第20話 守るための研究所(第一章完)
「魔獣研究所なら、多分、リリちゃんを守れる」
マックスさんは、驚くほどさらっと言った。
「実はね、研究所にも、竜国出身の人が一人いるんだ。
僕がすごくお世話になってる人でね」
「……竜国の人が?」
「魔獣とも話せるらしい。本人はそう言ってる。
竜も呼べるけど、必要ないから呼ばないだけ、ってね。
だからリリちゃんも、そうなのかなって」
(あ、結局マックスさん、最初から魔獣と話せるとは思ってたのね)
と、また振り回されなと一瞬思ったものの、
――仲間がいる。
話が通じる誰かがいる。
それは、確かに心強い。
私は、揺れた。
「……会ってみたい。でも、村は離れたくない」
そう言うと、おばあちゃんは即答した。
「畑はもうすぐ収穫も終わるでね。あたし一人でどうにかなるさね。
学校も、あと半年だろ。少し休んでも大丈夫じゃ」
(……強い)
それでも私は、森のことが頭から離れなかった。
「森も……心配で」
(言えないけど、ボスだし)
マックスさんは少し考え、ぱっと顔を上げた。
「じゃあ、こうしよう。
リリちゃんは村にいていい。僕が一、二日だけ王都に戻る。
その間は、大魔法使いさんとウィルに守ってもらって」
「え? 護衛なしで大丈夫なんですか?」
「ああ、多分、僕結構強いから。」
にこっと笑って、彼は言った。
「そうとなったら急がないと。じゃ!」
どこか空から白い一角獣が現れ、マックスさんは軽々と飛び乗った。
私とおばあちゃんは、その背中をぽかんと見送った。
「……ウィルさんに、なんて言ったら良いんかね」
おばあちゃんが、ぽつり。
日も落ち始めていたので、領主の部下たちにウィルさんへの伝言を頼み、私たちは帰った。
その夜、私はあまり眠れなかった。
――そして二日後。
「こんにちはー!」
扉を開けると、マックスさんがコフクを肩に乗せ、満面の笑みで立っていた。
「魔獣研究所の出張所を、この村に作ることになった!」
「……え?」
私は思わず間抜けな声を出した。
「リリちゃんも、研究員として登録したからね」
「……ええ?」
マックスさんは、まぶしい笑顔のまま続けた。
「ちなみに出張所の所長は僕!
他の所員も、これから準備して来ることになってる」
そして、小さな金属のバッジを差し出した。
「はい、これ。研究員を証明するバッジ」
「服に僕みたいに付けて、手で触れると僕と連絡が取れる。便利でしょ?」
便利……なのかな……。
マックスさんは、改めて右手を差し出した。
「魔獣研究所へようこそ。
これから一緒に頑張ろう!」
何だか、ものすごく良い感じで言っているけれど――
(初耳ですよ!?)
私は動揺しつつも、反射で握手してしまった。
「……よ、よろしくお願いします……」
こうして私は気づけば、
畑仕事をして静かに暮らすつもりだったのに、
学生兼研究員兼森のボス兼、竜国の姫?になってしまったのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第1章はこれで終わりですが、これから第2章を開始します。
魔獣研究所の出張所の立ち上げから、帝国の話など、新しい話を書いていく予定です。
第2章は3月9日から開始し、また月、水、金曜日に更新していければと思っています。
(お読みいただいていことを励みに、同じペースで続けられるよう頑張ります)
なお、今別で更新している別話も3月3日までで終了しますが、
第2章は別話の登場人物も登場予定です。
まだの方は、そちらもお読みいただけますとよりお楽しみいただけると思います。
引き続き、どうぞ宜しくお願いいたします。




