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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
29/285

第28話 お金も貯めつつ冒険者としての技術も身に着けよう(3)

 今日も朝6時に起きて、ジャンとルネと遊ぶ。

 今日は『缶けり』を教えた。無論このアースガズル大陸に缶などあるはずもない。そこで、木材を変わりにする。

今回はモーズリーさんも参加するらしい。

 彼の情報を総合するとこの世界には子供達の遊びは数えるほどしかなく、しかも全て貴族の子息達が金に物をいわせてする遊び。ジャン達平民はその機会などほとんどないらしい。貴族達の生活様式を知っている時点でモーズリーさんも貴族と関わりがあるのだろうが、彼は一緒に食べると毎食貴族への不満を漏らしていた。翔太に害を及ぼす存在ではないだろう。

 缶けりの結果モーズリーさんが鬼だったわけだが、彼の圧勝だった。どうでもいいが、大人げなさが半端じゃない。ジャン達は地団駄を踏んで悔しがっていた。



 朝食をモーズリーさん達と食べて、冒険の待ち合わせ場所へと向かう。

 メインストリートを歩いていると申し合せたようにヴァージルと会う。翔太が通る時間と場所が毎日ほぼ同じだ。間違いなくそれが原因だろう。明日は時間をずらすことにする。

 ヴァージルは、今日は金髪の青年と一緒ではなかった。

 昨日みたいに激怒されても厄介なので、目が合うと直ぐに昨日の様に頭を深く下げる。

 翔太が頭を上げると、ヴァージルの顔が目に飛び込んできた。その彼女の目尻には涙が浮かんでいた。

 ギョッとしてヴァージルの顔を再度見て確かめようとするが、何も言わずに通り過ぎて行ってしまう。翔太は唯呆然と暫らくの間そこに立ち尽くしていた。




 今日も昨日と同様、レイナは翔太をあたかも透明人間のごとく扱った。フィオンも最初は眉を顰めていたが翔太とレイナの当人同士の問題だと判断したらしく、何も口を出してはこなかった。フィオンらしい選択である。

 魔の森の浅域に入るが今日は中域までほとんど魔物とエンカウントしなかった。

 

 中域に入り暫らく探索すると翔太達一向は川に行き当たる。

 かなり太い川で流れも速い。向こう岸に行くには橋がないと無理だろう。川の浅瀬がキラキラと美しく煌めいている。

 ここに来るまで暗く辛気臭い魔の森にいたので、明るい場所は気分が軽くなる。特にレイナの冷たい態度に気分がどん底状態であった翔太にとって良い気分転換になっていた。

 フィオンが翔太とレイナに視線を送る。


「暫らくここで休憩するぞ!」


 フィオンの言葉に頷いて河原に降り川の水に手を触れる。ヒンヤリとした感触がとても心地よく、今のどんよりとした心が洗い流されるようだった。それは、レイナも同じらしく、河原にしゃがんで右手を水につけてバシャバシャしていた。

 暫らく翔太はレイナの様子を窺っていた。なんとか機嫌を直してほしかったからだ。レイナはこの世界に来て初めての友達であり、救世主にも等しい存在だ。だからこんなところでレイナに見放されるわけには絶対にいかないのだ。

 そんなとき、翔太とレイナのいる河原の少し上流の川の浅瀬に一頭の緑色の馬が佇み、ジッと翔太達を見ている。


(馬? いや、こんな場所に馬が都合よくいるわけがないじゃないか。おそらく魔物だ)


 その馬は尻尾が魚の尾であり鬣が水草のような姿をしていた。


(っ!? あれってケルピー? 『魔物全集編』で読んだ。確か水辺にすむ妖精で、人を川に引きずり込んで喰らうだったかな?)


 翔太は頭からケルピーの知識を引き出す。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○ケルピー  討伐推奨クラスB

■形態:馬の姿をしており、尻尾が魚の尾であり鬣が水草のような姿をしている。

■生息地:川、湖、沼の近辺

■性質:妖精。火の属性の攻撃に弱い。水の属性には耐性がある。水弾を放つ。

    人を川に引きずり込んで食べる。

■対策:火炎系の魔法やスキルで攻撃すべき。水弾は防御壁で防御可能。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


『ロロロロロッ』


 ビュッ!


