番外編.研究員の日記
20X1年 4/1
今日、政府公認の死者蘇生薬の開発が始まった。この薬が完成すれば日本の薬品製造技術、いやターミナル薬品製造会社の株は急激に上がるだろう。
この会社に就職した者として、なんとしてでも成功させたいプロジェクトだ。今日だけではあまり進展はなかったが、確実に進んでいる。このまま行けば数年のうちに完成できるだろう……
20X9年 4/1
今日は開発が始まってちょうど8年目。完成の方はあと一歩の所まで迫っている。
しかし、試薬をマウスに投与してみたところ、数時間もしないうちに心肺機能が停止してしまった。これだけならこの試薬は未完成と言えるだろう。
だが、投与して死亡した10匹のマウスのうち、9匹が心肺機能が停止した状態で動き始めた。凶暴性が異常に増しており、観察しようとした研究員の1人が指を噛まれてしまった。
その研究員は約2時間後に心肺機能停止、マウスと同じように動き始めた。しかし、言葉は発さず、うめき声を上げてゆらゆらと動くだけである。
それだけなら良かったのだが、突然近くにいた研究員に噛みつき、肉を食いちぎるというカニバリズム行動を起こしていた。
結局、噛まれた研究員と噛みついた研究員は処分されてしまった。
この薬はあるウイルスを改良している最中に突然変異を起こしたようだ。このウイルスは空気感染はせず、感染者に噛まれる、引っ掻かれるなど血液に直接混ざることで感染するようである。
死者の心肺機能が停止しているにも関わらず、脳を操り体を動かすようだ。その際、脳に保存されていた記憶は全消去され、生きる上での基本的な欲求、食事を取るためだけに動くことが分かった。
なんにせよ、この危険なウイルスは厳重保管して外に漏れないようにせねばならない。こんなものが地上に漏れれば、黒死病やスペイン風邪以上の死者が出るだろう。下手をすれば、人類絶滅にまで追いやられるかもしれない。
食事といっても、食べるのは人間だけのようなので、cannibalism-Virus、略してc-ウイルスとでも名付けよう。
20X9年 4/3
c-ウイルスは、外国の製薬企業が買い取るということで一旦地上へと出されることになった。危険極まりないが、政府に圧力をかけられたらしく、ターミナル薬品製造会社はあっさりとそれを承認したらしい。
何に使うのかは分からないが、あんなものを日本に置いておくのは正直気が気でなかったので、ホッとしている。
20X9年 4月なんにち?
おれはどうやらかんせんしてしまた
あたまぼーとしてしかいかすむ
さっきからほかのかんせんしゃがせいぞんしゃくいちらかしてる
おいしそう
おれもくいたい
……これ以上は血で読むことができない。