。
ヴァージルにソファーまで案内されると、ソファーには妙に威圧感のある筋骨隆々の男性が座っていた。その男性は立ち上がり翔太に握手を求めてきた。
「俺がこのエルドベルグの支部長のデリック・コルトレーンだ。よろしく頼む。」
「ショウタ・タミヤです。よろしくお願いします」
ギルド支部長デリックの差し伸べられたゴツゴツした手を握り返す。デリックはニヤッと笑うと翔太達にデリックの正面に座るよう勧めた。翔太達がソファーに座ると、ヴァージルが全員分のお茶を出し、デリックの後ろに控える。
翔太はデリックの観察を開始する。
デリックは白髪の頭を綺麗に刈り上げ、立派な髭を生やした50代後半の男性だ。服を着ていてもわかる強靭な肉体は彼が歴戦の勇者であることを窺わせる。
「フィオン、お前も久しぶりだな。元気で何よりだ」
「デリックさんも、相変わらず元気そうですね」
フィオンの声色から微妙に緊張している事がわかった。レイナにおいてはガチガチの機械のようなぎこちない動作でソファーに座り、それ以来微動だにしない。こうした彼らの態度からみても翔太の目の前の人物は超がつくくらいの大物なのだろう。
「フィオン、お前いいかげん昇格試験受けろよ! いつまでAクラスにいるつもりだ?」
デリックはフィオンに刺すような視線を送る。
「ま、まあ、いいじゃないですか。今日俺は関係ないでしょ?」
デリックは呆れたような顔になるが、すぐに翔太に視線を向ける。
「お前がコカトリスロードを討伐した人物か?」
翔太は遠慮がちに頷く。自分がボスコカトリスを倒したことにより深刻な事態になったと若干引け目を感じていたからだ。
翔太のこの答えにデリックは翔太の全身を舐めまわすように見回す。その如何にも品定めをするような視線が嫌で翔太は僅かに下を向く。ここでフィオンが翔太に確認をとってきた。
「なあ、ショウタ。このオッサンは信頼ができる。お前の事を話してもいいか?
どのみち俺以外の協力者も必要だろう? 俺もあと数か月でこのエルドベルグを去らなければならんしな」
フィオンはちらっとヴァージルに視線を向ける。ヴァージルの頑な表情から退出を命じられても出てくつもりはない事が翔太にはわかった。ヴァージルは変に頑固なのだ。
フィオンの視線とヴァージルの表情を見てデリックは肩を竦めながら念押しする。
「こいつは大丈夫だ。ギルドの受付嬢などやってはいるが、幹部候補で俺の側近だ。口は堅い」
フィオンは翔太に視線を向け、どうするかを無言で問う。
翔太の事とはおそらく翔太が異世界人であることだろう。フィオンのアドバイスを拒否する程、自らが異世界人であることを隠すつもりは翔太にはなかった。だからフィオンに大きく頷く。
「デリックさん。前置きはなしです。ショウタは異世界人です。今回のコカトリスロードを倒せるほどの強さもすべてそれが原因でしょう」
後ろで控えているヴァージルが表情を崩す。これに対しデリックはフィオンの言葉に僅かに眉を動かしただけで、目を瞑り何やら思案し始めた。この様子から翔太が異世界人であることはある程度予想をしていたと思われる。
(この人、僕が異世界人と知っていた? 異世界人って実のところそれほど珍しくないのかな?)
