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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死刑執行人少女

死刑執行人少女2 ~男たち13人、チャイナドレスJKに負け殺される~

作者: E.C.ユーキ

 夕焼(ゆうや)けの校舎(こうしゃ)に、放課(ほうか)()()らせるチャイムが()(ひび)く。

 女子高生(じょしこうせい)愛佳(あいか)は、ホームルームが()わるなりバッグを()にし、そそくさと教室(きょうしつ)(あと)にした。(なが)黒髪(くろかみ)をなびかせながら、(はや)(ある)きで廊下(ろうか)()けていく愛佳(あいか)。すると、ブレザーの制服姿(せいふくすがた)女子(じょし)生徒(せいと)二人(ふたり)が、嬉々(きき)(こえ)をかけてきた。

「あ、愛佳(あいか)! この(あと)一緒(いっしょ)手芸店(しゅげいてん)いかない?」

「ごめんね。今日(きょう)(はや)(かえ)らないといけないの」

今週末(こんしゅうまつ)のイベントの準備(じゅんび)はもうできたの~?」

「うん。ばっちりだから(たの)しみにしてて!」

 愛佳(あいか)はすれ(ちが)いざまに()(かえ)りながら()()り、友人(ゆうじん)二人(ふたり)笑顔(えがお)(かえ)すものの、(あし)()めずに帰路(きろ)についた。



 ビルトインガレージの一軒家(いっけんや)愛佳(あいか)(いえ)だ。愛佳(あいか)(かぎ)()けて(なか)(はい)る。当然(とうぜん)(なか)には(だれ)もいない。(ちち)(はは)共働(ともばたら)きで(かえ)りは(おそ)く、中学生(ちゅうがくせい)(おとうと)もまだ部活動(ぶかつどう)(ちゅう)時間(じかん)だった。愛佳(あいか)小走(こばし)りで階段(かいだん)()がると、自室(じしつ)(とびら)()けた。

 八(じょう)(ほど)洋室(ようしつ)愛佳(あいか)部屋(へや)は――(いろ)とりどりの(ふく)(かざ)られていていっぱいだった。メイド(ふく)、ロリィタ(ふく)、パンク(けい)、パーティドレス、|セーラー(ふく)、アイドル衣装(いしょう)(ほか)にも色々(いろいろ)(ふく)がラックに整理(せいり)されてかけられている。学習(がくしゅう)(づくえ)にはミシンや裁縫(さいほう)道具(どうぐ)()かれていた。部屋(へや)中央(ちゅうおう)、トルソーに()せているアニメヒロインの衣装(いしょう)一式(いっしき)は、今週末(こんしゅうまつ)友人(ゆうじん)二人(ふたり)参加(さんか)するコスプレイベント(よう)衣装(いしょう)だ。

 愛佳(あいか)はそれらを(なが)めながら、満面(まんめん)()みを()かべていた。

「さ~て。今夜(こんや)はどんな衣装(いしょう)にしようかしら」

 制服(せいふく)のブレザーを()ぎ、愛佳(あいか)は『ひとりファッションショー』を開催(かいさい)する。愛佳(あいか)はうきうきと(ふく)()にとっては、着替(きが)え、(かがみ)(うつ)った自身(じしん)全身(ぜんしん)確認(かくにん)する。身長(しんちょう)160㎝ほどで、(あたま)(ちい)さく()(あし)(なが)愛佳(あいか)。さらには見事(みごと)なくびれを(えが)抜群(ばつぐん)のプロポーションゆえに、どんな(ふく)でもきれいに()える。

(あお)もいいな~。いや、黄色(きいろ)もいいかも……」

 しかし本人(ほんにん)にはしっくり()ないのか、とっかえひっかえに(ふく)()()してはコーデを(ため)す。なかなか()まらないが、愛佳(あいか)終始(しゅうし)ルンルンと鼻歌(はなうた)(うた)っていた。

「――うん。やっぱり、(あか)一番(いちばん)ね」

 ようやく今夜(こんや)の一(ちゃく)()まると、()がつけば()(しず)みかけていた。メイク(ばこ)用意(ようい)しながら、愛佳(あいか)はふと(まど)(そと)へと視線(しせん)()ける。

