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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
27/285

第26話 お金を貯めつつ冒険者としての技術を身に着けよう(2)


次に現れたのは普通の熊よりも一回りも二回りも巨大な体躯の熊が7匹だった。 この魔物も『魔物全集編』に記載されていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


○ビックベアー、討伐推奨クラスD  

■形態:通常の熊の二倍以上もの体躯がある。爪は極めて鋭い。

■生息地:密林の中。

■性質:群れる性質をもっており注意が必要。

■対策:弱点は特にない。爪に気を付けて、遠距離の魔法やスキルで攻撃すべき。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 先ほどのウォータースネイクのEクラスと比べるとやや強敵と言えるかもしれない。『なぜ熊が群れるのだろうという』という当然の疑問を浮かべつつ戦闘は開始された。


 翔太に割り当てられたのはビックベアーが2匹だ。

フィオンからは戦いが終わったら、レイナの支援に向かうように指示された。その指示にレイナは納得がいかないような顔をしていたが、大人しく自分の持ち場につく。


 翔太はこの戦闘でスキル《水刃》の実験をしようと思っていた。

まずビックベアーの背後に気付かれないように近づく。魔法のときと同様に右手をビックベアーに向けスキル《水刃》の発動を世界に願う。


(スキル《水刃》出ろ!)


 だが一向にスキルは発動されない。


(スキル《水刃》出ろ! スキル《水刃》出ろ! スキル《水刃》出ろ!)


 何度もスキルの発動を世界に願うが一向に発動されない。昼休みにフィオンにスキルの発動のさせ方を聞いておけばよかったと猛省しつ、そこで改めて考えてみる。


(世界に願ったのにスキルが発動されない? スキルと魔法はそのメカニズムが違うという事かな? 

 確かに魔法のようにスキルの発動と効果を認識しても、そのスキルの真理を理解できたわけじゃない。

 ただ身体の中に力が発生し暴れまわっただけ。これはレベルアップ同様、身体をスキル使用に最適な状態に作り変えていた。こう考えれば辻褄が合う。

だとすれば、魔法と異なりスキルは自らの身体を原料にして発動するものなのかもしれない。要するに、魔法が身体の外の力を利用し、スキルが身体の中の力を利用するわけだ)


 今度は、ビックベアーの一匹に右の掌を向けつつ身体の中から《水刃》を引き出すイメージをしてみた。


(『水刃』出ろ!)


 すると翔太の手から1m程もある三日月状の水の刃が出現する。その水の刃にビックベアーの1匹を縦断するよう命じる。

 

 ヒュッ―― 


 水の刃は高速で空を引き裂きビックベアーを頭から綺麗に切断する。血しぶきを撒き散らしながら左右に分かれて、ドシャと地面に崩れ落ちるビックベアー。

だが事態はそれだけでは終わらない。同時にビックベアーの背後にある大木をも縦に切断し、それでもとどまらず大地に着弾し深く抉る。

翔太はこの光景を見てドン引きしていた。


(え? え? どんだけ威力あるのさ? 僕の水刃って一番低い第1級でしょ? 確かにこれならスキルが命だとフィオンが言うのもわかる気がする)


 ビックベアーの残りの一体は翔太による壮絶な自然破壊を見て、立ち向かう気力はもはやないらしく、翔太から逃げようと4つ脚となって翔太の正反対に向けて一目散に走り出した。水刃を今度は横に飛ばしてビックベアーを腹部から横断する。

 

 スキルを使った直後、翔太の身体に力が僅かに湧くのが分かった。翔太は興奮を抑えつつ、ギルドカードを確認する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水刃(第2級)》

■説明:水の刃を最大4個飛ばす。

■必要使用回数: 0/4

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(やった! スキルの等級があがった。マジでこれ面白んですけど!)


