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第十八話 幼い命の、そののち

 ユングレリオ陛下との夕食は奇妙なものだった。


 数十人を余裕で列席させられるほど長い食卓に着いているのは、俺たち一行と陛下他一名のみ。

 本来なら、家人であるバスティーユとオーメルンは控室で食事なのだが、陛下の恩情で招かれた。


 元王妃殿下とクレインハルトの姿は、宣言通りここにはない。

 なくてよかったとは思う。料理がテーブルに置かれた途端、全部冷凍食品になっちまう。


 代わりと言っては何だが、王様っぽい爺やが一緒に席に着いていた。

 彼の正体はユングレリオの大叔父で、若き国王の補佐役を務めているそうだ。先王の時代から似たようなことをしており、政務は彼が担う所が大きいという。うちと同じですねハハハ。


 それにしても……。


『アルカナ』シリーズのナンバーワン王子、クレインハルトに兄がいたという話は、ゲーム内でも出てきた覚えはない。誰も口にしない。語られない。


 ……いや。ヒントはあった……かもしれない。

 クレインハルトの「スルーされ癖」だ。誰からも拾ってもらえないトーク。それは家族……特に兄弟に関することだったような気がする……。


 もしも、もしもだ。

 クレインハルトの兄が歴史から抹消されていて、それが公然の秘密となっていたら。


 昼間の一件でも確信できたがクレインハルトは白だ。処女雪のようなシロ。真っ黒なのは母親の方。その狡猾さ、策謀を誰もが見て見ぬふりをしていたとしたら……。


 ――夜が来た。


 高級ベッドに高級羽毛布団。香り立つ枕。人を夢の世界にめり込ませるような極上の歓迎に、賓客はたちまち眠りに落ちる。そんな中。


 俺は密かにベッドを抜け出し、廊下に落ちた月影の中を音もなく移動していた。

 目指すは王族たちの寝室エリア。

 何かが起こるとしたら今夜だ。その予感があった。絶対に向かうなという盗賊の勘に逆らい、俺は核心へと近づこうとしていた。


 ボソボソ……ボソボソ……ボソボソ……!


 王宮に染み込んだ邪な密談の群れが、俺と同じ方向へと流れていっている。まるですべての悪意が一つになろうとしているみたいに。その合流地点にいる者こそ、今夜の主役……!


 やがてたどり着いたのは一つの扉の前。

 扉に大きな花の文様が描かれており、他の扉にも同じような絵がある。部屋の持ち主を示したものらしいが、それぞれが誰にあてがわれた(しるし)なのかまではわからない。


 扉をそっと開けてみる。

 鍵はかかっていない。


 中は広々とした寝室だった。この王宮の主が使うに相応しい、厳かでゆったりとした空間。

 天蓋付きのベッドを、窓から入った斜めの月明かりが照らしていた。


 小さな子供が寝ている。長い髪を解き、遠目にも天使のようなあどけない寝顔。どこから見ても愛らしい少女――だからこそ、あれはユングレリオ陛下で間違いない。

 と。


「だっ、誰……!?」


 その彼女が、いや、彼が突然身を起こした。

 バレた!? 物音は立てていないはず。俺は扉のそばから暗がりへと素早く逃げ込む。もしかして寝たふりをしていたのか?


「ひっ……」


 俺の姿は完全に見られていた。一応、道中で見つかった時に備えて目元を覆うマスクを身に着けてきたが、この状況においては余計に不審なばかり。


「……陛下」


 俺は敵意がないことを示そうと抑えた声を向けたが、彼は小さな体を守るようにシーツを手繰り寄せ、


「ボ、ボクを殺しに来たのか……? たっ、助けて。殺さないで……お願い……」


 そう今にも泣き出しそうな声で懇願した。

 その顔は恐怖で引きつり、震えていた。昼間に見せた生意気で高慢な態度など微塵もない。慌てた俺は無害を示すために、跪く低姿勢で月明かりの中に滑り出た。


「……陛下……! 違います、わたしです……!」

「えっ……その声は……伯爵……?」


 あっ、やべ。普通に不法侵入!


