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残酷な青

空の青さは自身の状況とは関係なく

美しい青空だが、自身はそれに唾を吐きたかった


学校の一般生徒は立ち入りできない屋上で少年が仰向けで倒れていた。

その少年は嗚咽を堪えながら呟いた。


「くそったれ」


殴られた顔や体は痛くないところはない。

破かれた制服の上着からは、春の少し肌寒い空気が入り込んでくる。

更にズボンを脱がされた為、限りなく下半身は寒い。


それを行った犯人たちは今頃、思い出になる卒業式に向かっているだろう。

自身はこんな格好だから参加はできないし、参加する気も失せた。

だが、無気力にこのままの格好でいるのは恥ずかしい。

幸いな事に奴らは、ズボンをさらに上に設置してある鉄はしごに固く結ぶだけだったので、

容易に回収は出来る。

のろのろと少年はふらつきながら、口内に頬を思いっきり殴られた為に出来た、歯に沿った口内炎を舌でなぞり、

血の味が無くなるまで唾を吐きながら、ズボンを回収した。

回収したズボンは固く結ばれたせいか変な皺が大量についていたが破れてはいなかった。

正直、何度もこのズボンを縫い直して補修したので一二か所は破れるかもと思ったが、

この戦友は帰宅時に破れている個所を出さないように頑張ってくれた。


『卒業生入場です!皆様、ご起立の上、拍手でお迎えください。』


たぶん後輩にあたる女の子が今日の主役である卒業生を呼ぶアナウンスがした。

ズボンを履きながら屋上から下を見ると卒業生たちが、ぞろぞろと体育館に向かって歩き出していた。

気の早い女子生徒は既に泣いていたり、男子生徒たちはハイタッチしたり様々だ。

その中に虐めの犯人たちが屋上の自身の存在に気が付いて中指を立てて煽ってきた。

凄く不快だが反応すると、奴らをさらに図に乗らせるため静観していると、

野外の生徒を管理していた先生が抑止するように、生徒たちをなだめていた。

そして、虐めの犯人の不良共が屋上に中指を立てているのを見て屋上を一瞥し、

対象が自身だと解ると目線をそらして、他の生徒を宥めるようにしていた。

そりゃ、先生方からすると自身は厄介生徒だっただろう。

学費や給食費を未納し、さらに厄介ごとに巻き込まれている生徒だから無視というよりは、

静観していたい対象なんだろう。

心の中で下にいる奴ら全てに中指を立てながら、来月からのことを考えて気持ちを切り替えることにした。

こんな糞な環境だが、来月からはここを遠く離れた地で一人暮らしをしながら学校に通う手筈になっている。

母親が死んでから、地獄だった環境が終わる。


『神様は全て見ているから悪いことは全て自分に返ってくるのよ』


死んだ母には悪いが絶対に賛同出来ない言葉だった。

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