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闘い

工場の前に黒いバンが止まっているのを、自分の部屋の窓から見ている。


「おい、そろそろ出てくるぜ」

「誰が出てくるのかしらね」

相川と涼介の若い妻と三人で、工場と、黒いバンを見ている。

バンから男達が出てきて、荷室からビニールシートが出てきた。暗いのにはっきり見える。

ビニールシートからは人間の顔が視認できる。それは……

山本だった。

山本がこちらを見つめて、言う。


「ほっといてください。どうせ涼介さんにはわからないっスから」


ははははは。ははははは。おほほほほほ。

相川と涼介の若い妻が自分の部屋でげらげら笑っている。

山本も笑いながら工場に連れていかれる。


「見て。殺されるわよ」

「本当だ。あははははは」

黙れ!! 何が可笑しいんだ!!

やがて工場から「ブーーン」という音と、機械の動作する音、そして山本の悲鳴が聞こえた。山本が工場の中で、笑いながら叫んでいる。


「涼介さん聞こえますかー!! さっき、僕の手がプレス機で潰されましたー!! あははは!!

 次は足がミンチにされますよー! いいですかー? 行きますよー? あはは……ぎぃぃぃいいい!!!!!」


「おい聞いたかよ今の!! 傑作だあははは!!!」


すると、いつの間にか山本を運んだ男達は涼介の部屋の中にきており、涼介を囲んでいた。


「やったな!次は、お前だ!!あはははははははは!!!!」


そして涼介は、抵抗すらできず手足を男達に担がれ、部屋を出て、アパートの階段を降りて、一歩づつ異音が響く工場に運ばれる。

部屋の中で相川が笑っている。妻も笑っている。運んでる四人の男も笑っている。父親も笑ってる。坂本龍馬も笑っている。


やめろ!! 頼むやめてくれ!! 工場に連れて行かないでくれ!! 涼介の声が虚しく夜空に響く。


……そこで目が覚めた。


 涼介は汗だくのまま、立ち上がって再び、自宅の畳の上をぐるぐると歩き回っていた。ある激しい感情を念じながら。

もう沢山だ。抵抗してやる。何か、してやる。


人間は一人の時が一番強いって証明してやる。無力じゃないって証明してやる。

抵抗してやる。何か、してやる。


一人でも戦ってやる。勝てなくても何もせずに死んでいくのはごめんだ。

抵抗してやる。抵抗してやる。


俺はお前達に殴られ続けるサンドバックじゃない。蛙に捕食される虫じゃない。

抵抗してやる。お前たちの悪事を世の中に晒してやる!!


 涼介は暗い畳の上を歩き回り、何週も歩き回り、やがて夜が明けた。

時刻は13時、門限までは8時間もある。この時間を有効活用して敵のことを調べ尽くしてやる。


 涼介は勇気を振り絞って工場の前に立った。

そして……フードを被り、マスクをつけて、ゆっくり、ゆっくり、工場の外周を歩いてみた。








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