「い……いや伯爵ではありません。その、あの、わたしは、そう、通りすがりの怪盗……怪盗貴族でございます」

「じゃあ、さっきのわたしですって何?」

「あ、あ、あれは言葉の綾。敵ではないことをお伝えしたかっただけです……! それよりも陛下、これは何事ですか。ここまで通路に誰もおりませんでした。見張りの衛士はどこに……?」


 そうなのだ。俺がここまでスムーズにたどり着けた理由。そして一番の困惑の理由。

 誰もいなかった。警備の人間が。

 いくらここが不可侵な王族の寝所だとしても、警備兵すら立ち入れないなんて話はない。


「……呼んでも、誰も来ん……」


 ユングレリオ陛下は、シーツをぎゅっと握り締めて言った。

 そしてそれは、どうやら本当のことらしかった。何しろこの深夜の侵入者に対し、彼は助けを呼ぶどころか必死に命乞いをしたのだから。


「どういうことなのですか、陛下……」

「そばに来てくれないか、伯爵」

「いえ、あの、わたしは怪盗――」

「震えが、止まらないんだ……」


 俺は恐る恐るベッドの脇に寄った。月明かりに照らされたユングレリオ陛下は、月の精霊かと思うほどに可憐で神秘的だ。

 救いを求めて伸ばされた手は、凍え死に寸前のようにぶるぶると震えていた。俺はそれを両手でそっと包み込んだ。冷たい汗に濡れている。これは……本気の恐怖だ……。


「ある日から警備の衛兵が一人、また一人と姿を消した」


 陛下は消え入りそうな声で語り出した。


「いないわけではない……ただ、巡回のタイミングとルートが微妙にずらされ、誰も持ち場にいない時間帯ができていったのだ。誰もそれについて違和感を持とうとしなかった。つまり衛士たちの間では予定通りのことだった。彼らは命令に対して一切の疑問を挟まない。死ねと言われれば本当に死んでしまう。そういう訓練を受けている。警備の形態が突然変わろうとも、それに粛々と従う……」

「まさか……」

「そうだ。近衛を束ねる者がこの丸裸な寝室を作り出した。今夜……我を暗殺させるために」


 悪い予測の中でも最上級に悪い結論に、俺はどんな声も出せなくなった。


「近衛さえも裏切ったのなら、もはや王宮内に我の味方はいない……。けれど最後に伯爵が来てくれて、少しだけ救われた気分だ。ありがとう……。もう部屋に戻るといい。刺客と鉢合わせしたら卿も巻き込まれてしまう……」


 悲しげなユングレリオ陛下の声に、やるせない諦めが滲んでいた。さっきは命乞いまでしたのに、逆に俺が来たことで最期を受け入れる覚悟ができてしまったようにも見えた。


「……陛下は、助けを求めてわたしを呼んだのではないのですか?」


 この日、俺が偶然ここに駆けつけたことは、あまりにもできすぎている。

 ユングレリオ陛下は衛兵の動きから暗殺の決行日を予測し、王宮で孤立しようとも何とか助けを求めたくて、まだ臣従礼が済んでいなかった俺を急遽呼び寄せたのではないだろうか。

 地方領主に何ができるわけでもないが、孤独に耐えかね、藁にも縋る思いで。


 夕食の場で、彼が必死に俺たちに話しかけていたのを覚えている。笑いかけようとして、突然顔をしかめたのを覚えている。時折グラスを倒したり、フォークから料理を落としたりしていたのは、手の震えか、心の震えか。死の恐怖に怯えながら、それでも不快な最後の晩餐にはしまいと、懸命に振る舞っていた。だとしたら……。


