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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第二部 建国と変貌編
146/285

第39話 壊れた腕時計を買おう


 近頃、色々あって身体を洗っておらず汗臭い。お金を払いお湯浴びをしてサッパリした後、溜まるに溜まった洗濯物をアンナに渡す。キャメロンにはクリーニングのようなサービスも有料ではあるがやっている。このサービスはとても便利で有り難いのだ。なにせ、翔太はオーク殲滅戦で特別報酬が支払われ総額1億7000G近くある。その程度の金銭の支払いなど造作もない。

 まあ、お湯浴びもクリーニングも『七つの迷宮(セブンラビリンス)』に行けば済むことなのだが、どうもあの無駄に豪華な部屋は翔太には少々息がつまる。というか行きづらい。今後、魔の森中域の商業都市ができたら、銭湯のような施設も作ってもらおう。そうすれば浴槽に浸かりたければそこへ行けばよい。

アンナはぼーっとして翔太の存在すら目に入ってすらいないようだ。まるで機械のように業務こなしている。アンナの動向など心底どうでもよい。とっと部屋に戻ることにしよう。


 部屋に戻り冒険の支度をする。ローブを着ようとするが見つからない。数分間探すが元々部屋には荷物など殆どない。アイテムボックスにもないという事は、漆黒のローブはなくなったということだ。思い返せば、昨日から漆黒のローブを見てはいない。ヴァージルの件で頭が混乱し、そんな基本的な事も気付かなかった。この頃、考え事をしているときなど外出する際、鍵をかけ忘れる事も多い。この治安が悪いエルドベルグでは窃盗など日常茶飯事だ。寧ろ、アイテムボックスに仕舞わずに、部屋に脱ぎっぱなしにして、しかも鍵をかけずに外出する翔太が悪い。諦めるしかなかろう。もしかしたら、髪留めも泥棒があまりに何もないので悪戯でもしていったのかもしれない。まあ、その確率はさすがに低いと思うが。後でガルトに謝ることにする。

 前々から洗濯の替え用に買っておいた代わりのローブを装着し、【憤怒(サタン)】を装着する。早速暇になった。時間までまだまだある。

 一度浅域で戦闘をしている。ステータスとスキルをもう一度確認することにした。どれを今日優先的にあげるかを判断するためだ。ギルドカードをポケットから取り出し確認を開始する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

ステータス   ショウタ タミヤ

レベル        26

才能         ――

体力       2353

筋力       2362

反射神経     2360

魔力       2351

魔力の強さ    2353

知能       2354

EXP  7512/30000

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(ステータスは、【憤怒(サタン)】のおかげで、全ステータスが2300となった。これでも僕の配下の中では弱い方なんだから……大陸最強の魔王のステータスの平均が500程度? もう完璧に麻痺して来たよ。でもいつもテューポさん達が助けてくれるとは限らない。レベルは即急にあげなくちゃ。次はスキル――)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル

《水龍(第4級)》        4/16

《水耐性(第2級)》        0/4

《毒吐息(第4級)》       8/16

《風の障壁(第3級)》       5/8

《破斬(第4級)》       15/16

《灼熱の石化ブレス(第2級)》   2/4

《竜巻(第2級)》         3/4 

《石化耐性(第3級)》       0/8 

《毒耐性(第4級)》       4/16

《雷光(第4級)》       10/16

《鍛冶(第8級)》         ――

《灼熱の炎弾(3級)》       1/8 

《猛毒と石化睨み(3級)》     0/8

《隠密(第4級)》       11/16

《隕石落下(第3級)》       0/8 

《王者の威嚇の咆哮(第2級)》   0/4

《炎弾(第2級)》         0/4

《魔法剣(第2級)》        0/4  

《悪魔召喚(第1級)》       0/6

《火炎ブレス(第2級)》      0/4 

《高速再生(第8級)》       ――

《悪魔の鋭爪(第2級)》      2/4

《契約(第4級)》         ―― 

《朱色の光弾(第2級)》      0/4

《超獣王の炎雷砲(第3級)》    0/8

《解析(第7級)》      12/128

《仙術(▲■●)》       ■■■■

《憑依(第6級)》       0/128

《無限壊拳(第4級)》      0/48

《不滅の(イージス)(第4級)》      0/48

《魔道具作成術(第7級)》  110/128

―――――――――――――――――――――――――――――――――


(スキル数だけはやたら増えた。だけど……ほとんどが周囲に人がいると威力が大きすぎて使えない。なのに、マンティコアクラスの強敵には全く効かない。ほとんどのスキルが全く戦闘で無意味だ。これでは意味がない。当分はスキルの取得よりも進化をメインとすべきだよ)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル

