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死刑執行人少女

死刑執行人少女2 ~男たち13人、チャイナドレスJKに負け殺される~

作者: E.C.ユーキ
掲載日:2024/04/13

 夕焼(ゆうや)けの校舎(こうしゃ)に、放課(ほうか)後(ご)を知(し)らせるチャイムが鳴(な)り響(ひび)く。

 女子高生(じょしこうせい)の愛佳(あいか)は、ホームルームが終(お)わるなりバッグを手(て)にし、そそくさと教室(きょうしつ)を後(あと)にした。長(なが)い黒髪(くろかみ)をなびかせながら、早(はや)歩(ある)きで廊下(ろうか)を抜(ぬ)けていく愛佳(あいか)。すると、ブレザーの制服姿(せいふくすがた)の女子(じょし)生徒(せいと)二人(ふたり)が、嬉々(きき)と声(こえ)をかけてきた。

「あ、愛佳(あいか)! この後(あと)、一緒(いっしょ)に手芸店(しゅげいてん)いかない?」

「ごめんね。今日(きょう)は早(はや)く帰(かえ)らないといけないの」

「今週末(こんしゅうまつ)のイベントの準備(じゅんび)はもうできたの~?」

「うん。ばっちりだから楽(たの)しみにしてて!」

 愛佳(あいか)はすれ違(ちが)いざまに振(ふ)り返(かえ)りながら手(て)を振(ふ)り、友人(ゆうじん)二人(ふたり)に笑顔(えがお)を返(かえ)すものの、足(あし)は止(と)めずに帰路(きろ)についた。



 ビルトインガレージの一軒家(いっけんや)が愛佳(あいか)の家(いえ)だ。愛佳(あいか)は鍵(かぎ)を開(あ)けて中(なか)に入(はい)る。当然(とうぜん)中(なか)には誰(だれ)もいない。父(ちち)も母(はは)も共働(ともばたら)きで帰(かえ)りは遅(おそ)く、中学生(ちゅうがくせい)の弟(おとうと)もまだ部活動(ぶかつどう)中(ちゅう)の時間(じかん)だった。愛佳(あいか)は小走(こばし)りで階段(かいだん)を上(あ)がると、自室(じしつ)の扉(とびら)を開(あ)けた。

 八畳(じょう)程(ほど)の洋室(ようしつ)、愛佳(あいか)の部屋(へや)は――色(いろ)とりどりの服(ふく)が飾(かざ)られていていっぱいだった。メイド服(ふく)、ロリィタ服(ふく)、パンク系(けい)、パーティドレス、|セーラー服(ふく)、アイドル衣装(いしょう)、他(ほか)にも色々(いろいろ)な服(ふく)がラックに整理(せいり)されてかけられている。学習(がくしゅう)机(づくえ)にはミシンや裁縫(さいほう)道具(どうぐ)が置(お)かれていた。部屋(へや)の中央(ちゅうおう)、トルソーに着(き)せているアニメヒロインの衣装(いしょう)一式(いっしき)は、今週末(こんしゅうまつ)に友人(ゆうじん)二人(ふたり)と参加(さんか)するコスプレイベント用(よう)の衣装(いしょう)だ。

 愛佳(あいか)はそれらを眺(なが)めながら、満面(まんめん)の笑(え)みを浮(う)かべていた。

「さ~て。今夜(こんや)はどんな衣装(いしょう)にしようかしら」

 制服(せいふく)のブレザーを脱(ぬ)ぎ、愛佳(あいか)は『ひとりファッションショー』を開催(かいさい)する。愛佳(あいか)はうきうきと服(ふく)を手(て)にとっては、着替(きが)え、鏡(かがみ)に映(うつ)った自身(じしん)の全身(ぜんしん)を確認(かくにん)する。身長(しんちょう)160㎝ほどで、頭(あたま)が小(ちい)さく手(て)足(あし)が長(なが)い愛佳(あいか)。さらには見事(みごと)なくびれを描(えが)く抜群(ばつぐん)のプロポーションゆえに、どんな服(ふく)でもきれいに映(は)える。