「ならば一掴みの藁が化けましょう。今宵、陛下の命はこの怪盗がお預かりします」


 ※


 足音は悠然と寝室へと入ってきた。

 まるで今だけは王宮の主。どんな邪魔も入らないことを確信している足取りで。


「陛下」


 余裕と優越に満ちた声を、侵入者はベッドの中の王へと投げかけた。

 目覚めたユングレリオ陛下が静かに言う。


「刺客か。……そなたの顔に見覚えがある。確か、母上の兄の子の……」

「……わたしを刺客と知ってその態度とは、さすがですね」


 かすかにアテがはずれたような刺客の反応だが、声にはまだ有り余る余裕がある。

 幼君と暗殺者が一対一。助かるすべは、普通はない。


「残念です。その愛らしい顔が泣きじゃくりながら必死に命乞いをするところを、世界でわたしだけが見られると思ったのですが」

「ふん、そのような希少な顔、クソザコ刺客なんかにはもったいない。身の程を知れ」


 圧倒的劣勢にあるはずの標的からそんななめ腐った返答を受け、男はいとも簡単に色めき立った。


「こっ、このガキっ……減らず口を……。自分の立場がわかっているのか?」


 剣を抜く音がした。気は短いが、その音には訓練した者の迷いのなさがあった。伊達に最後の仕上げに選ばれてはいないということか……。


「どうせあと少しの間、ここは無人なんだ。一突きで始末するように言われているが、少しくらいいたぶってやっても構わないよな……」


 下卑た物言いと態度に、さしものユングレリオ陛下もベッドの上で身じろぐ。


「へへっ、そうだその顔だ。だがもう謝っても遅いからな。大人をナメたことをたっぷり後悔させてやる……!」


 そう刺客は言って剣を振り下ろした。


 ――びよん。


 と、マヌケとさえ思える音を立てて、刺客の腕は元の位置へと跳ね返された。


「えっ……! なっ、な、何だ!?」


 腕を押さえて慌てふためく刺客。何かに触れた違和感ははっきりあったはずだ。そして、自分を跳ね返した虚空をまじまじと見つめ……さすがに気づいた。


 陛下のまわりに張り巡らされた無数の糸の存在に。

 跳ね返りの糸。高い柔軟性を持ち、たとえ剣で切りつけられても刃が横滑りしてしまうほど硬い。


「何だこれは!? 一体何をした!」


 刺客が後ずさったタイミングを見計らって、俺はベッドの下から溢れ水のように滑り出た。

 相手の足首に釣り針付きの糸を放つと、それはぐるぐると巻きつきながら刺客の足を縛り上げ、転倒させるに至る。


「ひっ、ひいっ!? 何だ、何だおまえ!?」

「俺の名は怪盗貴族……。今夜はお宝を守る側だが」

「バカなっ……ユングレリオを守る衛士は一人もいないはずだっ……!」

「だから泥棒だって言ってんだろ!」


 オホンと咳払いし、改めて刺客を見下ろす。

 先ほどのゲスい発言とは裏腹に、わりと上品な顔立ちの青年だった。ユングレリオは母の兄の子……と言っていた。つまり従兄にあたる人物。決してそこらのチンピラじゃない。


「クソッ、邪魔をするな!」


 彼は足を巻き取られたまま立ち上がり、なんと剣を振るってきた。

 俺の銀の前髪を鋭い剣閃がなぶっていく。こんな状態でもこれだけの剣捌きができるのか。恐らく小さい頃から剣を学んできた。それで今夜の刺客にも選ばれたか……!