今夜(こんや)も、(たの)しいパーティになりそうね」

 夕日(ゆうひ)()まった(あか)(そら)(なが)めながら、愛佳(あいか)はうっとりと微笑(ほほえ)んだ。



 (まち)(はず)れの(はい)工場(こうじょう)(よる)(おとず)れる。

 街中(まちじゅう)がネオンを(とも)活気(かっき)づいていくのとは反対(はんたい)に、ひと()()閑散(かんさん)とした(はい)工場(こうじょう)一帯(いったい)。その一角(いっかく)では、(くろ)づくめの(おとこ)たちがうろついていた。建物(たてもの)(そと)では、数人(すうにん)(おとこ)たちが分散(ぶんさん)して四方八方(しほうはっぽう)見張(みは)っている。よからぬ(こと)をしているのは明白(めいはく)だった。

 その(なか)見張(みは)りの(おとこ)一人(ひとり)(なに)かを()つけた。



 ――夜闇(よやみ)(なか)から、ひとつ、人影(ひとかげ)()かんで()る。

 (おんな)か? いや、まだ(わか)少女(しょうじょ)だ。



 ()()なチャイナドレス姿(すがた)の、(くろ)(なが)つや(かみ)少女(しょうじょ)

 はだけた胸元(むなもと)に、(ふか)いスリットの(こし)(かた)背中(せなか)――

 そこかしこから(のぞ)かせる、むちむちの(しろ)(はだ)

 ほとんど丸出(まるだ)乳房(ちぶさ)には、(ふか)谷間(たにま)がくっきりと。 

 (くろ)いニーハイ(あみ)タイツに()()るふともも。

 目元(めもと)は、ピンクのアイシャドウが()(なが)まつ()

 ()()なルージュには、てらてらと(かがや)くグロス。

 (あし)()くのは、(かかと)(ほそ)(とが)った(あか)いピンヒール。



 夜闇(よやみ)(なか)から、美少女(びしょうじょ)(ある)いて()る。

 片手(かたて)(こし)()てて、(こし)をくねらせ、豊満(ほうまん)乳房(ちぶさ)をぷりぷりと()らしながら、コツコツと足音(あしおと)反響(はんきょう)させて(ちか)づいて()る。

 (おとこ)(おも)わず見入(みい)っていたが、見張(みは)りの任務(にんむ)(おも)()し、少女(しょうじょ)()()まるように警告(けいこく)した。

「あら? 今夜(こんや)、ここでパーティがあると()いたのだけど」

 (はい)工場(こうじょう)(いま)(おこな)われているのは、麻薬(まやく)取引(とりひき)のみだ。手短(てみじか)()える算段(さんだん)だというのに、(おんな)なんて()ぶわけがない。

 しかし――かなりの上玉(じょうだま)少女(しょうじょ)だ。

 幼顔(おさながお)ながら、むちむちと肉付(にくづ)いた女体(にょたい)(あか)いチャイナドレスのスリットから(のぞ)(しろ)いふともも。これを()(まえ)にして()()さないのは(じつ)()しい。見張(みは)りは(ほか)にもいるのだから、一人(ひとり)くらい()けても問題(もんだい)ないだろう。

 (おとこ)はニヤニヤと(わら)いながら、少女(しょうじょ)に『(たの)しいこと』をしようと(さそ)った。

 すると少女(しょうじょ)もまんざらでもない様子(ようす)微笑(ほほえ)みを(かえ)した。

「うふふ、奇遇(きぐう)ね。わたしも今夜(こんや)は『(たの)しいこと』がしたい気分(きぶん)なの」

 猫撫(ねこな)(ごえ)少女(しょうじょ)、その(ちい)さな(かた)丸出(まるだ)しの白肌(しろはだ)へと(おとこ)()()ばしたその(とき)――



 ――少女(しょうじょ)(くろ)(ひとみ)が、()()(ひか)り、変貌(へんぼう)する。



 (つぎ)瞬間(しゅんかん)少女(しょうじょ)(おとこ)手首(てくび)をつかみ、ひねり()げた。その細腕(ほそうで)からは(しん)じられない(ちから)だ。悲鳴(ひめい)()げる(おとこ)をよそに、(すず)しい(かお)少女(しょうじょ)

