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竜国の姫らしいですが、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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第18話 ただのお疲れ様の挨拶です(多分)

――男の人に、初めてキスをされた。

 頬に残るあの感触が、どうしても消えてくれない。

(うわぁぁ……!)

 私は森の奥へ飛び、木々の影に降り立つと、慌てて指輪を外した。

 人間の姿に戻り、両手でほっぺたを押さえて深呼吸する。

 心臓が、まだ暴れている。

「……いや、人間の私じゃなくて、竜にキスしただけだから」

 自分に言い聞かせる。

「……あれは、ただのお疲れ様の挨拶だから。うん」

 そう思えば思うほど、顔が熱くなるのはどうしてだろう。

 私は半分パニックのまま、ぶんぶんと頭を振った。

 けれど、ふと脳裏によみがえったのは、毒ダヌキのお母さんの言葉だった。

 ――紫の髪。

 ――見たことのない人間。

 ――何かを撒いて、火をつけて、逃げた。

「……それどころじゃない」

 私は大きく深呼吸をした。

「放火の犯人のこと、伝えないと」

 気持ちを切り替え、森の中を走り出す。

 ……が、すぐに立ち止まった。

「あれ? どっちから来たっけ?」

 完全に方向感覚を失っている。

『リリ、こっちだよ! しっかりして!』

 近くを飛びながら、コフクが叫んだ。

「うわっ! またコフク、全部見てたんだ……」

『今は恥ずかしがってる場合じゃないから!』

 正論すぎて反論できない。

 私はコフクの後を追って歩き出した。

 竜で飛んだ道を、人間の足で戻るのは想像以上に大変だったが、不思議なことに魔獣とはほとんど出会わなかった。

(……コフク、できる子)

 そう思った頃、ようやく火事の現場が見えてきた。

 雨雲を集める魔法はすでに解除され、空は夕焼けに染まっている。

 治療は、どうやら一通り終わった後のようだった。

「リリ、戻ったか」

 真っ先に声をかけてきたのは、おばあちゃんだった。

「どこか怪我しとらんか?」

「私は大丈夫。もう……終わったのね」

 その横から、マックスさんがいつもの調子で近づいてくる。

「あ、リリちゃん、お帰り。コフクも。

 竜からは、何か聞いた?」

 ……普通に聞くんだ。

「ありゃーもう、竜と私が話せる前提なんですね……」

 私は小さくため息をつき、表情を引き締めた。

「その前提で、話したいことがあります」


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