「青(あお)もいいな~。いや、黄色(きいろ)もいいかも……」

 しかし本人(ほんにん)にはしっくり来(こ)ないのか、とっかえひっかえに服(ふく)を持(も)ち出(だ)してはコーデを試(ため)す。なかなか決(き)まらないが、愛佳(あいか)は終始(しゅうし)ルンルンと鼻歌(はなうた)を歌(うた)っていた。

「――うん。やっぱり、赤(あか)が一番(いちばん)ね」

 ようやく今夜(こんや)の一着(ちゃく)が決(き)まると、気(き)がつけば日(ひ)も沈(しず)みかけていた。メイク箱(ばこ)を用意(ようい)しながら、愛佳(あいか)はふと窓(まど)の外(そと)へと視線(しせん)を向(む)ける。

「今夜(こんや)も、楽(たの)しいパーティになりそうね」

 夕日(ゆうひ)に染(そ)まった赤(あか)い空(そら)を眺(なが)めながら、愛佳(あいか)はうっとりと微笑(ほほえ)んだ。



 街(まち)外(はず)れの廃(はい)工場(こうじょう)に夜(よる)が訪(おとず)れる。

 街中(まちじゅう)がネオンを灯(とも)し活気(かっき)づいていくのとは反対(はんたい)に、ひと気(け)の無(な)い閑散(かんさん)とした廃(はい)工場(こうじょう)の一帯(いったい)。その一角(いっかく)では、黒(くろ)づくめの男(おとこ)たちがうろついていた。建物(たてもの)の外(そと)では、数人(すうにん)の男(おとこ)たちが分散(ぶんさん)して四方八方(しほうはっぽう)を見張(みは)っている。よからぬ事(こと)をしているのは明白(めいはく)だった。

 その中(なか)、見張(みは)りの男(おとこ)の一人(ひとり)が何(なに)かを見(み)つけた。



 ――夜闇(よやみ)の中(なか)から、ひとつ、人影(ひとかげ)が浮(う)かんで来(く)る。

 女(おんな)か? いや、まだ若(わか)い少女(しょうじょ)だ。



 真(ま)っ赤(か)なチャイナドレス姿(すがた)の、黒(くろ)の長(なが)つや髪(かみ)の少女(しょうじょ)。

 はだけた胸元(むなもと)に、深(ふか)いスリットの腰(こし)、肩(かた)に背中(せなか)――

 そこかしこから覗(のぞ)かせる、むちむちの白(しろ)い肌(はだ)。

 ほとんど丸出(まるだ)し乳房(ちぶさ)には、深(ふか)い谷間(たにま)がくっきりと。 

 黒(くろ)いニーハイ網(あみ)タイツに浮(う)き出(で)るふともも。

 目元(めもと)は、ピンクのアイシャドウが濃(こ)い長(なが)まつ毛(げ)。

 真(ま)っ赤(か)なルージュには、てらてらと輝(かがや)くグロス。

 足(あし)に履(は)くのは、踵(かかと)が細(ほそ)く尖(とが)った赤(あか)いピンヒール。



 夜闇(よやみ)の中(なか)から、美少女(びしょうじょ)が歩(ある)いて来(く)る。

 片手(かたて)を腰(こし)に当(あ)てて、腰(こし)をくねらせ、豊満(ほうまん)な乳房(ちぶさ)をぷりぷりと揺(ゆ)らしながら、コツコツと足音(あしおと)を反響(はんきょう)させて近(ちか)づいて来(く)る。

 男(おとこ)は思(おも)わず見入(みい)っていたが、見張(みは)りの任務(にんむ)を思(おも)い出(だ)し、少女(しょうじょ)に立(た)ち止(ど)まるように警告(けいこく)した。

「あら? 今夜(こんや)、ここでパーティがあると聞(き)いたのだけど」

 廃(はい)工場(こうじょう)で今(いま)行(おこな)われているのは、麻薬(まやく)の取引(とりひき)のみだ。手短(てみじか)に終(お)える算段(さんだん)だというのに、女(おんな)なんて呼(よ)ぶわけがない。