「どう? (たの)しい?」

 (おとこ)悲鳴(ひめい)絶叫(ぜっきょう)()わる(なか)、ついに――(ほね)()れた。

 入口(いりぐち)(さわ)ぎを()きつけ、(おとこ)仲間(なかま)たちが(あつ)まって()る。(ほか)箇所(かしょ)見張(みは)りや建物(たてもの)(ない)(もの)()けつけた。そして――あらぬ方向(ほうこう)(うで)()がった仲間(なかま)姿(すがた)()()たりにする。(うで)()さえたまま地面(じめん)にうずくまる仲間(なかま)、その()(まえ)では、()()なチャイナドレス姿(すがた)美少女(びしょうじょ)笑顔(えがお)見下(みお)ろしていた。

 少女(しょうじょ)を、13(にん)(おとこ)たちが包囲(ほうい)した。



「さあ、パーティの(はじ)まりよ」



 少女(しょうじょ)ひとりと、(おとこ)たち13(にん)との戦闘(せんとう)(はじ)まった。

 優勢(ゆうせい)()ったのは――(あか)チャイナドレスの少女(しょうじょ)だった。

 《(さい)(こつ)のハイキック乱舞(らんぶ)》。次々(つぎつぎ)(おそ)いかかってくる(おとこ)たちを、少女(しょうじょ)(みずか)らの(あし)()(まわ)して――強烈(きょうれつ)()りで、(ほね)()る。()()さえようと()ばした(うで)防御(ぼうぎょ)しようと(かた)めた(うで)、ガラ()きになった(どう)のあばら、そのことごとくを、()()なハイヒールが(ほね)ごと粉砕(ふんさい)する。チャイナドレスの(ふか)いスリットから()びる、むちむちの白肌(しろはだ)(あし)変幻(へんげん)自在(じざい)だ。ぷりぷりと()れるふとももの贅肉(ぜいにく)からは(かんが)えられない、とんでもない怪力(かいりき)()()ばし、次々(つぎつぎ)(おとこ)たちの(ほね)()っていく。

 しかし、少女(しょうじょ)はたったひとりである。(おとこ)たちは人海(じんかい)戦術(せんじゅつ)強引(ごういん)少女(しょうじょ)()()せた。結果(けっか)何人(なんにん)もの(うで)やあばらの(ほね)犠牲(ぎせい)にしながらも、(おとこ)たちはなんとか少女(しょうじょ)攻勢(こうせい)阻止(そし)成功(せいこう)する。

 ――大男(おおおとこ)が、少女(しょうじょ)背後(はいご)から()さえ()んだのだ。

 身長(しんちょう)2m(ちか)大男(おおおとこ)巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)の160㎝ほどの女体(にょたい)(うで)(なか)()めつける。(もと)総合(そうごう)格闘技(かくとうぎ)選手(せんしゅ)()()げに、さすがの少女(しょうじょ)(うご)きが()まった。(あた)りに()(たお)された(おとこ)たちは、()れた(うで)脇腹(わきばら)(かか)えながらも、なんとか()()がり安堵(あんど)する。



 ――少女(しょうじょ)は、不敵(ふてき)微笑(ほほえ)んでいた。



 (つぎ)瞬間(しゅんかん)少女(しょうじょ)身体(からだ)(まわ)りに――(あか)いオーラが顕現(けんげん)した。『魔法(まほう)』である。これまでも使(つか)っていた身体(しんたい)強化(きょうか)魔法(まほう)が、一層(いっそう)強化(きょうか)されたのだ。

 少女(しょうじょ)大男(おおおとこ)拘束(こうそく)を、いとも簡単(かんたん)()()ばした。衝撃(しょうげき)(うし)ろに()()大男(おおおとこ)間髪(かんぱつ)()れずに少女(しょうじょ)身体(からだ)反転(はんてん)して接近(せっきん)し、(おとこ)上体(じょうたい)()きついた。そして今度(こんど)は、少女(しょうじょ)細腕(ほそうで)が、(おとこ)両腕(りょううで)(うえ)から上体(じょうたい)(かか)()む。