《契約(第8級――深淵級)》   

■説明:

儀式契約をする。

 ※二者間で契約することにより発動する。

  ※拘束力は等級に依存する。

眷属契約をする。

※【眷神契約】解放:眷属契約は眷神契約へと進化する。

※【複数条件付与】解放

■必要使用回数:  ――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(へ? スキル《契約》の等級が第8級――深淵系に上がっている。それに、【眷神契約】と【複数条件付与】という意味不明なものが増えてる。

 可能性としては、テューポさんが炎鬼さん達と眷属契約をしたときに、スキルの等級も上がった。つまり、テューポさんは僕の所持スキルを使え、それを使うことにより、僕の所持スキルの等級も上げる事もできる。その結果、第8級――深淵級になり解放された。この解なら今までの不可思議な事を上手く説明する事ができる。僕とテューポさんの魂は『七つの迷宮(セブンラビリンス)』を介して繋がっているらしいし、多分これでしょう。では、さっそくタップしてみよう)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【複数条件付与】

■説明:儀式契約の条件を複数設定することができる。

    

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(儀式契約はまだ一度も使用した事がないからこの効力の想像がつかない。暇なときに使ってみて効力を確認しよう。次だね)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【眷神契約(眷属契約)】

■説明:主人と眷属が契約をすることにより、眷属を神まで昇華する。

    主人が過去に獲得したスキルは全て眷属に受け継がれる。

    主人直属の眷属(第一代目眷属)は他者と【眷神契約】を結ぶ事ができる。

※第一代目眷属が【眷神契約】を発動させた場合、その際生まれた眷属(第2代目眷属)は主人が過去に獲得したスキルの半数を受け継がれる。

※第二代目眷属と【眷神契約】を結んだ眷属(第三代目眷属)は不老不死ではなく、主人やその直属の眷属が滅んでも滅ぶことはない。

※第三代目眷属は主人が過去に獲得したスキルを1つのみ受け継ぐ事ができる。ただし、第三代目眷属は【超越級】以上のクラスのスキルを獲得できない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(解析で大体把握していたから驚き自体はほとんどない。だけど、よく考えたら途轍もなく非常識だよね。神様を作り出す契約なんてさ。だけど、これを出来るということはテューポさんは間違いなく神様なんだろう。そんな存在を召還しちゃうなんて、僕って一体……)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル 

《憑依(第6級)》

■説明:他者に憑依する。ただし、成功は条件による。

※条件とは被憑依者が憑依の事実につき非許可の場合にのみ7倍以上のステータスの差が必要。

■【肉体憑依】:他者の肉体に憑依し力のみを与える。

※与える力は憑依者のステータスの三分の一まで

■【意思憑依】:他者の意思に憑依しすべてを支配する。

※【肉体意思混合憑依】25%解放

※精神生命体以外使用不可

■必要使用回数: 0/128


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(ジズさんからラーニングしたスキルだ。ジズさんが行ったのは、他者に力だけを与える肉体憑依だろう。どうせ使わないが、【肉体意思混合憑依】25%解放をタップしておこう。世の中何があるかわからないしね)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


【肉体意思混合憑依】

■説明:肉体に憑依し力を上昇させるとともに、意思も支配する。

※ただし、この場合の力の上昇は憑依者のステータスの三分の一まで加算される。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(要は、身体をのっとって意思を奪い操る。その際に憑依者の力も加算されるという馬鹿げた力だ。どうせ僕には使えないけどさ)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル

《無限壊拳(第4級――最上級)》   

■説明:いかなるものも壊せないものはない。

※距離無効効果がある。

神話級(ゴッズ)以下の武器、防具、アイテムを破壊可能。

※ただし相手の【体力】がスキル使用者の【筋力】+1000未満でないと効果はない。


■必要使用回数:  0/48


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(またか……。記憶にないスキルが増えている。このスキルはラーニングしたはずがない。これは寝ぼけたでは済まされないし、スキルをいつの間にか取得するなどいつもある事では絶対にない。僕に何か起こっているのは間違いないよ。考えられるのはテューポさん達が新たなスキルを獲得し僕も獲得した。これかな? 今はそう理解しておこう。

 このスキルの強さは、他のスキルとは一線を画している。僕の筋力は約2300。その+1000で、3300。つまり、相手の体力が3300以上じゃない限り相手を粉砕できる。しかも、神話級(ゴッズ)以下の武器、防具、アイテムを破壊可能だから、神話級(ゴッズ)の防具を装備していても無駄。距離無効効果というのがよくわからない。後で検討してみよう)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