 その馬はカエルのような鳴き声で泣くと、レイナと翔太に向けて水の塊を弾丸のように発射してきた。

 翔太は河原のジャリを数歩踏み込みレイナの前にでる。そして左手の(てのひら)をケルピーに向け水刃を全力で叩き込む。4つの水の刃は、ケルピーが発射した水の弾丸をまるで煙のように掻き消してケルピーに迫り衝突する。だが衝突した水刃はケルピーの身体に触れるとただの水となって崩れ落ちた。

翔太に2つの強烈な力が体内に発生したのがわかる。その体の中で猛威を振るう力に顔を歪めながら、刀を鞘から抜く。

 今の翔太にはレイナを守ることしか頭にはない。身体が動かないなどささいな事だ。ただ目の前の魔物(じゃまもの)を排除することに集中してゆく。

 右手に持った刀を上段に構えて地面を蹴る。蹴った地面が抉れるほどの爆発的な瞬発力をもって、弾丸のように翔太の身体がケルピーに迫り、刀をケルピーの頭に振り下ろす。


 ザシュッ!


 ケルピーは頭から尻尾まで綺麗に縦断され、刀の衝撃波が川の水を吹き飛ばし、抉れた川底が姿を現す。


 レベルアップの際の負荷も同時に起こる。

 それは未だ嘗て経験したことのない程の凄まじい力のうねり。まるでその力は翔太を新しい生物へと昇華させていくかのよう。

 翔太は体内を縦横無尽に暴れる力に耐えきれず、川の浅瀬で片膝をついてしまう。


(こ、今回のはマジで辛すぎるよぉ……)


「翔太ぁ!!」


 レイナが悲鳴のような声を上げる。


(心配させちゃったかな?)


 翔太の身を案じながら近づいてくるレイナの姿に少し嬉しく感じながらも安心させるようにゆっくり立ち上がる。足が震える。軽い眩暈もする。だがレイナをこれ以上不安にさせないように必死で今の状態を耐える。


「お、おい、本当に大丈夫か?」


 フィオンも翔太の苦悶の表情に異常を感じたようである。翔太は脂汗を流しながらも笑みを顔に張り付かせ頷く。もっともその笑顔は大層引き攣ったものではあったのだが……。その様子をみていたフィオンが尋ねてくる。


「そう言えばお前、前にも同じように辛そうにしている事があったな? ひょっとしてどこか体悪いのか?」


 フィオンの言葉にレイナがビクッと震え顔が青白くなっていく。


(また心配させちゃったね。そんな顔しないでよ)


 世界が終わるような暗いレイナの姿など見たくはない。全部正直に言おうと思った。


「違うよ。これはそういうものじゃない。レベルアップの際の負荷。あと推測だけどスキルを複数取得したときの負荷も合わさったから特別辛いんだと思う。だから大丈夫心配しないで」


水を浴びせかけられたような顔でフィオンが翔太の両肩に手を掛けて来る。


「い、今なんて言った?」


 翔太はなぜそんなに慌てるのか不思議でキョトンとしながらも素直に答える。


「レベルアップの際の負荷?」


「それじゃねぇ! いや、それはそれで十分不思議なんだが……」


 なぜ自分が怒鳴れたのかわからず、おろおろし始める翔太。フィオンもいつもより余裕がないのか、そんな翔太の様子に気付く気配すらない。


「……スキルを複数取得した際の負荷?」


 翔太が恐る恐る尋ねると、フィオンは大きく頷く。


「お前今の戦闘でスキルを取得したのか? それも複数?」


「うん……」


 今度は翔太が頷くと。フィオンは頭に右手を当てて信じられないという仕草をとっていた。


「それって変な事なの?」


「変どころの話じゃねぇよ。スキルの取得なんざぁ、そう簡単にできるものじゃねえ。剣技なら何十年剣を振り続けて初めて一つのスキルを取得できる程度のものなんだ。取得の際の条件だって見つけるのがやたら大変だし、条件を満たすのも凄まじく難関だ。本来複数のスキルを取得なんてどんな奇蹟が起きてもありえないことなんだよ」


