第29話 魔道具を作ろう(3)
2時間で約70個の薬草を作成した。
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スキル
《魔道具作成術(第7――超越級)》
■説明:
適切な素材を用いれば超越級の魔道具まで作成可能
超越級までならば素材からできる魔道具を予測することが可能
超越級までなら作成したい性能の魔道具から素材を選択可能
超越級までなら魔道具のクラスを識別可能
【金属素材変形・融合・能力発現化】が解放されました
【心眼(魔道具作成術)50%】が解放されました。
■必要使用回数: 50/128
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【心眼(魔道具作成術)50%開放】
■魔道具の下級から超越級までの各クラスにもレベルがある。
超越級までの各クラスのレベルを識別可能
■素材のより最適な加工の仕方を取得可能(ただしすべての素材の約半数のみ)
■魔道具作成の最適な方法を導きだすことにより作成速度が倍化
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【金属素材変形・融合・能力発現化】
■金属と素材を自由に変形、融合させ能力を自由に発現させることが可能
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(《鍛冶》スキルと殆ど同じだね。多分、鍛冶に対応するスキルが《魔道具作成術》なんだと思う。だから次の《錬金術》への進化がなされわけか。もっとも、心眼だけは少し違うみたいだけどさ。
心眼以外の違いは、【金属素材変形・融合・能力発現化】――『金属と素材を融合させ形や性質を自由に変形発現させることが可能』という能力だ。これは、炉の炎で熱しなくても変形し性質の発現が可能だという事だね。確信までは持てないから後で実験する必要はある。
兎も角、これでまた一歩すすんだよ。後は出来た薬草だけど……)
薬草は【特質級】が20個、【伝説級】が40個、【神話級】が10個であった。【神話級】は以下の通りだ。
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【薬草】
■クラス:【神話級】
■レベル:1
■説明:使用者の治癒力を向上し体力(生命力)を回復する薬。
■性能:7度(大度)以下の傷を治すことが可能。
2時間攻撃を受けてもダメージが半分減少する。
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(だからさ、もうこれ薬草じゃないよね。もちろん、ニュクスでは売るさ。だけど、これ冒険者達に売っていいのかな? 僕としてはこの程度なら、迷宮の中で売るのはありかもしれないと思う。武器と違って一度っきりだしさ。
まあ、僕では判断できない。カサンドラさんとフィオン、デリックさん当たりに聞くべきだろうね)
今日はそろそろお暇すべきだ。兎に角、凄まじく気怠い。1階の居間へ行く。カサンドラは、来た時と同様、椅子に座って寝ていた。ただでさえ迷惑をかけている。起こすべきではないだろう。書置きをテーブルに置き、近くに放り投げてあった毛布をカサンドラにかける。カサンドラはぐっすりのようで、ピクリとも動かない。
一礼して、カサンドラ邸を後にする。
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宿屋キャメロンに到着する。丁度夕食時で食堂はいっぱいだ。だが、今日はとても夕食をとっている気分でもない。
だるい頭を振って、翔太の部屋へ直行する。そしてすぐにベッドに倒れるように横になり目を閉じる。だが、身体は疲れに疲れているのにいざベッドに横になると眠れない。少しの間、寝返りを打っていたがすぐに眠るは無理だとわかった。だからといって、だるい頭と身体がなくなったわけではなく、夕食を食べに行く気分でもない。
こんな時は眠くなるまで永遠と単純作業をやるに限る。今日は《魔道具作成術》を獲得した。
先日エミーに会った。この頃エレナと顔を合わせたくはない事から、エミーと遊んでやれていない。エミーに玩具でも造ってやろう。玩具と言っても、どうせ作るのなら中途半端なものは作りたくはない。鉱物はディヴに頼んで色々な種類を貰っている。材料には事欠かないだろう。
幼女の趣味など翔太に分かるはずもない。幼女ならラシェルだ。ラシェルに相談しようかとも考えたが、それを尋ねた時点で翔太の命がなくなりそうな予感がする。凄まじい悪寒に襲われ身を震わせる。テレビのコマーシャルでは魔法少女のステッキで変身するシーンが繰り返し放映されていた。だがこの世界で魔法少女の恰好などしたら、単なるイタイひとだ。変身する姿はその者の意思によるようにすればよいだろう。