片目を開けてフィオンに視線を向ける。
「フィオン、この坊主はアズマさんの関係者か?」
(アズマって、確かフィオンのお師匠様だよね。日本人みたいだし、できれば会って話をしたいんだけど)
翔太はその名前を聞いたとき妙に懐かしく感じていた。
「いえ、違いますよ。ショウタが魔の森の『中域』付近で倒れているのをレイナが見つけました。それでこの町に連れて来たのです」
「そうか……それでフィオンから見てこの坊主の強さはどうだ?」
その問いにフィオンが少し躊躇した。こんなフィオンを見るのは、翔太はもちろん皆も初めてだったらしく、フィオンの次の言葉を真剣な面持ちで待つ。
「確認ですが、今から話す事はここだけの話にしていただけますか?」
フィオンはデリックとヴァージルに視線を向けながら尋ねる。
「わかった。ヴァージルもいいな?」
「はい。もちろんです」
デリックとヴァージルに了解をもらえて胸を撫で下ろしたような様子でフィオンは話始める。
「ショウタの強さは俺を遥かに超えています。それどころか師匠と同等クラスの強さを既に持っているでしょう。それに――」
フィオンの言葉にこの場にいた誰もが絶句した。ヴァージルやレイナはもちろんのこと、今まで冷静であったデリックでさえも驚きの表情を顔に浮かべていた。
「アズマさんよりもか? さすがにそれはないんじゃないのか? あの人、正真正銘の化物だぞ?」
「師匠の強さは俺が一番知っていますよ。今日のショウタには師匠の様な独特の凄みがあった。師匠と今のショウタがガチでやりあってどちらが勝つかは俺程度には判断がつきかねます。
ですが俺が真に鳥肌が立ったのはそんなことではありません。ショウタの成長の速さです。ショウタは最初Gクラスの冒険者程度の実力しかありませんでした。俺どころかレイナでさえショウタと戦えば一瞬で勝負は決していたでしょう。
ですが1日終了後にはレイナを超え、2日目終了後には俺をも超えました。たった数日後に師匠に実力がならぶ。それが何を意味するか、デリックさんには十分おわかりなのでは?」
デリックは先ほどの冷静な表情とはうって変わって、苦虫を噛み潰したような表情を顔一面に浮かべていた。フィオンの言葉の意味が十分すぎるほど理解できたからだと推測される。
「悪いがさすがに数日でアズマさんに実力で並ぶとはとても考えられん。だがコカトリスロードを倒したのも事実だ。ある程度の信頼性はあるだろうな」
デリックは僅かに思案していたが、すぐに翔太に語りかける。
「なあ、坊主、いやショウタ。この都市が危機に瀕したとき、いや冒険者ギルド全体で対処しなければならない緊急の事態に陥ったら、その事態の収拾に協力してもらいたい。
もちろん異世界人のお前にはこの世界の住人を命懸けで助ける義務なんてない。だがそこをなんとか願いする。この通りだ」
翔太はこのデリックの頼みに当惑した。翔太にとって今重要なのは、元の世界――地球に戻る方法と日葵、柚希、雪の居場所の情報の収集だ。進んでゲームや小説における勇者の真似事をするつもりはさらさらない。
他人の危険に命を懸けられる程正義感溢れる人物であるとも、英雄気質のある人物であるとも翔太自身思っていない。確かに目に見える範囲で魔物に襲われている人がいれば、翔太に可能な限りで助けはするだろう。だが地球に戻る方法と日葵、柚希、雪の居場所の情報の収集を天秤にかければ、確実に情報の収集をとる。翔太自身、自分が最低な人間だとはわかっている。だがこの異世界での生活は遊びではない。文字通り命を懸けたゲームなのだ。慈善事業などまっぴらごめんだった。
もっとも、デリックの頼みを断る事も同じ理由でできない。冒険者ギルドはこの世界において最大の勢力と言っても過言ではない。ギルドに集められる情報の数と密度は他の組織とは比べものにはならないだろう。だからデリックに問う。
「僕の二つのお願いを聞いていただければ御受けいたしましょう。よろしいでしょうか?」
「それは?」
「僕は元の世界に帰る方法を探しております。ですからこの情報をギルドで集めてほしいのです。
もう一つは、ヒマリ・ツキミヤ、ユズキ・タミヤ、ユキ・サイオンジいう女性達の居場所の情報の収集です。彼女達も僕と同じこの世界へ召喚された者です。これが僕のお願いの内容です。ギルドに叶えられますか?」
まるで試すような翔太の言葉にデリックは眉を僅かに動かす。
「わかった。その二つの願い、ギルドは全力でお前に協力することを約束しよう」
「ありがとうございます!」
翔太は思わず立ち上がって頭を深く下げる。その様子を見てデリックは今までの真剣な顔つきを崩し口端を僅かにあげた。
今までの空気が凍りつくような張りつめた雰囲気が消え去り、まるで嘘のように穏やかな空気が部屋に充満する。