残念(ざんねん)だったわね。それじゃ、(つぎ)(わたし)(ばん)よ」

 少女(しょうじょ)は、にんまりと(わら)い――両腕(りょううで)()め、(おとこ)身体(からだ)()()げた。

「えいっ❤」

 少女(しょうじょ)のかわいらしい()(ごえ)とともに、(おとこ)絶叫(ぜっきょう)(はい)工場(こうじょう)(ひび)(わた)る。

「まだまだいくわよ~」

 (おとこ)巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)(かか)()げられ、(ちゅう)()く。

「えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤」

 その細腕(ほそうで)で、()(つづ)けに(おとこ)身体(からだ)()めつける。

 次第(しだい)(おとこ)悲鳴(ひめい)(なか)に、(ほね)()れる(おと)()ざり(はじ)めた。

 (おとこ)巨体(きょたい)が、少女(しょうじょ)(うで)(なか)()(つぶ)されていく。

 吐血(とけつ)し、(あし)をばたつかせ、(あば)(くる)(おとこ)……。

 少女(しょうじょ)周囲(しゅうい)()けて、これ()よがしに()(はな)つ。

(たす)けなくていいの? ほらほら、いつでもかかっていらっしゃい」

 その光景(こうけい)は、まさに地獄(じごく)だった。

 満身(まんしん)創痍(そうい)(おとこ)たち。(うで)()られ、あばらを()られ、血反吐(ちへど)()きながら(つく)()した絶好(ぜっこう)機会(きかい)。そうまでして少女(しょうじょ)()()さえたというのに、少女(しょうじょ)(ちから)のすべてを()しているわけではなかったのだ。2mの巨体(きょたい)軽々(かるがる)()()げ、(うで)(なか)()(つぶ)少女(しょうじょ)圧倒的(あっとうてき)(ちから)人間(にんげん)(かな)存在(そんざい)ではない。(おとこ)たちは(すで)に、戦意(せんい)喪失(そうしつ)していた――……。

()ないのね。いいわよ。そのまま(ゆび)をくわえて()てなさい」

 (おとこ)たちは、(なに)もできなかった。

「えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤ えいっ❤」

 攻撃(こうげき)することも、()げることも、()()らすこともできなかった。ただ、()ていることしかできなかった。血反吐(ちへど)()き、悲鳴(ひめい)(あえ)ぎ、(けっ)して()につかない(あし)をばたつかせ、そしてだんだんと(うご)かなくなっていく大男(おおおとこ)(さま)を、ただ()ていることしかできなかった。

「あれれ? もう()んじゃったの? ()()(ちが)って繊細(せんさい)なのね」

 大男(おおおとこ)は、少女(しょうじょ)(うで)()()められて、死亡(しぼう)した。()れたあばら(ぼね)内臓(ないぞう)()(やぶ)り、絶命(ぜつめい)したのだ。

 (おとこ)亡骸(なきがら)(ほう)()てる少女(しょうじょ)()しつけられていた少女(しょうじょ)乳房(ちぶさ)解放(かいほう)され、(あか)いチャイナドレスの(なか)から、ぷりんと()()る。(ほお)()びた(かえ)()(した)(しろ)(はだ)火照(ほて)っていた。そして、(なが)黒髪(くろかみ)をゆらりと()(はら)い――

 ()()(ひとみ)ふたつが、(のこ)りの(おとこ)たちをギラギラととらえる。



「うふふ。(つぎ)はだぁれ?」



 (よる)(はい)工場(こうじょう)に、鮮血(せんけつ)(はな)()(みだ)れる。

 《斬首(ざんしゅ)(まわ)()り》。我先(われさき)にと()(まど)(おとこ)たちの(くび)が、次々(つぎつぎ)()()ばされていく。十分(じゅうぶん)魔力(まりょく)(たか)まった少女(しょうじょ)(まわ)()りは、(ほね)(くだ)くどころではなく、()千切(ちぎ)るほどまでに威力(いりょく)()していた。

 蜘蛛(くも)()()らすように、()()せて()()りに()げる(おとこ)たち。しかし、魔法(まほう)強化(きょうか)した少女(しょうじょ)(あし)は、脱兎(だっと)一匹(いっぴき)すらも()がさない。必死(ひっし)()げる(おとこ)()(またた)()()いついては――