 しかし――かなりの上玉(じょうだま)の少女(しょうじょ)だ。

 幼顔(おさながお)ながら、むちむちと肉付(にくづ)いた女体(にょたい)。赤(あか)いチャイナドレスのスリットから覗(のぞ)く白(しろ)いふともも。これを目(め)の前(まえ)にして手(て)を出(だ)さないのは実(じつ)に惜(お)しい。見張(みは)りは他(ほか)にもいるのだから、一人(ひとり)くらい抜(ぬ)けても問題(もんだい)ないだろう。

 男(おとこ)はニヤニヤと笑(わら)いながら、少女(しょうじょ)に『楽(たの)しいこと』をしようと誘(さそ)った。

 すると少女(しょうじょ)もまんざらでもない様子(ようす)で微笑(ほほえ)みを返(かえ)した。

「うふふ、奇遇(きぐう)ね。わたしも今夜(こんや)は『楽(たの)しいこと』がしたい気分(きぶん)なの」

 猫撫(ねこな)で声(ごえ)の少女(しょうじょ)、その小(ちい)さな肩(かた)の丸出(まるだ)しの白肌(しろはだ)へと男(おとこ)が手(て)を伸(の)ばしたその時(とき)――



 ――少女(しょうじょ)の黒(くろ)い瞳(ひとみ)が、真(ま)っ赤(か)に光(ひか)り、変貌(へんぼう)する。



 次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、少女(しょうじょ)は男(おとこ)の手首(てくび)をつかみ、ひねり上(あ)げた。その細腕(ほそうで)からは信(しん)じられない力(ちから)だ。悲鳴(ひめい)を上(あ)げる男(おとこ)をよそに、涼(すず)しい顔(かお)の少女(しょうじょ)。

「どう? 楽(たの)しい?」

 男(おとこ)の悲鳴(ひめい)が絶叫(ぜっきょう)に変(か)わる中(なか)、ついに――骨(ほね)が折(お)れた。

 入口(いりぐち)の騒(さわ)ぎを聞(き)きつけ、男(おとこ)の仲間(なかま)たちが集(あつ)まって来(く)る。他(ほか)の箇所(かしょ)の見張(みは)りや建物(たてもの)内(ない)の者(もの)も駆(か)けつけた。そして――あらぬ方向(ほうこう)に腕(うで)が曲(ま)がった仲間(なかま)の姿(すがた)を目(ま)の当(あ)たりにする。腕(うで)を押(お)さえたまま地面(じめん)にうずくまる仲間(なかま)、その目(め)の前(まえ)では、真(ま)っ赤(か)なチャイナドレス姿(すがた)の美少女(びしょうじょ)が笑顔(えがお)で見下(みお)ろしていた。

 少女(しょうじょ)を、13人(にん)の男(おとこ)たちが包囲(ほうい)した。



「さあ、パーティの始(はじ)まりよ」



 少女(しょうじょ)ひとりと、男(おとこ)たち13人(にん)との戦闘(せんとう)が始(はじ)まった。

 優勢(ゆうせい)に立(た)ったのは――赤(あか)チャイナドレスの少女(しょうじょ)だった。

 《砕(さい)骨(こつ)のハイキック乱舞(らんぶ)》。次々(つぎつぎ)と襲(おそ)いかかってくる男(おとこ)たちを、少女(しょうじょ)は自(みずか)らの脚(あし)を振(ふ)り回(まわ)して――強烈(きょうれつ)な蹴(け)りで、骨(ほね)を折(お)る。取(と)り押(お)さえようと伸(の)ばした腕(うで)、防御(ぼうぎょ)しようと固(かた)めた腕(うで)、ガラ空(あ)きになった胴(どう)のあばら、そのことごとくを、真(ま)っ赤(か)なハイヒールが骨(ほね)ごと粉砕(ふんさい)する。チャイナドレスの深(ふか)いスリットから伸(の)びる、むちむちの白肌(しろはだ)の脚(あし)は変幻(へんげん)自在(じざい)だ。ぷりぷりと揺(ゆ)れるふとももの贅肉(ぜいにく)からは考(かんが)えられない、とんでもない怪力(かいりき)で蹴(け)り飛(と)ばし、次々(つぎつぎ)と男(おとこ)たちの骨(ほね)を折(お)っていく。

