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竜国の姫は、田舎で静かに暮らしたい  作者: コフク
第一章 畑と竜と、戻れない日常

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第10話 騎士たちと、怒る竜

ボールウサギやピョンピョンジカたちに先導されて、黒い森へ入った。

 森の中には、確かに人が通った跡があった。

 木を切って無理やり作ったような、細く歪な道。

(……ひどい)


 しばらく進んだところで、白いボールウサギが急に言った。

「チョット、隠レテ!」

 言われるまま、皆で近くの茂みに身を潜める。

 少し先に、小さな木の小屋があった。

 その前には、はっきりと人の気配――騎士たちだ。

「本当に、竜は森にいるんですかねぇ」

「別邸で出たのは俺も見た。森の方へ飛んで行ったようには見えたな」

「でも、帰ったなら、もういいんじゃ……下手に怒らせたら、怖い気もしますし」

「俺たち、竜と戦ったことなんてないぞ?」

「領主が行けって言うから来ただけだろ」

「王都から来た研究所のお偉いさんも、ついてきてるしな」

 私は、眉をひそめた。

(……竜はいないのに、引く気もない)

 このままなら、命令が解かれるまで、

 木を切りながら森の奥へ進むつもりだろう。

(ただ竜になって追い返しても、また討伐だなんだってなるだけ……)

 ふと、思い出す。

(あ、この前覚えた風魔法、使ってみるか)

 雲を操り、天気を変える魔法。

 それに、音を記録する魔法。

 私は、ボールウサギたちに小さく言った。

「実はね……私が竜なの。

 今から竜になるけど、怖くないから、驚かないでね」

「「エッ?!」」


 そして、

 騎士たちが、そろそろ移動しようかと話し始めた瞬間――

 空が、急に暗くなった。

 雨雲が集まり、ぽつり、ぽつりと雨が落ちる。

「……雨?」

「小屋で待つか」

 その瞬間。

ガオー!

 森を揺らすような咆哮が響いた。

 白衣を着た研究員が、小屋から飛び出してくる。

 肩には、白くて丸い小鳥、月白梟を乗せている。

「待ってください!」

 立派そうな騎士が後を追い、他の騎士たちも続いた。

 そこに――

 二階建ての家ほどの背丈の、赤い竜が立っていた。

「うわっ、竜だ!」

「本当に出た!」

「すごい……本物……!」

 研究員が興奮して前に出かけたが、すぐ騎士に引き戻される。

 私は、低く息を吸い、

 録音していた声を、風に乗せて放った。

『――おまえたち。

 わたしは、この森を治める竜である』

 騎士たちが、凍りつく。

『森を荒らす者は、許さぬ。

 畑を大事にする者を傷つける者も、許さぬ』

『おまえたちは、わたしには勝てぬ。

 あきらめて、森を去れ』

『さすれば、追わぬ』

「わ、分かりましたー!」

「帰りますー!!」

 騎士たちは、一斉に走り出した。

「えっ、ちょっと! せっかく竜に会えたのに!」

「何してるんですか! 勝てませんって!」

 研究員も引きずられるように去っていく。

 ぱたぱたぱた……。

 研究員の肩に乗っていた月白梟が、

 私の方へ飛んできた。


 ――最近覚えた魔法が、早速役に立った。

 それが、少し嬉しかった。


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