 血生臭いことをしているのに罪悪感はあまりわかない。

 今の翔太にとってビックベアーとの戦闘はよく小説などに出て来るVRMMOの戦闘のようなものだ。現実なのに現実感がないのである。今の翔太にとってこのレベル上げは生きるためというよりはむしろゲームのレベル上げの感覚に近かった。

 この心の変化はゴブリンの殺害をトリガーに、レベルが上がるごとに顕著になってゆく。それはまるで翔太の中の大切なものが少しずつ、だが明確に変化していくようでもあった。

身体だけでなく心まで変質していく事は翔太の心を不安という名の黒雲に覆い隠す。


(そんなことはないさ)


 そんな不安を頬を叩く事により振り払い、フィオンの支持通りレイナの救援に向かう。


 レイナは片膝をついていた。足首を少し捻ったらしい。ビックベアーの方の一体は血塗れで倒れている。察するにレイナが倒したのだろう。


(あの狼なにやってるの? こんなときに助けなくてどうするのさ!)


 ディートに悪態をつきながら、翔太はレイナに向けて地面を蹴り疾駆する。翔太が地面を蹴るたびに、土は上空に巻き上げられる。

 レイナを庇うようにレイナの前に立ちビックベアーを睥睨(へいげい)する。

 ビックベアーは両手を挙げて翔太を威嚇する。風を引き裂きながら現れた翔太という未確認物体に警戒心をマックスにしている様子だ。

 翔太は右手の掌をビックベアーに向け、スキル《水刃》を発動する。

 先ほどの1.5倍はあるような巨大な水刃が4つ空中に出現する。その水の刃が次々にビックベアーに向けて高速で発射された。レイナが傷ついているのを見て、冷静さを欠いたのかもしれない。かなり全力で発動してしまったようだ。


 シュッ――


 水の刃は翔太の怒りを体現したかのように超高速でビックベアーに迫る。


 ザッシュ! 


 水の刃は次々にビックベアーの身体を細切れの肉片に変え鮮血を辺りに撒き散らす。


 ドォォォ――!


 怒りの水の凶刃はビックベアーの命を奪うだけでは収まらず、背後にある大木をいくつも切り裂き地面に衝突する。凄まじい轟音と衝撃波を発生させ地面を大きく抉る。


(あっちゃあ~。やりすぎ……た?)


 ペタンとお尻を地面につけて座り込んでしまったレイナに手を貸そうとレイナの方に向き直る。

 レイナは驚愕に目を見開き、息を呑んだまま唖然となっていた。


「レイナ、大丈夫? 怪我ない? 一人で立てる?」


 翔太が手を差し出すとレイナは我に返ったようになり、その手を振り払った。


「自分で立てるわ」


 まるで怒っているかのようなレイナの冷たい態度に翔太は取り乱す。


(え? え? 僕怒らせるような事した?)


 レイナはポーションを口に含んで先ほどの戦闘で負った傷を治す。

戦闘が終わったフィオンとディートもやってきた。フィオンは水刃の起こした壮絶な自然破壊を見て顔を引き攣らせる。

 ディートはレイナが傷を負ったと聞くとすまなそうにして鼻をレイナに押し付けていた。レイナも大丈夫よと、ディートの頭を撫でる。

 翔太はレイナに足の怪我について尋ねるが、頷くだけで全て無視されてしまう。それが翔太の不安を余計煽った。

 レイナという人物は無駄に我慢強い。痛くて動けなくてもまだ戦えると主張する。レイナはスピードで翻弄し敵に攻撃を加えることを主な武器とする冒険者だ。その主な武器たるスピードを封じられ、この危険な魔の森中域から無事に生還できるとは翔太には思えなかった。だからフィオンにスキルを始めて使い疲れたので、今日の冒険はこれで終了するように頼み込む。

 この翔太の頼みはあっさり受け入れられ今日はエルドベルグに戻る事になった。

 この事にレイナは猛反発するが、フィオンはこれをすべてスルーした。そしてレイナの怒りの矛先は今日の冒険を終了するように頼んだ翔太に向けられる事になる。

 ついにレイナは翔太を空気と扱う無慈悲な少女へと変貌したのである。




 お読みいただきありがとうございます。

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