 しかし、少女(しょうじょ)はたったひとりである。男(おとこ)たちは人海(じんかい)戦術(せんじゅつ)で強引(ごういん)に少女(しょうじょ)に押(お)し寄(よ)せた。結果(けっか)、何人(なんにん)もの腕(うで)やあばらの骨(ほね)を犠牲(ぎせい)にしながらも、男(おとこ)たちはなんとか少女(しょうじょ)の攻勢(こうせい)の阻止(そし)に成功(せいこう)する。

 ――大男(おおおとこ)が、少女(しょうじょ)を背後(はいご)から押(お)さえ込(こ)んだのだ。

 身長(しんちょう)2m近(ちか)い大男(おおおとこ)の巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)の160㎝ほどの女体(にょたい)を腕(うで)の中(なか)に締(し)めつける。元(もと)総合(そうごう)格闘技(かくとうぎ)選手(せんしゅ)の締(し)め上(あ)げに、さすがの少女(しょうじょ)も動(うご)きが止(と)まった。辺(あた)りに蹴(け)り倒(たお)された男(おとこ)たちは、折(お)れた腕(うで)や脇腹(わきばら)を抱(かか)えながらも、なんとか立(た)ち上(あ)がり安堵(あんど)する。



 ――少女(しょうじょ)は、不敵(ふてき)に微笑(ほほえ)んでいた。



 次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、少女(しょうじょ)の身体(からだ)の周(まわ)りに――赤(あか)いオーラが顕現(けんげん)した。『魔法(まほう)』である。これまでも使(つか)っていた身体(しんたい)強化(きょうか)魔法(まほう)が、一層(いっそう)強化(きょうか)されたのだ。

 少女(しょうじょ)は大男(おおおとこ)の拘束(こうそく)を、いとも簡単(かんたん)に吹(ふ)き飛(と)ばした。衝撃(しょうげき)で後(うし)ろに仰(の)け反(ぞ)る大男(おおおとこ)。間髪(かんぱつ)入(い)れずに少女(しょうじょ)は身体(からだ)を反転(はんてん)して接近(せっきん)し、男(おとこ)の上体(じょうたい)に抱(だ)きついた。そして今度(こんど)は、少女(しょうじょ)の細腕(ほそうで)が、男(おとこ)の両腕(りょううで)の上(うえ)から上体(じょうたい)を抱(かか)え込(こ)む。

「残念(ざんねん)だったわね。それじゃ、次(つぎ)は私(わたし)の番(ばん)よ」

 少女(しょうじょ)は、にんまりと笑(わら)い――両腕(りょううで)を締(し)め、男(おとこ)の身体(からだ)を締(し)め上(あ)げた。

「えいっ❤」

 少女(しょうじょ)のかわいらしい掛(か)け声(ごえ)とともに、男(おとこ)の絶叫(ぜっきょう)が廃(はい)工場(こうじょう)に響(ひび)き渡(わた)る。

「まだまだいくわよ~」

 男(おとこ)の巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)に抱(かか)え上(あ)げられ、宙(ちゅう)に浮(う)く。

「えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤」

 その細腕(ほそうで)で、立(た)て続(つづ)けに男(おとこ)の身体(からだ)を締(し)めつける。

 次第(しだい)に男(おとこ)の悲鳴(ひめい)の中(なか)に、骨(ほね)が折(お)れる音(おと)が混(ま)ざり始(はじ)めた。

 男(おとこ)の巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)の腕(うで)の中(なか)に締(し)め潰(つぶ)されていく。

