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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第二部 建国と変貌編
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第82話 レベル上げとスキル等級上げ(14)

 《虚無》の進化の負荷は大分落ち着いた。次の行動へ移ろう。

 あと、フィオン達との待ち合わせまでまだ30分近くある。《龍神舞疾風》、《大悪魔の奇跡の鋭爪》をこのフィールドで第8級まで上げよう。時間的にもこのフィールドで今日は終了だ。少し時間がオーバーしても《万物破壊》まで進化させたい。その前に……。

 少し前から気になっていた。フィオンが岸で巨大電気ナマズをさばいているのだ。最初魔晶石を取り出そうとしているのかと思ったが、それにしては刻み過ぎだ。まるで、地球で前にテレビでみたマグロの解体ショーのようだ。

フィオンの下に移動する。


「フィオン、何やっているの?」


「ショウタか。お前、さっきの地震ありゃあないぞ! どれほど肝を冷やしたか――」


「ごめん。ごめん。マジで御免。次から気を付けるよ」


「ホントかよ……?」


 フィオンは肩を竦める。


「ははは。それで、何しているの?」


 フィオンからジト目で見られ、際限なく気まずくなったので思わず話題を逸らす。


「これか? これは《食材調達加工術》のスキルを用いて、食材を採取しているのさ。もっとも、スキルの等級が足らなくて食材が変質してしまってるがな……」


(《食材調達加工術》? また意味不明なスキルが出て来た。そういやフィオン、魔物から魔晶石を取り出すのにやけに時間をかけていたような。これのためかな)


「僕も岸近くで巨大電気ナマズ処理するから、それ僕にも教えてよ。魔物をレベル上げとスキルの等級上げという理由だけで殺すのは何か気が引けてたんだよね」


 両手で拝む仕草をすると、フィオンは呆れた様な顔をして軽く頷く。


「減るもんじゃないし、構わねぇよ。

 それにしてもお前、色々な事に興味を持つな。魔物からの食材調達など貧乏冒険者の苦肉の策だぞ。お堅い人間族の貴族の冒険者の連中等このスキルを持っているだけで、蔑視するくらいだ」


「さすがは馬鹿貴族。スキルはあって悪いことなんて何もないのにねえ」


 フィオンも口元をほころばせる。


「違いない。じゃあ始めるか」


「うん。じゃあ、新鮮なナマズ70匹程とってくるね」


「へ? 70匹――」


 フィオンが何か言いかけていたようだが、確認するのは後でもよいだろう。《飛翔(ひしょう)(しゅん)()》で黒湖上空へ移動する70匹の巨大電気ナマズの捕獲。おあつらえ向きのスキルがある。《タナトスアイズ》の麻痺能力だ。《水土化身》を発動し、黒湖の黒水と一体化し、巨大電気ナマズを《タナトスアイズ》で麻痺させ、アイテムボックスに仕舞っていく。すぐに、70匹程の巨大電気ナマズをアイテムボックスに捕獲し、フィオンの下まで戻る。


「フィオン、ナマズ70匹程捕獲してきたよ。アイテムボックスからだすね」


 おあつらえ向きに黒湖の湖畔は一面木々が生えない白色のジャリで満たされた広大な空間となっていた。ここなら、70匹の巨大電気ナマズも置くことができる。アイテムボックスから、70匹の巨大電気ナマズを並べて行く。

フィオンは顎が外れんばかりにあんぐりと大口を開けて呆然とその光景を眺めていたが、大きなため息をつく。


「これだけで、以前の俺の冒険者としての100年分いや、1000年分以上の稼ぎがありそうなんだがな。って、此奴等、生きてるのか?」


 ピクピクと痙攣している巨大電気ナマズを見て頬を引き攣らせるフィオン。


「うん。新鮮な方がいいかと思って。それに生きている方がスキルの等級上げになるしね」


「そ、そうか……これだけの量を生きたままで……はぁぁ~。

じゃあ、俺が1匹解体してみるから見ていろ。その後、俺が見ているから自分で解体してみてくれ。悪いところを指摘してやるよ」


 フィオンは再び深い、深い溜息を吐いて巨大電気ナマズを解体し始めた。

巨大電気ナマズのヒレを切り取り、次に口の周りに【村正】を入れて、そこから皮を剥ぎ取り、腹を切り裂き、中身を取り出し、身を三枚におろす。フィオンは簡単に流れるように、処理するが、実際にやってみると難しいだろう。