マズカレイト、オリハルコンはこの手のものを作るには必需品だ。マズカレイトは安価だし、オリハルコンはディヴが多量に仕入れてくれたのでたっぷりある。それでも翔太が稼いだ金額の1000分の1にも及ばないらしい。だからそれほど、特殊金属を玩具作成に使う事の忌避感はない。加えて、お馴染み翔太にさえ分からない特殊能力を付与するクレリア。まさにおみくじを引くような感覚だ。どんな能力が付与されるのか楽しみになる。これらの金属は、武器を作る際に余分に加工してしまった余りだ。だからもう金属本来の能力は発現しており、いつでも使用可能である。
金属以外はフィオンに分けてもらったコカトリスロードの翼と羽毛、【憤怒】を作るのに余ったテューポ、マイリーキー、ベヒモスに提供してもらった素材がまだまだあった。その1%ほどを使って作る事にする。
これは《鍛冶》ではない。だから金属の能力さえ発現していれば炎は必要ない。【金属素材変形・融合・能力発現化】――『金属と素材を融合させ形や性質を自由に変形発現させることが可能』の能力を発現させることで、金属と素材の融合と能力発現は可能だ。
では早速始めよう3種類の金属を変形させ混ぜ合わせようとするがうんともすんともいわない。【金属素材変形・融合・能力発現化】の能力発現には他の要素が必要らしい。とすれば、思い当たるのは一つだけだ。魔道具作成というくらいだ。魔力を注ぎ込むのだろう。そう思って、魔力を注いで金属を触るとグニャグニャとまるでチョコレートのように変形した。3つの金属を混ぜ合わせる。次いで、素材も次々に変形させ混ぜ合わせる。
最後に翔太の望む能力を発現させる。これも魔力を注ぎ込むと赤、青、黄色、黒、緑、紫、黄金と色が変化し、再び赤に回帰していく。その際にゴソッと魔力が消費していくのが翔太にもわかった。
数十分間、魔力を注ぎ込んでいると黄金の色に固定されていく。どうやら性質が固定化されたようだ。腕輪の形に整え、その際に細かな装飾を施す。今後、魔力を流せる特殊金属があればより、格好が良いデザインに仕上げられるかもしれない。
そして玩具は完成した。
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【変幻】
■クラス:超越級
■レベル:2
■説明:所持者を様々な形に変幻させ、様々な能力を発現させることが可能。
■性能:
変幻の基本形は人間種、動物、魔物、精霊がある。
変幻した者のステータスに能力を上昇させ、その特殊能力を発現する。
才能+100
才能以外全ステータス+400
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(チーンですね。このアイテムはお陀仏です。子供の遊びにしてはいささか能力が高すぎる。これも封印だ。フィオンにでもあげれば魔の森深域探索に仕えるかもよ
エミーにあげるのは能力を抑えて、装飾を豪華にすれば良い。そのためにもまず、魔力を通す針などの装飾用の道具を作ろう)
魔力と親和性が極めて高く安価なマズカレイトを用いて、装飾用の針とヘラ等の装飾用の機械を作る。
では、今度は金属をマズカレイト、オリハルコン、クレリア。素材は一番量があるテューポの鱗のみを用い、かつ、さっきの5分の1程の量にして同様の操作を行った。今度は装飾に時間をかけた。
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【変幻】
■クラス:【神話級】
■レベル:4
■説明:所持者を様々な形に変幻させ、様々な能力を発現させることが可能。
■性能:
変幻の基本形は人間種、動物、魔物がある。
変幻した者のステータスに能力を上昇させ、その特殊能力を発現する。
才能+50
才能以外全ステータス+70
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(これもやり過ぎだよね。玩具にしては分不相応かな)
金属の量や、素材の量や種類、魔力の込め方などを思案した結果、やっとの事でエミーに贈る玩具が完成した。
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【変幻】
■クラス:【伝説級】
■レベル:4
■説明:所持者を様々な形に変幻させ、様々な能力を発現させることが可能。
■性能:
変幻の基本形は人間種、動物がある。
変幻した者のステータスに能力を上昇させその特殊能力を発現する。
才能+25
才能以外全ステータス+50
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(よし、これなら玩具の範囲といえ……なくもないと思う。だけど、これ以上はどうやってもクラスが落とせなかったんだ。仕方ないよね。
装飾が今一で、何回か作り直したからなぁ。余分な在庫が沢山できてしまった。これどうしよう。こんなの世界にばら撒いたらまたフィオンやデリックさん辺りに怒られるし……。
ニュクスで売りに出そう。そうしよう)
エミー用に後で包装してリボンでもつけることにする。作成した【変幻】を全てアイテムボックスに仕舞った。まだ眠くなかったので、装飾の練習も兼ねて【変幻】以外の数種類の玩具を作ったところで、睡魔が突如として襲ってきて深い眠りに落ちる。