 吐血(とけつ)し、足(あし)をばたつかせ、暴(あば)れ狂(くる)う男(おとこ)……。

 少女(しょうじょ)は周囲(しゅうい)に向(む)けて、これ見(み)よがしに言(い)い放(はな)つ。

「助(たす)けなくていいの? ほらほら、いつでもかかっていらっしゃい」

 その光景(こうけい)は、まさに地獄(じごく)だった。

 満身(まんしん)創痍(そうい)の男(おとこ)たち。腕(うで)を折(お)られ、あばらを折(お)られ、血反吐(ちへど)を吐(は)きながら作(つく)り出(だ)した絶好(ぜっこう)の機会(きかい)。そうまでして少女(しょうじょ)を取(と)り押(お)さえたというのに、少女(しょうじょ)は力(ちから)のすべてを出(だ)しているわけではなかったのだ。2mの巨体(きょたい)を軽々(かるがる)と持(も)ち上(あ)げ、腕(うで)の中(なか)に圧(お)し潰(つぶ)す少女(しょうじょ)。圧倒的(あっとうてき)な力(ちから)。人間(にんげん)が敵(かな)う存在(そんざい)ではない。男(おとこ)たちは既(すで)に、戦意(せんい)を喪失(そうしつ)していた――……。

「来(こ)ないのね。いいわよ。そのまま指(ゆび)をくわえて見(み)てなさい」

 男(おとこ)たちは、何(なに)もできなかった。

「えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤」

 攻撃(こうげき)することも、逃(に)げることも、目(め)を逸(そ)らすこともできなかった。ただ、見(み)ていることしかできなかった。血反吐(ちへど)を吐(は)き、悲鳴(ひめい)に喘(あえ)ぎ、決(けっ)して地(ち)につかない足(あし)をばたつかせ、そしてだんだんと動(うご)かなくなっていく大男(おおおとこ)の様(さま)を、ただ見(み)ていることしかできなかった。

「あれれ? もう死(し)んじゃったの? 見(み)た目(め)と違(ちが)って繊細(せんさい)なのね」

 大男(おおおとこ)は、少女(しょうじょ)の腕(うで)に抱(だ)き締(し)められて、死亡(しぼう)した。折(お)れたあばら骨(ぼね)が内臓(ないぞう)を突(つ)き破(やぶ)り、絶命(ぜつめい)したのだ。

 男(おとこ)の亡骸(なきがら)を放(ほう)り捨(す)てる少女(しょうじょ)。押(お)しつけられていた少女(しょうじょ)の乳房(ちぶさ)が解放(かいほう)され、赤(あか)いチャイナドレスの中(なか)から、ぷりんと盛(も)り出(で)る。頬(ほお)に浴(あ)びた返(かえ)り血(ち)の下(した)、白(しろ)い肌(はだ)は火照(ほて)っていた。そして、長(なが)い黒髪(くろかみ)をゆらりと振(ふ)り払(はら)い――

 真(ま)っ赤(か)な瞳(ひとみ)ふたつが、残(のこ)りの男(おとこ)たちをギラギラととらえる。



「うふふ。次(つぎ)はだぁれ?」



 夜(よる)の廃(はい)工場(こうじょう)に、鮮血(せんけつ)の花(はな)が咲(さ)き乱(みだ)れる。

 《斬首(ざんしゅ)の回(まわ)し蹴(げ)り》。我先(われさき)にと逃(に)げ惑(まど)う男(おとこ)たちの首(くび)が、次々(つぎつぎ)と刎(は)ね飛(と)ばされていく。十分(じゅうぶん)に魔力(まりょく)が高(たか)まった少女(しょうじょ)の回(まわ)し蹴(げ)りは、骨(ほね)を砕(くだ)くどころではなく、引(ひ)き千切(ちぎ)るほどまでに威力(いりょく)が増(ま)していた。