「伯爵!」


 俺の身を案じる陛下の声が弾ける中、しかし敵が放ついずれの斬閃も虚空を滑って消えていった。

 随所に仕掛けた跳ね返りの糸が、太刀筋を逸らしているのだ。

 しかし、


「馬鹿め!」


 陛下のいるベッドから十分引き離されたところで、刺客は後ろを振り返った。そこから驚くべき跳躍力で、陛下へ剣を繰り出そうとする。


 だが――。


「俺からお宝を盗めるのは息子だけだ」


 くいっと指を軽く引くと、刺客の体は宙で停止した。

 まるで時間を止められたみたいに、本当に空中でだ。


「えっ……あああ!?」


 必死にもがくも、彼は敷かれた絨毯の上に降りてくることさえかなわなかった。月光の反射が静かに知らせる。刺客を四方八方から吊し上げた、見えざる糸の存在を。


「な、なんだっ、この糸……!」


 わたしにもわからん。


 それは俺の手から出る謎の糸だった。普段は千切れた蜘蛛糸のように宙を漂っているが、グッと気合を入れると一気に物質として顕現する。


「あんだけ暴れ回ったら、糸に絡まりまくるのも仕方ない」

「う……わ、わあああっ! ああああああ!」


 ここにきて、刺客は自分の失敗を悟ったようだった。そして、それがいかなる破滅をもたらすのかも。しかし、パニックを起こしたように叫び出そうとも、今夜は誰も来ない。


 俺は刺客の動きを注視しつつ、慎重にベッドのそばへと戻った。


「伯爵……!」


 陛下が俺の腕に抱きついてくる。彼からすれば気が気ではなかっただろう。戦いはずっと俺の防戦一方だった。そう……俺はケンカは弱い。


「陛下、こいつはどうしますか。国王暗殺未遂とか、それだけでもシャレにならん重罪でしょうが……」


 自分の末路を理解した刺客が、さらなる涙混じりの悲鳴を上げる。

 しかし国王陛下からの処断は恩情溢れるものだった。


「逃がしてやれ」


 俺は驚いて彼を見た。彼もまた俺を見つめ返してくる。


「ただし体は縛ったままだ。そのまま這いずって出ていけ。そうすれば見逃す」


 その指示を受け、俺は糸の何本かを解除した。ボトリと落ちた陛下の従兄は、ひいひいと獣じみた悲鳴を上げながら廊下へと這い出ていった。


「さすがに甘すぎるのでは……」


 俺が苦労してやっつけたからというわけでもないが、一応の苦言を呈す。あの男は本来なら確実に今夜、暗殺を成し遂げていた。


「いいのだ……。王の縁者でありながら王宮での役目もなく、鬱屈した日々を送っていたところに今回のことを吹き込まれたのだろう。あれは所詮、相手方の駒の一つにすぎん」

「相手方――首謀者は……」

「わかっているだろう? ……母上だ」


 小さなうめきを、俺は返事の代わりにした。


「母上はクレインハルトを王位に就けたがっていた。我と弟は腹違いでな。たった一歳違いで、王とそれ以外は切り分けられた。さぞ無念だったろうよ」

「けど、これは許されることじゃないでしょう。何とかしないと……」


 俺が反論すると、陛下はやるせない笑みを浮かべ、


「伯爵。わかるだろうか? もし我が暗殺されれば、表向きは何らかのマシな理由が発表されるだろうが、警護主任は確実に重い責任を取らされる。それこそ、生の首を失うくらいのな。それを承知で母上に手を貸したということは、すでに事後処理への介入も済んでいるということだ。王宮内の罪も咎も母上の手の中。勝負はあった……」


 一番忠誠心が高いはずの親衛隊すら抱き込んだのだ。やりかねない……。あの怪物なら。


「それでも、俺の証言とさっきの実行犯がいれば、彼女の陰謀を暴けるのでは? あんな悪者たちに王位を乗っ取られるはわけにはいかないでしょう」

「ふふ……。初心(うぶ)だな、伯爵は」


 ユングレリオ陛下は少しだけ嬉しそうに笑った。


「政治において真に不正義とは、弱いことなのだ。いかに優しさや正しさで飾り立てても、外国の侵入や内部の政争に敗れてしまうような弱い指導者なら、それは民にとって悪だ。我は……母上はここまで酷いことはしないと思っていた。王として懸命にやっていれば、皆もついて来てくれると思っていた。しかし、その隙に母上は王宮の重臣たちを掌握し、こたびの暗殺劇まで行き着いた。それを招いてしまったのは我の責任、我の弱さなのだ……」


