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番外幕です。ぎっくり腰やっちゃいました。

すみません、ぎっくり腰になっちまいました。無茶苦茶痛くて動けないです。

皆様、中腰はいけません。中腰はぎっくり腰を誘発します。日常に中腰の習慣がある方、今すぐ改めて下さい。


ぎっくり腰、マジで地獄ですよ。これ程動けなくなるものなのか、とひたすら恐れ入ってます。


さて、本題。

連載なのですが、ベッドから殆ど動けないんで更新が出来ません。本当に申し訳ないのですが、今週はお休みさせて下さい。一、二週間安静にしていれば治るそうです。治り次第また、再開します。


代わりと言ってはなんですが、この前暇潰しに書き、スマホに保存していた小説を投下します。


お読み頂けると幸いです。では。


皆様、中腰はやめましょう!

『最後に一目』


通学路を歩くポニーテールの女子高生。

春風が舞う中、弾む様な足取りで歩道を行くその姿は桜の精そのものだ。花吹雪に抱かれ、立ち止まった少女の目尻が険しくなる。

その視線の先に立つ初老の男。ベルサーチュのスーツを完璧に着こなしたその出で立ちに一分の隙もない。丁寧に整えられたロマンスグレーが見事なまでに似合っている。腕にある時計はなんと、最高級のパテックフィリップだ。男は少女に歩み寄り、口を開く。


「元気でやっとるか、沙耶香」

「大きなお世話よ!血が繋がってるからって、父親面やめてくんない!」

瞳を怒りと嫌悪に染め上げ、沙耶香と呼ばれた少女は続ける。

「ママを弄んで捨てたあんたを、あたしは絶対に許さない!さっさと消えて、このクソヤクザ!」

「・・・・・・分かった」

男は踵を返し、沙耶香の視界から消えた。


「頭、おかえりやし」

車が何台も停まっている二階建ての建物の前で、まだ三十代くらいの角刈りの男に出迎えを受けた初老の男。表情を引き締め、よく通る声で子分に応える。

「ご苦労だな、百瀬。支度は整っているんだろうな」

「へい!あっしら全員、頭に地獄の果てまでお供します」

百瀬と呼ばれた角刈りの男が指し示した先には、十数名程の黒服の男達がいた。その緩みのない張り詰めた容貌に、覚悟の程が感じられる。


初老の男が目を閉じる。瞼の裏で、小さな女の子を抱いたポニーテール姿の女性が笑っている。


やがて『何か』を振り切る様に男は目を開け、子分達に号令をかける。

「オヤジの弔い合戦だ!てめぇら、気合い入ってんだろうな!」

「おおおおおおっす!」

子分達の雄叫びを満足気に受け止め、初老の男は車に乗る。それに次々と続く男達。


戦場に向かう車の中で、初老の男は娘を想う。


(ありがとよ沙耶香。クソみたいな俺の人生を素晴らしいものにしてくれて)


町外れの葬儀場で、角刈りの男の指示のもと、少人数の男達が慌ただしく葬儀の準備をしている。松葉杖等、医療処置を施されていない者は一人もいない。消毒薬の匂いが漂う会場に、ポニーテール姿の制服を来た女子高生が入ってくる。

「あんだてめぇは!ここはガキの来るとこじゃねぇ!けぇれ!」

男達の一人が女の子を威圧する。それに対して女の子は微塵の怯みも見せずに、毅然と対応する。

「あたしの名は武本沙耶香。武本義雄の娘よ!」

「な、なに?」

驚きのあまり目を白黒させている男の前で、沙耶香を顎を突き出し不遜に言い放つ。

「馬鹿親父が死んだったって聞いてさ。ちょっと死顔拝みたくて来たのよ。通るわよ」

男を避けて棺に歩み寄ろうとする沙耶香に、男が立ちふさがる。

「てめぇ今なんつった!」

「馬鹿親父の死顔見せろって言ったんだけど」

どけ、とばかりに沙耶香が男を睨みつける。その瞬間、男が腕を振り上げた。

「このガキ!」

迫りくる平手に思わず目を閉じ、身を固める沙耶香。

「よせや」

横から伸びた手が、男の平手打ちを止める。

「百瀬のアニキ、このガキ頭を」

涙目で口を尖らせる舎弟に、百瀬は低い声で応える。

「ここは俺に任せて、お前は作業に戻れ」

「へ、へい!」

男は百瀬に一礼し、沙耶香を睨みつけた後作業に戻った。それを目で確認した百瀬は、暫く沙耶香を見た後に、その目尻をやや和らげる。

「頭によく似ていらっしゃる。特にその身に纏う張り詰めた様な雰囲気、本当にそっくりだ」

百瀬が一瞬だけ目尻を抑える。そんな彼に対し、沙耶香が言った。

「馬鹿親父に会わせて」

「分かりやした。どうぞ此方へ」

百瀬が身を屈め、沙耶香を棺の前まで誘導する。敷き詰められた花の中で、安らかに眠る父を、沙耶香は静かに見下ろしている。そんな彼女を、百瀬以下の全員が手を止めて見つめている。暫くして沙耶香が唐突に笑い出す。唖然とする男達をよそに、沙耶香が言う。

「馬鹿な男に相応しい間抜けな死にっぷり。マジで受けるんですけど」

そう言ってまた沙耶香はケタケタ笑う。次の瞬間、男達の怒気が部屋の空気を赤く染め上げる。

「このガキ!ぶっ殺したるぅ!」

男達が沙耶香に迫る。それを百瀬が一喝する。

「よさねぇか!コラ!」

「で、でも、アニキ」

「おめぇら俺に恥をかかせようってのか」

低い声で凄む百瀬に、男達が全員震え上がる。

「い、いえ。そんなつもりは」

「葬儀を血で汚すんじゃねぇ、大人しくしてろ」

そう言って、百瀬が沙耶香に視線を戻す。彼女は相変わらず父をこき下ろしていた。

「抗争で死ぬなんて聞こえはいいけど、やっている事ただの喧嘩よね。路上で噛み合う犬と何が違うのかしら」

あはははは、とまた笑い沙耶香は続ける。

「クズに相応しい惨めな死にっぷりね。ママも・・・・・・・きっと・・・・・・」

男達の視線の先で、沙耶香の肩が小さく震え始める。そっと目を伏せる百瀬の前で、沙耶香が棺に崩れ落ち、静かに嗚咽をあげる。


「おとう・・・・・・さん」




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