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竜国の姫は、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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第15話 再度のお茶会と、空を飛ぶ青い群れ

マックスさんたちは、結局村の近くに泊まり続けていた。

 畑仕事を遠くから見ていたり、村の子と世間話をしていたり。

 時々は、おばあちゃんに魔法を教わってみたり――この村にいるのが当たり前みたいに。

 そして、コフクはというと。

 私が人気のない空き地で、こそこそ魔法の練習をしていると、ふらっと現れることがあった。

『安心して。マックスさんたちは、わたしの話は理解できないから。竜がリリってことは知らないよ』

「それは良かった」

 私は胸を撫で下ろす。

『でも、竜の国の出身だろうとは思ってる。竜を呼べるのかなーって話してたよ』

「それで、まだ帰らないのか……」

 嫌な想像が浮かぶ。

「竜を呼べるって分かったら、研究所に連れていくとか、実験に使うとか……?」

『なんか研究所に変なイメージ持ってるね』

 コフクは、からかうみたいに羽を揺らした。

『安心して。嫌がるのを連れて行く人じゃないよ。

たぶん仲良くしたいとは思ってる。竜大好きって言ってたし』

「……ちょっと変なだけで?」

『ちょっと、ね』

 私は苦笑いした。

 コフクも可愛がられているみたいだし、自由に飛んできている。悪い人ではないのだろう。

 そう思ったところで――


「リリ―!」

 遠くから手を振りながら、フルールが駆けてきた。

「今日、例の“みんなでのお茶会”だよ!待ち合わせ場所にいなかったから、ここかなって」

「あ、ごめん。コフクと話してたら、時間過ぎてた」

 私たちは、村のみんなが集まる馬車の待ち合わせ場所へ急いだ。

 馬車の中は、すでにお祭りみたいな空気だ。

「どんなお菓子が出るんだろう!」

「王都の料理人って本当に来るのかな?」

 話し声と笑い声に混じって、私は少しだけ落ち着かない。

(あの別邸、嫌な記憶があるんだよね……)

 でも、今日は大丈夫。

 みんな一緒だし、領主側も“評判回復”が目的だ。

 湖の畔の広い場所に、白いテーブルと椅子がいくつも並べられていた。

 すでに別の馬車で来た子たちが半分ほど座っている。

 テーブルの上には、カラフルなケーキと焼き菓子。

 フルーツや野菜を使ったタルト。

 クリームがたっぷりの、見たことのないお菓子もある。

「うわ……!」

 思わず声が出た。

 そこへ、領主の息子――ガレが前に出て、咳払いをした。

(私もやっと名前を覚えた)

「皆さん、集まってくれてありがとう!」

 やけに張り切っている。

「今日は、若い皆が、これから僕と一緒に領地を盛り立ててくれることを願って、王都から有名なパティシエを呼びました!」

「領地の食材を存分に使ったお菓子を、お茶と一緒に楽しんでくれ!では、あとは自由だ!」

 拍手が起こり、私たちは一斉に食べ始めた。

「……本当に美味しい」

「村の果物が、こんな風になるんだ」

「これ、真似して売れないかな……料理教室とか」

「あ、それやるなら行きたい!」

 みんな、食べるだけでなく、ガレに話しかけたり、使用人に質問したり。

 ガレも最初はぎこちなかったが、人懐っこい同級生たちに囲まれて、だいぶ馴染んでいった。

 建物の窓から、領主がこちらを見て頷いているのも見えた。

 満足げな顔だ。

(……これで、本当に平穏が戻るのかな)


 そう思いかけた、その時。

 空が、ざわっとした。

 青色の大きな鳥の集団が、湖に向かって飛んできたのだ。

 数が多い。羽音が波のように重なる。

「……水飲鳥?」

 私のところに、一羽が急降下してきた。

「火事ダ!ボス!早クキテ!」

 頭上を旋回しながら、必死に叫ぶ。

 みんなが「え?」「何?」とざわつく中、

 見送りに出ていた領主のもとへ、騎士が馬で駆け込んできて何か伝えた。

 領主の顔色が変わる。

「森が、火事!?大変だ!火消しを早く向かわせろ!」

 騎士が走り去り、場は一気に騒然とした。

 私は、迷わなかった。

「――ちょっと、私、森へ行くね!」

 同級生たちに言い残し、鳥たちを追うように湖の脇の木立へ走る。

 青い軍団は、嘴の袋いっぱいに水を含んで、森へ向かっていく。

(ヌーゴ……急いで行くから、無事でいて)


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