 仮にユングレリオ陛下が警戒していたとしても、彼女は止められなかったように思う。あれは身に纏う気配からして格が違っていた。本物の怪物。


「仮に今回の証拠を元に母上を告発したとして、裁きの手は決して彼女には届かぬ。そこから始まるのは長く醜い権力闘争。それも王宮の大半が母上の側にいる中でだ。もし奇跡が起きてあちら一派を一掃できたとて宮殿内はガラガラ、民の暮らしはボロボロであろう。それは勝利でも何でもない……」


 悲しいかな元王妃が王に就けようとしているクレインハルトは、紛れもなく世界屈指の名君となる。戦略シミュレーションに形を変えた『アルカナ・クロニクル』シリーズでは、内政力は全キャラクター中最高値、全パラメーターの合計値で見てもトップ3に入る最強武将の一角。


「どう……するのですか……。まさか、変な気は……」

「あははっ、我だって命は惜しい。知ってるだろうに……伯爵は意地悪だな」


 陛下は少し顔を赤くしながら、俺を緩くにらんだ。


「明日、退位を宣言するよ。弟に王位を譲る。あれは図抜けて優秀だ。我よりもよほどうまく国を治めてくれるだろう。元王妃側についた家臣たちも、きっとそれをわかっていた。ボクはあまりにも……凡庸すぎた……」


 バスティーユは、ユングレリオ陛下は頑張っていると言っていた。だがそれでは足りない。それが広大な土地を束ねる王に求められる厳しさ、強さ……。


「しかしあの人は……元王妃殿下は、それで気が済むのでしょうか?」


 この場を閉じるにあたって、俺は最後の懸念を口にした。これだけのことを成し遂げたあの女が、今後は一転、大人しくしているとは到底思えなかったのだ。

 しかし、


「信じられないかもしれないが、子供が生まれるまでの彼女はとても聡明で温和な人だったそうだ。我の亡き母とも友のように親しかったという。彼女の望みは己の権力ではない。クレインハルトさえ王位に就けられれば必ず手を引く。そして、後は静かにそれを見守って生きるだろう……」


 そう言って微笑む陛下は、重い荷物を降ろしたようにさっぱりした顔だった。すべてがようやく収まるところに収まった。そんな表情。


 俺は天を仰いだ。……これが、決着か。


 暗殺を企てた側が、失敗しつつも勝利。強く邪な者が勝ち、凡庸ながらも優しい王は退場していく。政治は綺麗事ではないと言えばそれまでだが……こんなあどけない子が、その理屈に呑まれていくのを見るのは何ともやるせない。


「伯爵」


 彼が俺を呼んだ。


「明日、そなたの臣従礼が我の最後の役目となろう。早く寝かしてやりたいが……もう少しそばにいてくれぬか。我が眠るまで……少しだけでいいから……」


 俺はその頼みに従い、陛下のベッド脇に跪くと、遠慮がちに差し出された少女のような手を握った。

 ひどく冷めきっていた手は、今では人の温もりを取り戻したようだった。

 やがて小さな寝息が聞こえ始めた頃、彼の目から小さな涙の粒が流れるのを、俺は見た。


「お父様、ごめんなさい……」


 囁くような寝言。

 弱い王は悪。それをこの子に教えた先王なら、潔く退位を決めた今夜の判断も弱さと叱るだろう。

 でも、父親としてだったら――。


 腹違いの母の誠実さを信じ、最後まで民のためを想ったこの子に。

 俺は彼の柔らかな髪を撫でてながら、声にもならない声で囁いた。


「よく頑張ったな、ユングレリオ……」


長くなっちゃったけどここまで出さずにはいられなかった。

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― 新着の感想 ―
身体から謎の糸を出す謎の伯爵がメスガキ王に夜這いを掛けて籠絡して鳴かせたと聞いたがまことか!!?
謎の糸謎すぎる。
続きはノクターンで。
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