 蜘蛛(くも)の子(こ)を散(ち)らすように、背(せ)を見(み)せて散(ち)り散(ぢ)りに逃(に)げる男(おとこ)たち。しかし、魔法(まほう)で強化(きょうか)した少女(しょうじょ)の脚(あし)は、脱兎(だっと)の一匹(いっぴき)すらも逃(に)がさない。必死(ひっし)に逃(に)げる男(おとこ)の背(せ)に瞬(またた)く間(ま)に追(お)いついては――

「つかまえたっ❤」

 ――男(おとこ)の前髪(まえがみ)を、鷲(わし)づかみにする。

 続(つづ)けて捕(つか)まえたまま、男(おとこ)の顔面(がんめん)を目掛(めが)けて、何度(なんど)も膝(ひざ)蹴(げ)りを叩(たた)き込(こ)む。

「ほら、ほら、ほら、ほらっ」

 たちまち男(おとこ)は鼻(はな)が潰(つぶ)れ、顔(かお)は血(ち)で真(ま)っ赤(か)に染(そ)まり、やがて動(うご)かなくなる。そうなったら、少女(しょうじょ)はもう興味(きょうみ)を示(しめ)さない。動(うご)かなくなったそれを建物(たてもの)の入口前(いりぐちまえ)へと放(ほう)り捨(す)て、少女(しょうじょ)はまた新(あたら)しい『おもちゃ』をつかまえにいく。とっかえひっかえに新(あたら)しい男(おとこ)を捕(つか)まえては、前髪(まえがみ)を鷲(わし)づかみにし、顔面(がんめん)に膝(ひざ)蹴(げ)りを叩(たた)き込(こ)む。また一人(ひとり)、また一人(ひとり)――……。廃(はい)工場(こうじょう)入口前(いりぐちまえ)には、動(うご)かなくなった男(おとこ)たちが山(やま)のように積(つ)み上(あ)がっていった。

 それでも、男(おとこ)たちは諦(あきら)めない。すぐそこで仲間(なかま)の顔(かお)に膝(ひざ)蹴(げ)りを打(う)ち込(こ)む少女(しょうじょ)の元(もと)へと、這(は)いつくばってでも向(む)かっていく。何度(なんど)も血反吐(ちへど)を吐(は)きながらも、なんとか接近(せっきん)し、赤(あか)いピンヒールの上(うえ)の足首(あしくび)へと手(て)を伸(の)ばす。しかし、その手(て)が少女(しょうじょ)をつかむことはなかった。

 ――ピンヒールの踵(かかと)に、手(て)を串刺(くしざ)しにされたからだ。

「なかなか根性(こんじょう)があるのね。見直(みなお)したわ」

 手(て)の甲(こう)を貫通(かんつう)したピンヒール。激痛(げきつう)に伏(ふ)す中(なか)、少女(しょうじょ)の褒(ほ)め言葉(ことば)が頭上(ずじょう)から聞(き)こえてくる。満身(まんしん)創痍(そうい)の身体(からだ)に杭(くい)を打(う)たれ、いよいよ男(おとこ)は動(うご)けなくなってしまった。

 後(あと)はもう、されるがままである。

 少女(しょうじょ)はピンヒールで男(おとこ)の手(て)を貫(つらぬ)いたまま、もう片方(かたほう)の脚(あし)を後方(こうほう)へ振(ふ)り上(あ)げた。そして――

「そーれっ」

 ――サッカーボールキック。

 男(おとこ)は、首(くび)だけとなって宙(ちゅう)を舞(ま)った。

 それからも、血(ち)の雨(あめ)は止(や)まなかった。一体(いったい)、また一体(いったい)と、廃(はい)工場(こうじょう)入口前(いりぐちまえ)に死体(したい)が積(つ)み上(あ)がっていく。気(き)がつけば死体(したい)の数(かず)は、12に達(たっ)していた。



「あとは、あなただけね」



 最後(さいご)の一人(ひとり)となった男(おとこ)には、もはや思考(しこう)は無(な)かった。男(おとこ)は持(も)てるすべてを振(ふ)り絞(しぼ)って、少女(しょうじょ)へと突撃(とつげき)した。

