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竜国の姫は、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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第16話 竜は火の森へ飛ぶ

湖のそばで、私は深く息を吸った。

 まず、風魔法。

 火が出ているのは森の入口付近――鳥たちがそこまで連なって飛んでいる。

 そこへ雨雲を寄せるイメージをする。

 雲が集まり、光が少し鈍る。

 ぽつ、ぽつ。

 雨が落ち始めた。

「……よし」

 それから、指輪を指にはめる。

 熱が走り、世界が歪む。

 赤い鱗。大きな翼。

 竜の身体が戻ってくる。

(竜は火を消せないかもだけど……火には強いはず)

 私は羽ばたき、鳥たちと一緒に森へ向かった。


 森は、すでに煙で灰色に霞んでいた。

 火が枝を舐め、ぱちぱちと爆ぜる音がする。

 水飲鳥たちが、上空から次々に水を落とす。

 けれど、火と煙が強すぎて、奥へ入れない。

 水をかけては戻り、また運び――必死な往復だ。

「ヌーゴは?」

 私が低く問いかけると、鳥が答えた。

「森ノ奥ヘ、ミンナヲ避難サセテル!

デモ、ソッチ側ニ、風ガ向カッテル!」

(風下に逃げてる?それは危ない)

「分かった。こっちにいて」

 私は、火の中へ飛び込んだ。

 燃え上がる炎、しかし、さほど熱くない。

(……行ける)

 炎の壁を抜けようとした時、倒木の下で動く影が見えた。

 少し大きい魔獣――風狼。

 木に押さえつけられて、身動きが取れない。

 私は爪で倒木を引き上げ、ずらし、

 風狼をそっと咥えた。

 火の弱い場所へ運び、降ろす。

 仲間らしい風狼たちが駆け寄り、引っ張るようにして連れていった。

 さらに、木の上で鳴く声。

 毒ダヌキの親子が、火に追われて枝先に固まっている。

(……危ない)

 私は翼で煙を払うようにしながら、

 親子を両手でつまみ、燃えていない土の上へ降ろした。

 毒ダヌキの親は、震えながらも私を見上げる。

 私は振り返り、火の広がり方を見る。

(……ここで止める)

 周囲の燃え始めた木を倒し、空き地を作る。

 そして――迎え火。

 炎を吐き、燃えるべき場所を先に燃やして、火の壁を作る。

 水飲鳥たちの水。

 降り始めた雨。

 そして、遅れて到着した領主側の火消し部隊。

 すべてが重なって、ようやく火の勢いが鈍る。

 森の入口から、それほど奥へ行かないあたりで、

 火事はどうにか食い止められた。

 

 煙が薄くなり始めた頃、ヌーゴが現れた。

「怪我した子たちはいるけれど……死んではいない。良かった」

 そして、少し照れたように言う。

「……リリボス。ありがとう」

「ボスはやめてってば」

 私はため息混じりに返す。

「ヌーゴさんが仕切って、みんなで協力したから止まったんだよ」

 まだ、胸の奥のざわつきは消えない。

「……原因は、何?」

 ヌーゴが答えるより早く、地面に横たわる毒ダヌキの母が低く言った。

「見タコトノナイ人間タチガ、何カ撒イテ……火ヲ付ケテ逃ゲタ」

 私は息を呑んだ。

「見たことのない人?」

「……紫ノ、髪ノ毛、見エタ」

 紫の髪。

 それが意味するものを考えかけた、その時――

 思わぬ応援が、現れた。


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