 今度は翔太の番だ。心を躍らせながら、《大悪魔の奇跡の鋭爪》を発動し、傷の修復悪化効果と猛毒効果を任意で解除し、フィオンがしたように解体していく。予想通り、剣や刀より、この悪魔の爪の方が繊細な作業には向いている。1匹の解体が終ると、フィオンから悪かった点の指摘を受ける。その指摘を受けて、2匹目に挑戦する。そうして、4匹目の解体をしているときに、微かなスキルラーニングの感覚がする。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《食材調達加工術(第3級――上級)》

■食材を調達する。鮮度、性質を保ったまま食材を調達可能。

上級(ハイ)までの食材を調達可能。

■クラス:固有(ユニーク)

■必要使用回数:0/8

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(よし、これで《食材調達加工術》のスキルを獲得した。これを第8級まで上げつつ、《大悪魔の奇跡の鋭爪》と《龍神舞疾風》、《虚無》のスキルの等級を第8級まで上げることにしよう)


 フィオンに《食材調達加工術》のスキルを取得した事を伝えると大層呆れられた。今日取得できるとは思ってもいなかったそうだ。翔太の動きが以前とは別格になっているのを見て、フィオンは自分の巨大電気ナマズの解体に戻っていった。

 

 今日の一番大きな目的はスキルの等級上げだ。スキルの等級を上げる算段にも抜かりはない。《大悪魔の奇跡の鋭爪》を発動し切りつけ、《大悪魔の奇跡の鋭爪》の発動を切り、再度《大悪魔の奇跡の鋭爪》を発動し切りつける。このようにして、1匹、1匹丁寧に解体していく。トータルで、40匹の解体が完了したとき、《大悪魔の奇跡の鋭爪》が第8級となった。次は、《龍神舞疾風》だが、すでに、第5級まで上がっていた。後600回近く使用しないと第8級までは上がらない。

《龍神舞疾風》は水と風を操れる。ウォータージェットのようにすれば、巨大電気ナマズを解体することができる。そこで、水と風を操作し、空気により水を圧縮し、超高速の水流を形成し、巨大電気ナマズに当ててみる。すると、思った以上に綺麗に切断できた。水流の速度を変化させてやるとさらに効率的にナマズを解体できた。イメージ通りに切断でき、さらに解体速度は上がる。調子に乗って、《龍神舞疾風》を用いて解体を続ける。

 トータルで60体を解体し終え、《食材調達加工術》が第6級に上がると劇的な変化がみられる。

《龍神舞疾風》で切り裂いた巨大電気ナマズは今までは赤身だった。それが、切り裂くと、黄金の光が周囲に漏れる。巨大電気ナマズの肉が黄金に輝いていたのだ。軽く絶句していたが、《食材調達加工術》の食材分析能力により、分析を開始する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【黄金の肉】

■クラス: 伝説級(レジェンド)

■説明:巨大電気ナマズの黄金の肉。

■効果:食した者の【体力】を10%回復、【魔力】を10%回復。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(【伝説級(レジェンド)】の食材ってわけね。あくまで予想だけど、僕とフィオンの《食材調達加工術》の等級が5以下だったから、今まで、中級(ミディアム)の食材しか調達できなかったのだと思われる。