 少女(しょうじょ)は、にんまりと微笑(ほほえ)む。両腕(りょううで)を広(ひろ)げて男(おとこ)を迎(むか)えると、互(たが)いに手(て)を握(にぎ)って押(お)し合(あ)う姿勢(しせい)になった。

 ――力比(ちからくら)べだ。

「ほらほら、あなたが最後(さいご)なんだから、もっとがんばって❤」

 少女(しょうじょ)はあからさまに手加減(てかげん)していた。なのに男(おとこ)は押(お)されてしまう。全身全霊(ぜんしんぜんれい)、持(も)てるすべてを少女(しょうじょ)にぶつけているというのに、下(した)へ下(した)へと組(く)み伏(ふ)せられていく。あっという間(ま)に男(おとこ)は押(お)し倒(たお)され、少女(しょうじょ)に馬乗(うまの)りにされてしまった。

「まだ終(お)わりじゃないでしょ? ほらほら、がんばって❤」 

 《馬乗(うまの)りめった殴(なぐ)り》。少女(しょうじょ)の左右(さゆう)の拳(こぶし)が、男(おとこ)の顔面(がんめん)を破壊(はかい)する。細(ほそ)い腕(うで)から繰(く)り出(だ)される、手加減(てかげん)された強烈(きょうれつ)な拳(こぶし)。右(みぎ)、左(ひだり)、右(みぎ)、左(ひだり)と拳(こぶし)が打(う)ち下(お)ろされる度(たび)に――

 ――ぷりぷりと、乳房(ちぶさ)があばれ回(まわ)る。

「ほら❤ ほら❤ ほら❤ ほら❤」

 赤(あか)いチャイナドレスの胸元(むなもと)からこぼれ出(だ)た、ふたつの乳房(ちぶさ)。それが拳(こぶし)の返(かえ)り血(ち)が飛(と)び散(ち)る中(なか)で、跳(は)ねて、弾(はず)み、遊(あそ)び回(まわ)る。これ見(み)よがしに。嘲笑(あざわら)うかのように。目(め)の前(まえ)、こんなに近(ちか)くでおどっているのに、男(おとこ)には手(て)が出(で)せない。もう、もう――……。ぷりぷりとおどり続(つづ)ける乳房(ちぶさ)を前(まえ)に、男(おとこ)の意識(いしき)は薄(うす)れていった。

「もう終(お)わりなの? つまらないわね」

 少女(しょうじょ)は男(おとこ)の首(くび)を鷲(わし)づかみにし、男(おとこ)の身体(からだ)を片手(かたて)一本(ほん)で持(も)ち上(あ)げる。馬乗(うまの)りの体勢(たいせい)から、股下(またした)から男(おとこ)の身体(からだ)を引(ひ)き抜(ぬ)くようにして立(た)ち上(あ)がり、男(おとこ)の首(くび)をつかんだまま頭上(ずじょう)へと掲(かか)げた。男(おとこ)の身体(からだ)が宙(ちゅう)に浮(う)く。どれだけ足(あし)をばたつかせても、何(なん)にも当(あ)たらない。

「やっぱりこの程度(ていど)なのね。もういいわよ」

 少女(しょうじょ)は片手(かたて)で男(おとこ)の首(くび)をつかみ上(あ)げながら、もう片方(かたほう)の手(て)を自(みずか)らの胸(むね)にそえた。真(ま)っ赤(か)なマニキュアがつや光(ひか)る爪(つめ)、しなやか五本(ほん)の指(ゆび)を、ピンと一直線(いっちょくせん)にそろえて固(かた)める。そして、まるで弓(ゆみ)をつがえ構(かま)えるかのように、貫手(ぬきて)を、真(ま)っ赤(か)な爪(つめ)の先(さき)を男(おとこ)の左胸(ひだりむね)へと向(む)けて――

