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最終章 「絆を絶つ者」 九話
「--あーあ。行っちゃった……」
五十猛の消えた後を見ながら、斐比伎は名残り惜しむように呟いた。
『我々も早く転移したほうがいい。ここは、もうすぐ崩れ落ちる』
若日子建が言った。
斐比伎は周囲を見回す。
自分たちは緊迫したやりとりに夢中になっていたのだが、気付かぬうちに斐比伎の落とした雷撃による焔は宮内の建物を呑み尽くし、周辺は荒れ狂う炎の渦と化していた。
宮殿内にいた多くの人々は火に襲われ、僅かに生き残った者達は既にあらかた逃げ出している。
大和が燃えていた。
覇王達が何代にも渡って、同族や他族の血を流し続けて築き上げた夢の都は、ほんの数刻の焔の蹂躙によって、跡形もなく消え去ろうとしていた。
(燃えてしまえ)
覇王の系譜も、最後に生まれた美しい皇子も、哀しい記憶も、醜い想いも、ここにあったものは、全て。
(……新しい物は、私たちが創っていけるから--)
燃える宮殿を瞳に映しながら、斐比伎は言った。
「--行こう。かえろう。吉備へ!」