でもさ、『食した者の【体力】を10%回復、【魔力】を10%回復』の効果って、これ売ったらいくらになるんだろ」


「ショウタ、それ……なるほどな。食材が変質しないとそうなるわけか」


「うん。僕の《食材調達加工術》の等級が第6級――神級になって食材を変質させずに採取可能となったみたいだよ」


「ろ、6ぅ? もう嫌だ……。ショウタといると感覚が著しく狂う」


「ご、ごめんね」


 すまなそうに頭を下げると、フィオンが両手を振って慌てふためく。


「言い方が悪かった。別に責めているんじゃないんだよ。ただ、今までの自分が生きて来た世界を思うと、ホント馬鹿馬鹿しくなってきてな。井の中の蛙もいいところだ」


「やっぱり、これ売ると高いのかな?」


「普通の市場じゃあ、売り物にすらならねぇよ。ぱっと見たところ、各国の王侯貴族しか食する事などできない程のものだ。これ肉の一切れで、数百万Gはする。それがこの巨体だ。1匹でいくらになるか、想像すらつかねぇよ」


「そう。思った通り。王侯貴族共の腹に収めるくらいなら、ニュクスの商業都市――ケーリュケイオン辺りで売る事にするよ。勿論通常の値段でね。それなら一般の冒険者や観光客の口にも入りそうだし」


「それがいいだろうな。益々、この世界におけるニュクスの占める位置が大きくなりそうだ」


「僕的にはそれはどうでもいいんだけどさ。じゃあ、少なくなってきたからもう100匹くらいナマズを追加するよ。その解体がすんだら、今日の冒険を終わりにしよう」


 黒湖にまだまだうじゃうじゃいるし、多少間引きしたようがいいだろうし。


「ひゃ、100匹……」


 心の底からうんざりしたようなフィオンを無視して、《水土化身》を発動し再び黒湖に入り、《タナトスアイズ》の麻痺能力で麻痺させ、アイテムボックスへ入れる。調子にのって、200匹程捕獲してしまった。少々捕獲し過ぎてしまったが、それでもこの黒湖の0.01%にも満たないだろう。これで、他の巨大電気ナマズ以外の魔物も生息がしやすくなる。そのような自己中な理屈を構築し再び解体作業に向かう。

 トータルで、100匹のナマズの解体をしたときに、《龍神舞疾風》は第8級へと上がった。

次は、《虚無》のスキルの等級上げだ。《虚無》の分解の能力を使う。《虚無》には効果範囲を半径0.01mmから最大10kmまで調節するという機能がある。この機能を使えば、《龍神舞疾風》以上に効率よく解体ができるはずだ。解体を始めるも、予想以上に解体はスムーズに進んだ。なにせ、《虚無》の分解のスキルを発動し、ナマズの解体のイメージをするだけで、勝手に解体してくれるのだ。これ程楽なものはない。

 トータルで124匹を解体したところで、《食材調達加工術》の等級が7に上がり、解体速度があり得ない程跳ね上がった。その結果、スキルの等級上げも進み為すくなり一石二鳥だった。

結局、トータルで、252匹のナマズを解体したところで、解体速度がさらに跳ね上がり、採取できる食材の質も超高質で固定されるようになった。余りに異様に食材の質が上がったので、疑問に思い、《食材調達加工術》の食材分析能力により分析をしてみた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【黄金の肉】

■クラス: 神話級(ゴッズ)

■レベル4

■説明:巨大電気ナマズの黄金の最高質の肉。

■効果:食した者の【体力】を125%回復、【魔力】を125%回復。

    重度の病気の回復作用がある。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


神話級(ゴッズ)のレベル4……また、無茶な科学反応を起こしたね。だけど、武器と違って、この食材は病気を治したり、体力を回復させたりするだけらしいし、ニュクスで売っても構わないんじゃないかな。それにフィオンが言っていたように、これをエルドベルグで売れば、確実に蛆虫貴族度共の口にしか入らない。それは御免被るよ)


 再び、残り少ないナマズの解体をするが、巨大電気ナマズをトータルで、262匹解体したときに遂に《虚無》が第8級となる。本心では直ぐにでも、《万物破壊》に進化させたかったが、《虚無》でも激烈な進化の負荷が生じたのだ。これが《万物破壊》なら、良くて血を全身から吹き出す、最悪一発気絶だろう。そうなれば、フィオン達、特にレイナに過剰な心配をかけるし、今日はまだやる事がある。今日の用事が全て片付き、キャメロンに着いてから、進化させることにしよう。




 誤字報告ありがとうございました。

 お詫びも兼ねてあと一話投稿いたします。

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