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竜国の姫は、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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第11話 森のボス熊との対峙

騎士たちの気配が完全に消えてから、私は声をかけた。

「もう出てきて、大丈夫だよ」

 茂みから、ボールウサギやピョンピョンジカたちが出てくる。

「スゴイ! スゴイ!」

「竜、強イ!」

「人ラ、追イ払ッテクレテ、アリガトウ!」

 跳ねたり転がったり、大騒ぎだ。

「大黒熊ボスも、竜ノ話ナラ、キット聞ク!」

 そう言って、彼らは私を先導した。

 森の奥へ進むにつれ、気配は濃くなるが、

 不思議と、どの魔獣にも襲われなかった。

 やがて――

 黒く、人の倍ほどの背丈を持つ大黒熊が現れた。

 隣には、子熊が二頭。

 その後ろに、少し小柄な奥さん熊。

「うおっ! 竜か!?」

 大黒熊は、目を輝かせる。

「初めて見た! どう見ても、あんたの方が強いな!

 ……けど、勝負だ!」

 次の瞬間、飛びかかってきた。

 ――ばーん!

 ぶつかった拍子に、大黒熊は後ろに転び、尻もちをつく。

「負けた!」

 すぐ立ち上がり、明るく言った。

「でも、勝負できて良かった!

 今日から、あんたがこの森のボスだ!」

「えっ」

「みんな出てこい!

 新しいボスの誕生だ!」

 どこからともなく、魔獣たちが集まってくる。

 空にも、地上にも。

 ごおおお……。

 声が重なり、やがて静まった。

「……ボスになる気はないんだけど」

 私は慌てて言う。

「えっと、リリって呼んで」

「いや! 一番強い者がボスだ!

 リリ様!

あと、わしに名前をくれ!」

「えーと……雰囲気的に……ヌゴゴゴ?」

「……いや、それは……」

『センス、無いね』

 頭の上から、甲高い声。

「え?」

 先ほどの月白梟(げっぱくきょう)が、いつの間にか止まっていた。

『わたし、コフク。王都から来たよ。

新ボスの案を活かして、ヌーゴとかどう?』

「……それなら、いいかも」

「え、私のと何が違うの?」

 納得いかないが、それはさておき。

 私は事情を説明した。

 人は森に入らないよう止めていること。

 代わりに、畑を荒らさないでほしいこと。

「分かった」

 ヌーゴは、うなずいた。

「森に入らないなら、人の縄張りには入らない」

 約束は、成立した。

 私は帰ることにした。

「もう帰るのか? 食べ物、用意しようと思ったのに!」

「果物より、薬草がいいな」

 変な顔をされながらも、

 貴重な薬草を少し分けてもらった。

 森を出て、少し離れた場所で、私は指輪を外し、人に戻った。

 ボールウサギたちは、家の前まで送ってくれた。

「道、覚エタ!」

「人ニ隠レテ、マタ来ルネ!」

 ずっとついてきていた、コフクも帰っていった。

(……私、森のボスになってしまった……)

「ただいまー!」

「おかえり。どうなった?」

 私は、畑を荒らさない約束をしたことだけ話した。

「それで、これ。お土産」

「おや、マブリーに、ナデナデの葉かい。普段作れない薬が作れて助かるよ。」

 おばあちゃんは、嬉しそうに言った。


 その後、領主は森への侵入を止めた。

 魔獣も、畑に出てこなくなった。

 そして――

 時々、家の扉の前に、

 薬草や茸、珍しい虫(おばあちゃんによると薬になる)が置かれるようになった。

 森からの、静かな挨拶だった。


お読みいただきまして、ありがとうございます。

月、水、金21時に更新予定です。

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