表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳴神の娘  作者: かざみや
45/51

最終章 「絆を絶つ者」 五話

 --神代。

 おかした罪により、高天原を追放された須佐之男神すさのおのかみは、出雲の地へと降り立った。

 その後、須佐之男の末裔であり、国津神の祖となった大国主神おおくにぬしのかみは、海の彼方より現れた少彦名神と義兄弟の契りを結び、旅をしながら国津神の仲間を集めて、「国造り」を行なった。

 ある時、高天原の主神である天照大御神は、この地上を統治する支配者として、自らの子孫を降臨させようとした。

 しかし、地上に生まれた国津神達は、高天原に坐す天津神の要求に従わなかった。そこで天照は、天津軍神である武御雷神をつかわし、地上を平定させることにした。

 国津神達はやがて、武御雷神に従うこととなった。しかし、最後までこれに強硬に反抗したものがあった。大国主神の子にして国津軍神・建御名方神たけみなかたのかみである。

 武御雷神と建御名方神は戦い、武御雷神が勝利した。……そして、「国譲り」は行なわれた。


「……出雲王・振根の妻は、建御名方神の神裔にあたる巫女だった。そしてその二人の間に生まれた子の、更に裔に生まれたのが、この俺ってわけさ」

 斐比伎を見つめながら、五十猛は言った。

「国津神の血を引いた、出雲振根の生まれ変わり。……な、あんたと似てるだろ? 血も魂も、背負った縁がぐちゃぐちゃだ」

「だからって……」

 五十猛を見返したまま、斐比伎は困惑しながら言った。

「神代に国津神と天津神が争ったからって……その裔である、私とあなたが現世でまた戦わなければならないの? どうして!」

「--それは、お前が『絆を絶つ者』だからじゃ、斐比伎」

 斐比伎の必死の問いかけに答えたのは、五十猛ではなく、彼女の肩に乗った少彦名だった。

「……少彦名?」

 斐比伎は驚いて、肩の上の小人を見る。

「……わしらはのう、斐比伎」

 大きくため息をつき、少彦名は語り出した。

「わしと大国主と国津の仲間達は、神代の時代に共に国造りを行なった。わしらは大地に稲種を根付かせ、人や家畜のために治療法を定め、地下から玉水を引いたりもした。人の世の道理を広め、災害を逃れる法を教えてまわったりしたものじゃ。……そうやって、わしらはゆっくりとこの大地を育て上げてゆくつもりじゃった」

 一度言葉を切って息を吸い、少彦名は更に話を続けた。

「しかし、わしらの計画は途中で頓挫した。未完成の地上を、天の奴らに渡さねばならなくなってしまったのじゃ。国津神が始めたものを、天津神が完成させようとする--そうすると、どんな結果になるかわかるかの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