幕間 研究員と護衛騎士の帰り道――自称研究員の胸は高鳴る
リリたちの馬車が角を曲がって見えなくなるまで、マックスは小さく手を振っていた。
「ジーナさん、ありがとうございました。今日はそろそろ帰りますね」
「あら、帰るんか。すみませんね。予定があったとは、知らなくて」
「いえいえ。まだしばらく、この近くの宿に泊まっているので、また来ます。次は魔法の話も聞かせてください。では」
マックスと護衛騎士は家を後にした。
――家から少し離れたところで、護衛騎士のウィルが、抑えた声で言う。
「無駄足でなくて……また来るんですか?」
「うん。また来るよ、ウィル」
マックスは歩きながら、楽しそうに続けた。
「だって、あのリリちゃんって子。竜国のイシュルンの血が入ってるだろう?」
「え? そうなんですか? 黒い髪と、赤い目?」
「黒い髪は竜国に多かったって本で読んだ。しかも赤い目は……王族かもしれない。ふふっ」
「ってことは……黒?」
「黒だね。彼女のいるこの村にいれば、そのうち――竜が見られるかも」
肩に留まった月白梟が鳴いた。
『ピピ、ピイ』
「コフクもそうだって言ってるね」
マックスは上機嫌のまま続ける。
「竜がどこに棲んでいて、竜国の人がどうやって竜を呼ぶのか――本にも無かったんだ。楽しみだね、ふふっ」
そして、急に真面目な顔で胸に手を当てた。
「今、僕は胸がものすごくどきどきしているよ。これが、恋?」
「違うと思いますけど」
ウィルは即答した。
「……当面、戻れなそうだな」
「え? ウィル、何またぼそぼそ言ってるの?」
「いや、楽しそうで良かったなと。早く竜を見られると良いですね!」
マックスはルンルン、ウィルはぼそぼそ。
二人は並んで、村の宿へ帰っていった。