翔太がデリックのこの印象の変化に不思議な顔をしていると、デリックが説明する。
「お前が引き受けてくれてホント助かったぜ。ぶちゃけた話、本来冒険者ギルドはこんな頼み事などする必要がないんだ。クラスの高い者には討伐参加義務が課せられるからな。
だがお前達異世界人の能力なら冒険者ギルドにこだわらんでも就職口など腐るほどある。加えて、クラスの昇格試験を受けなければいつまでも討伐義務は生じない。つまり、討伐参加義務自体が無意味なんだ。
だから頭を下げてお願いするしか方法がなかったのさ。それでも引き受けてもらえる確率など五分五分だがな。だれも自分達の生まれ故郷でもない世界に命を掛けようとは思わない」
この言葉を聞いてすこし心が軽くなった気がした。この世界のために命はかけられないことは、まさに翔太の今抱いている罪悪感に直結することだ。翔太がデリックのこの言葉に頷くと。デリックは話を続ける。
「それでだ。ショウタにはギルドクラスの昇格試験を受けてもらいたい。ギルドには面倒な規則があって、1週間に4クラスしか上げられない。だから今週は2日程使ってDクラスまで上げてもらいたい」
「まだ僕はギルドの依頼を一つもこなしてません。それでもいいんですか?」
「構わない。それはこちらで調整する。それに、コカトリスロードを討伐できるような奴がHクラスでいるなんざ、何かの悪い冗談だろ? 試験自体は全て受けてもらわなければならないがそこは我慢してほしい」
周囲もそこは同じ気持ちだったらしく、うんうんと頷いていた。
「わかりました。来週も試験を受けることになるんですか?」
話の流れから確実に受ける事になりそうだが一応聞いてみる。
「もちろん来週も試験を受けてもらう。来週はSまでだ。Sより上はSに上がってからまた考えるとしよう」
「はい。わかりました」
(Sクラスより上は僕の実力を見て決めるという事かな。
まだ、クラスを上げるメリットが僕にはわからない。情報が足りなすぎるんだ。フィオンがクラスを上げないのにも何か理由があるんだろうし、今はむしろSのままのほうが良い)
翔太はほっと胸を撫で下ろすが、そんな翔太の心を読んだかのように、デリックが断りをいれる。
「別にショウタをS以上のクラスにあげないというわけではない。
最後のSSSにするかどうかの判断だ。こればっかりは俺の一存だけでできるわけではないからな。SSSクラスへの推薦と各ギルド支部長の三分の二以上の賛成が必要なのさ。これらを満たすのはかなりの至難の業だ。まあ、これは俺に任せてくれ!」
「はあ」
翔太は気のない返事をする。クラスを上げることのメリットとデメリットが不明な今、当面はS以上に上がるのを見合わせたいと考えていた。その翔太の意思をデリックが読んだのだ。つまり、デリックのこの態度は消極的な翔太に対する牽制の意味も含まれている。
デリックは翔太の戸惑いを無視して話を進めていく。
「それでだ。急で申し訳ないが、明日と明後日に昇格試験を受けてもらえるか?」
「僕は構いません。それで明日はどんな試験をするんですか? 必要なものはありますか?」
デリックは少し上を向いて思案した後、再び翔太に視線を向ける。
「明日はHからEまでギルドクラスを3つほど上げてもらう。G、F、Eへの昇格試験はギルドハウス内での試験官による試験だ。明日はギルドが指定する職員と戦ってもらうことになる。武器と防具だけ持って10時にギルドハウスに来てくれ!」
「はい。わかりました。その話からすると、明後日は実地試験ということですか?」
「ああ、そうだ。Dクラス以上へ上がるにはクエストの実地試験が必要となる。明後日は試験官の同行のもとDクラス相当のクエストの実地試験を受けてもらう。
明後日は、冒険に必要な準備をしてギルドハウス一階受付前に集合だ。何か他に質問あるか?」
試験に関してはもうこれ以上聞く事はない。試験なんぞよりギルドハウスに来た本来の目的の方が翔太にとって遥かに重大だった。
「失礼を承知でお聞きします。僕が倒したコカトリスロードは換金できるのでしょうか?」
せっかく倒したのだ。仮に雀の涙であっても借金の足しにしたかった。翔太の必死の形相にデリックは完全に面食らったようだった。意外な人から質問が飛ぶ。ヴァージルだった。
「ショウタさん。まさか借金背負わせられたんですか? あの後ブルーノが提訴した?」
ヴァージルは亡霊のように青ざめながら翔太を見つめる。
「いえ、ブルーノさんはそんなことしませんでしたよ。あくまで別件です」
ヴァージルの自責の念を和らげようとした翔太だが、完全に失敗したようだ。さらに顔色が悪くなってしまった。レイナも事情は把握してはいないが、翔太が深刻な事態に陥っている事はわかったのだろう。心配そうな顔で翔太を見上げてくる。
そこでフィオンが翔太に代わってデリックに説明する。