「そう言われてもな……」

 

 翔太は少し自分の主張が不安になってきて、ポッケトからギルドカートを取り出して確認した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水刃(第2級)》   2/4

《水弾(第1級)》   0/2

《水耐性(第2級)》  0/4

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「やはり2つスキルを取得したみたいだよ」


「いや、翔太が嘘を言っているとは思っていない。ただあまりに信じがたい程の異常な事だと言いたかっただけだ」


 あくまで推測の域をでないが、翔太は今まで経験した戦闘からスキルのラーニング条件らしきものを見つけていた。それを言えばフィオンも納得してくれるだろう。


「これは推測だけど、僕のスキルの取得条件はそのスキルの発動を実際に認識することだと思う。僕がスキルを取得したときはいつもスキルの発動を見ていたし」


「…………」


 さらに難しい表情をするフィオン。少し思案したがフィオンは話始める。


「それが本当ならば、絶対にそれを他人の前で話しては駄目だ」


「っ!? なぜ?」


「スキルの発動を認識しただけで取得できるとすれば、いろいろな国や組織が翔太を獲得しようとするだろう。それほど貴重だ。なんせ、その国秘蔵のスキルでも翔太がその発動を見ただけで再現可能なのだからな。そんな人材喉から手が出るほどほしいはずだ。

 翔太の力の一端をビフレスト王国に認識されただけで今回のような理不尽な目にあったんだ。力を隠すべき必要性を翔太は実感しているんじゃないのか?」


「そうだね。国と関わるのはもうこりごりだよ。ありがとうフィオン」


 翔太はコクンと頷いてためになるアドバイスをしてくれたフィオンに感謝した。

フィオンとの話に一段落ついたのでギルドカードに改めて目を通す。


(まずはステータスからだ。)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ステータス     ショウタ タミヤ

レベル        12

才能         ――

体力        158

筋力        160

反射神経      162

魔力        155

魔力の強さ     158

知能        156

EXP      56/400

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(っ!? 50も全能力値が上昇してる。これ明らかにおかしいよね? ギルドカードの故障? 

 でもこの数値が本当ならレベル1のアップで僕が動けなくなる理由もわかる。おそらく、レベルアップの際に発生した巨大な力で僕の身体を能力の上昇に適した身体へ再構成しているんだ。それなら僕のこの馬鹿げた力の上昇もその際の身体が動けなくなる負荷も説明できる。

 で、でもさ……これ徐々に化け物になっていくようじゃあ…………止め! 止め! これ以上考えるのは止めよう!)


 恐ろしい考えにぶちあたり頭を振って思考を停止させる。


(次はスキル)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水刃(第2級――中級)》   2/4

《水弾(第1級――初級)》   0/2

《水耐性(第2級――中級)》  0/4

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水弾(第1級――初級)》

■説明:水の塊を弾丸のように相手に飛ばす。弾丸の最大は4つ。

■必要使用回数: 0/2

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水耐性(第2級――中級)》

■説明:水属性の攻撃を無効化する。

※ただし自分よりも等級の高いスキルまたは魔術には効果はない。

■必要使用回数: 0/4

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(《水耐性》をラーニングしたのは僕がケルピーに《水刃》をぶつけて弾かれたのを僕が認識したからだろう。とすれば、《耐性》系のスキルをラーニングするには耐性のある魔物にその属性のスキルや魔術をぶつける必要があるという事かな? 結構面倒だね……。 

 あれ? 今回ラーニングした《水耐性》は最初から第2級――中級だ。とするとラーニングできるのは相手の有する等級のスキルというわけか。なんていうチートなラーニング条件――)


 翔太がスキルの確認を終えた丁度そのときフィオンが出発の合図をする。翔太の調子が元に戻ったと判断したからだろう。

 レイナは翔太の調子が元に戻るとまた翔太がいくら話かけても何も返事を返してくれなくなった。先ほどの身体の調子の悪さよりも今のレイナの態度の方が翔太に地味にダメージを与える。



 お読みいただきありがとうございます。

 

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