スキル

《不滅の(イージス)(第4級――最上級)》   

■説明:発動すればいかなる物理攻撃も無効となる。

※ただし、スキル保持者の【体力】+800を超える【筋力】を持つ者の攻撃はその限りではない。


■必要使用回数:  0/48


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(よくもまあこんなチートスキル、僕が知らぬ間に取得できるものだよ。僕の【体力】は2300だから、発動すれば攻撃相手が【筋力】3100を超えない限り、物理攻撃である限り傷一つ負わないわけか。もうこれ無茶苦茶だよね。しかも、【4級――最上級】でこれ。【8級――深淵級】になったらどうなっちゃうんだろう……)


 不自然に必要使用回数が上がっているスキルがあるし、その他にも不自然な事は多々ある。だがあの夢の後だ。もっと精神的に落ち着いてからこの不思議な現象への対策を練るとしよう。フィオンも精神がこれ以上摩耗するのを心配してあまり悩みすぎるなと言ったのだろうし……。


 そろそろ出かけよう。時計がないのはこの上なく不便だ。時計屋に行き腕時計を買う事にする。宿屋キャメロンを出て、カップル通りを抜けメインストリートに出る。時計が破壊されたとぼやいていたら、レイナが貴族や富豪用の高級時計屋がメインストリート沿いにあると教えてくれた。別に安い時計で一向に構わないが、他に時計屋を探すのも面倒なので、そこにする事に決めた。 

 時計屋は中々見つからなかった。とても高級時計とは思えないほど小さく質素な外観をしていたからだ。時計屋の内部も狭く飾りっ気の欠片もない。

 もっとも、置かれている時計はどれもかなり高価なものであることが素人の翔太から見ても判断がつくほどだ。一般人が買える代物ではないのだろう。皺くちゃの白髪の御老体が受付で時計を修理していた。時計はいかにも高そうだ。翔太にちらりと視線を移したが興味がなさそうに再び時計の修理に精を出す。

 一番安いのをくださいなどと口走ったら大激怒されそうだ。どう考えても場違いだろう。深いため息を吐いて、店を出ようと踵を返す。


「なんじゃ。買わんのか?」


 突如、御老人から呼び止められた。


「はあ。僕には場違いのようでして……」


「どんな時計を探しておる?」


 御老人は翔太の言葉など一切聞く耳をもたない様子だ。どことなく翔太の祖父――玄斎に似ている。この手の人には素直に従っていた方がよい。そう本能が叫んでいた。


「腕時計を探しています」


 御老人は暫し思案していたが、店の奥に入り小さな木箱を持ってきた。そして、受付カウンターに木箱をそっとまるで赤ん坊を寝かせるかのように置く。


「10万Gじゃ」


「は?」


 唐突すぎて御老人の言っている意味が分からず問い返すと御老人にギョロリと睨まれた。


「だからこの時計の値段は10万Gだといっているんじゃ」


 買えという事だろう。逆らうのも馬鹿馬鹿しい。どの道時計は買わねばならなかった。アイテムボックスから10万Gを出し御老人に渡すと、再び時計の修理に戻ってしまった。

 軽く頭を下げて木箱をもち時計屋を後にする。今日は比較的危険な戦闘だ。腕にしてまた壊してはもったいない。戦闘中はアイテムボックスにしまう事にしよう。



 メインストリートを歩いていると、ラシェルに出会った。思わず頬が緩む。今までのジメジメした感覚が吹き飛ばされ、やけに爽やかに感じる。


「やあ、ラシェル。こんにちは」


「う、うん」


ラシェルは翔太を見ると顔を真っ赤にしてうつむいてモジモジしていた。暴力的なラシェルらしからぬ奇怪な行動に疑問符が空を舞う。


「ラシェル、どしたの?」


「ショ、ショウタ。昨日の朝……」


「昨日の朝?」


 悪いが全く翔太には心たりがない。


「忘れた?」


 翔太のそんな様子を見てふてくされた口調になるラシェル。こうでなくてはラシェルではない。


「ごめん。まったく覚えてないや」

 

 ラシェルは翔太の脛を思いっきり蹴り上げて、顔を怒りで上気させながら去って行く。ラシェルと会話をして、どんよりした胸の中がカラリと晴れるような気持ちになる。最悪ともいえる夢は見たがラシェルと会えた。今日は良い日になる事だろう。


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