「実はショウタはビフレスト王国第一王女、エレナ殿から訓練所の修繕費用として1000万G請求されているのです」
デリックはビフレスト王国第一王女の名前がここで出て来るとは思わなかったのか、目を白黒させていた。
「どういうことだ? 事情を詳しく説明してくれ」
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フィオンの説明を聞き終わって、デリックはあまりの馬鹿馬鹿しさに頭を抱え込んでしまったようだ。ブツブツ呟き始めた。
「な、なにやっているんだ? あのお転婆姫は――!」
頭を抱えるデリック、すっかり血の気が失せているヴァージル、事情を知り怒り狂うレイナと三者三様のリアクションをとりつつも、デリックが渋い顔で翔太に頭を下げてきた。
「ショウタ、俺の国の王女がすまない事をした。祖国を代表して俺が謝罪する。許してほしい。
勿論そんな馬鹿げた請求は俺が責任をもって握り潰しておく。なあに心配するな。俺とお転婆姫は旧知の仲だ。あの娘も俺には逆らわん。もし逆らうようならビフレスト王に直接告げ口するだけだしな」
「ビフレスト王ですか……」
思わず翔太の口から声にならない呟きが漏れる。
今までの王侯貴族の行動を鑑みれば、ビフレスト王に知られることは翔太の置かれている状況を悪化させることはあれ、改善するようなことないように思える。
そんな翔太の心を読み取るかのようにデリックは翔太の肩を軽く元気づけるように叩く。
「大丈夫だ。ビフレスト王は極めて理性的で聡明な方だ。今回のような事が王の耳に入れば確実に処分の対象だろう。娘だからと言って処分内容を違える人では決してない。
あの姫さんもまさか数か月間臭い飯を食べるのはごめんだろうし、すぐに撤回するさ」
確かにデリックに頼り切るのがこの場合一番良いのだろう。だがこれはビフレスト王とデリックの意向によるものであるし、訓練所を翔太が破壊したのも事実なのだ。
彼らの気が変われば再び借金地獄になる可能性も零ではない。その場合莫大な利子付で請求されるのはほぼ確実だ。エレナはそれくらい簡単にやる人物だろう。そうなれば今度は払う事が絶対出来ないという事態に陥る。とすれば翔太の取る方法は一つしかなかった。
「ありがとうございます。ですが僕が訓練所を破壊したのも事実ですし、有耶無耶にはしたくありません。
支部長には修繕費用1000万Gの払った事の証明をお願いしたいのですができますでしょうか?」
デリックは僅かに困惑しているようだった。本来払う必要がないものを払うという翔太の意図を掴みつかねているのだろう。
これに対しフィオンは思い至ったらしくたいして驚きもしなかった。フィオンもデリックほどビフレスト王家を信用していないのかもしれない。翔太の意思を尊重してくれている様子だ。
フィオンとは対照的にヴァージルとレイナは翔太にくってかかった。
「支部長に全部任せればいいじゃないですか? 今までの話でショウタさんにお金を払う必要がどこにあるんです?」
「そうよ、ショウタは全く悪くない。お金払う必要はないわ」
二人に凄まじい剣幕にたじろぐ翔太。フィオンが二人を諌める。
「止めろ、レイナ! ヴァージルも止めておけ。翔太が自分で決めた事だ。
それに今回の討伐した魔物がコカトリスロードならかなりの換金代金になるはずだ。そうですよね? デリックさん」
フィオンの言葉に大きく頷くデリック。
「ああ、SSSクラスの魔物だ。少なく見積もっても3000万Gは堅いだろうな」
「3000万G? そ、そんなにもらえるんですか?」
てっきり数十万G程度の換金代金になるにすぎないと思っていた。荒稼ぎをするためコカトリロードクラスの魔物の居場所を聞く気満々だった翔太は面食らう。
「当り前だ。本来SSSクラスの魔物はギルド総出であたるものなんだ。C~SSクラス冒険者数十人分の報酬としてはむしろ安いくらいだろ?
確かに今回はクエストの際の討伐ではないからかなり低くなる。だがコカトリロード程の力を持つ魔晶石からは希少級、特質級クラスのマジックアイテムや武器や武具などが多数作られる。ギルドとしてもその程度出しても全く惜しくはない」
これでほぼすべての問題が解決したといってよい。後はデリックに1000万Gの証人になってもらう事だけだ。
「ありがとうございます! それで修繕費用1000万Gをエレナ様に支払った事の証人になってもらえないでしょうか?」
「それはもちろん構わない。明日の午後に翔太の昇格試験が終わり次第出かけるとしよう。先方には俺からアポをとっておく」
ヴァージルとレイナはまだ何か言いたげではあったが、それ以上は口をはさまなかった。
明日の事をデリックと簡単に話し合いギルドハウスを後にする。