「さようなら」

 13個(こ)目(め)の、血(ち)の花(はな)を咲(さ)かせた。



 少女(しょうじょ)ひとりと、男(おとこ)13人(にん)との戦闘(せんとう)が決着(けっちゃく)した。

 真(ま)っ赤(か)なチャイナドレス姿(すがた)の、血(ち)みどろの悪夢(あくむ)――

 13人(にん)の男(おとこ)たちは、少女(しょうじょ)の人外(じんがい)な暴力(ぼうりょく)の前(まえ)に、全滅(ぜんめつ)した。



 13人(にん)の死体(したい)の頂上(ちょうじょう)に、赤(あか)の少女(しょうじょ)はひとり、腰(こし)をかける。

 ニーハイ網(あみ)タイツの脚(あし)を組(く)み、今夜(こんや)、この手(て)で殺(ころ)した男(おとこ)たちを尻(しり)の下(した)に敷(し)いて、少女(しょうじょ)はひとり、ふけっている。

 ――赤(あか)一色(いっしょく)の世界(せかい)に没頭(ぼっとう)する。

 少女(しょうじょ)が自(みずか)ら創(つく)り上(あ)げた、血(ち)みどろの赤(あか)の世界(せかい)。男(おとこ)たちがやり取(と)りしていた白(しろ)い粉(こな)には見向(みむ)きもしない。赤(あか)いチャイナドレスに、赤(あか)いピンヒール。黒髪(くろかみ)も白肌(しろはだ)も、今(いま)は返(かえ)り血(ち)に染(そ)まっている。そして、少女(しょうじょ)の頬(ほお)はますます紅潮(こうちょう)し、呼吸(こきゅう)も色(いろ)づいていく。身(み)も心(こころ)も、赤(あか)一色(いっしょく)に。死屍(しし)累々(るいるい)の中(なか)で少女(しょうじょ)は、赤(あか)に浸(ひた)り、酔(よ)い痴(し)れ、味(あじ)わい、飲(の)み干(ほ)す。

 死体(したい)の山(やま)の頂上(ちょうじょう)に腰(こし)をかけた、赤(あか)の少女(しょうじょ)。

 少女(しょうじょ)はいつまでも、赤(あか)に浸(ひた)り、蕩(とろ)けていた。



 夕焼(ゆうや)けの校舎(こうしゃ)に、放課(ほうか)後(ご)を知(し)らせるチャイムが鳴(な)り響(ひび)く。

「ごめんね。今日(きょう)も早(はや)く帰(かえ)らないといけないの」

 女子高生(じょしこうせい)の愛佳(あいか)は、今日(きょう)も友人(ゆうじん)二人(ふたり)の誘(さそ)いを断(ことわ)り、一直線(いっちょくせん)に帰宅(きたく)する。一緒(いっしょ)にコスプレイベントに参加(さんか)する仲(なか)ではあるが、これだけは譲(ゆず)れない。



 ――あの快感(かいかん)を、忘(わす)れられない。



 夜(よる)の摩天楼(まてんろう)を、真(ま)っ赤(か)な満月(まんげつ)が照(て)らす。

 並(なら)び立(た)つ高層(こうそう)ビルの根本(ねもと)では、道路(どうろ)は渋滞(じゅうたい)、警察(けいさつ)車両(しゃりょう)のけたたましいサイレンがそこかしこから鳴(な)り、夜(よる)の都会(とかい)に反響(はんきょう)している。そびえるビル群(ぐん)の中(なか)でも最(もっと)も高(たか)いものの頂上(ちょうじょう)に――少女(しょうじょ)の姿(すがた)があった。

 真(ま)っ赤(か)なチャイナドレス姿(すがた)の少女(しょうじょ)が、すらりと立(た)ち、騒(さわ)がしい都会(とかい)を見下(みお)ろしている。



「うふふ。今夜(こんや)も楽(たの)しいパーティになりそうね」



 ビルからビルへと跳躍(ちょうやく)していく少女(しょうじょ)。

 行(ゆ)き交(か)う赤色灯(せきしょくとう)が乱反射(らんはんしゃ)する都会(とかい)。

 少女(しょうじょ)は今夜(こんや)も、赤(あか)に染(そ)まる――。



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