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竜国の姫は、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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幕間 研究員と護衛騎士の帰り道――自称研究員の胸は高鳴る

リリたちの馬車が角を曲がって見えなくなるまで、マックスは小さく手を振っていた。

「ジーナさん、ありがとうございました。今日はそろそろ帰りますね」

「あら、帰るんか。すみませんね。予定があったとは、知らなくて」

「いえいえ。まだしばらく、この近くの宿に泊まっているので、また来ます。次は魔法の話も聞かせてください。では」

 マックスと護衛騎士は家を後にした。

 ――家から少し離れたところで、護衛騎士のウィルが、抑えた声で言う。

「無駄足でなくて……また来るんですか?」

「うん。また来るよ、ウィル」

 マックスは歩きながら、楽しそうに続けた。

「だって、あのリリちゃんって子。竜国のイシュルンの血が入ってるだろう?」

「え? そうなんですか? 黒い髪と、赤い目?」

「黒い髪は竜国に多かったって本で読んだ。しかも赤い目は……王族かもしれない。ふふっ」

「ってことは……黒?」

「黒だね。彼女のいるこの村にいれば、そのうち――竜が見られるかも」

 肩に留まった月白梟が鳴いた。

『ピピ、ピイ』

「コフクもそうだって言ってるね」

 マックスは上機嫌のまま続ける。

「竜がどこに棲んでいて、竜国の人がどうやって竜を呼ぶのか――本にも無かったんだ。楽しみだね、ふふっ」

 そして、急に真面目な顔で胸に手を当てた。

「今、僕は胸がものすごくどきどきしているよ。これが、恋?」

「違うと思いますけど」

 ウィルは即答した。

「……当面、戻れなそうだな」

「え? ウィル、何またぼそぼそ言ってるの?」

「いや、楽しそうで良かったなと。早く竜を見られると良いですね!」

 マックスはルンルン、ウィルはぼそぼそ。

 二人は並んで、村の宿へ帰っていった。


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