「つかまえたっ❤」

 ――(おとこ)前髪(まえがみ)を、(わし)づかみにする。

 (つづ)けて(つか)まえたまま、(おとこ)顔面(がんめん)目掛(めが)けて、何度(なんど)(ひざ)()りを(たた)()む。

「ほら、ほら、ほら、ほらっ」

 たちまち(おとこ)(はな)(つぶ)れ、(かお)()()()()まり、やがて(うご)かなくなる。そうなったら、少女(しょうじょ)はもう興味(きょうみ)(しめ)さない。(うご)かなくなったそれを建物(たてもの)入口前(いりぐちまえ)へと(ほう)()て、少女(しょうじょ)はまた(あたら)しい『おもちゃ』をつかまえにいく。とっかえひっかえに(あたら)しい(おとこ)(つか)まえては、前髪(まえがみ)(わし)づかみにし、顔面(がんめん)(ひざ)()りを(たた)()む。また一人(ひとり)、また一人(ひとり)――……。(はい)工場(こうじょう)入口前(いりぐちまえ)には、(うご)かなくなった(おとこ)たちが(やま)のように()()がっていった。

 それでも、(おとこ)たちは(あきら)めない。すぐそこで仲間(なかま)(かお)(ひざ)()りを()()少女(しょうじょ)(もと)へと、()いつくばってでも()かっていく。何度(なんど)血反吐(ちへど)()きながらも、なんとか接近(せっきん)し、(あか)いピンヒールの(うえ)足首(あしくび)へと()()ばす。しかし、その()少女(しょうじょ)をつかむことはなかった。

 ――ピンヒールの(かかと)に、()串刺(くしざ)しにされたからだ。

「なかなか根性(こんじょう)があるのね。見直(みなお)したわ」

 ()(こう)貫通(かんつう)したピンヒール。激痛(げきつう)()(なか)少女(しょうじょ)()言葉(ことば)頭上(ずじょう)から()こえてくる。満身(まんしん)創痍(そうい)身体(からだ)(くい)()たれ、いよいよ(おとこ)(うご)けなくなってしまった。

 (あと)はもう、されるがままである。

 少女(しょうじょ)はピンヒールで(おとこ)()(つらぬ)いたまま、もう片方(かたほう)(あし)後方(こうほう)()()げた。そして――

「そーれっ」

 ――サッカーボールキック。

 (おとこ)は、(くび)だけとなって(ちゅう)()った。

 それからも、()(あめ)()まなかった。一体(いったい)、また一体(いったい)と、(はい)工場(こうじょう)入口前(いりぐちまえ)死体(したい)()()がっていく。()がつけば死体(したい)(かず)は、12に(たっ)していた。



「あとは、あなただけね」



 最後(さいご)一人(ひとり)となった(おとこ)には、もはや思考(しこう)()かった。(おとこ)()てるすべてを()(しぼ)って、少女(しょうじょ)へと突撃(とつげき)した。

 少女(しょうじょ)は、にんまりと微笑(ほほえ)む。両腕(りょううで)(ひろ)げて(おとこ)(むか)えると、(たが)いに()(にぎ)って()()姿勢(しせい)になった。

 ――力比(ちからくら)べだ。

「ほらほら、あなたが最後(さいご)なんだから、もっとがんばって❤」

 少女(しょうじょ)はあからさまに手加減(てかげん)していた。なのに(おとこ)()されてしまう。全身全霊(ぜんしんぜんれい)()てるすべてを少女(しょうじょ)にぶつけているというのに、(した)(した)へと()()せられていく。あっという()(おとこ)()(たお)され、少女(しょうじょ)馬乗(うまの)りにされてしまった。

「まだ()わりじゃないでしょ? ほらほら、がんばって❤」 

 《馬乗(うまの)りめった(なぐ)り》。少女(しょうじょ)左右(さゆう)(こぶし)が、(おとこ)顔面(がんめん)破壊(はかい)する。(ほそ)(うで)から()()される、手加減(てかげん)された強烈(きょうれつ)(こぶし)(みぎ)(ひだり)(みぎ)(ひだり)(こぶし)()()ろされる(たび)に――

 ――ぷりぷりと、乳房(ちぶさ)があばれ(まわ)る。

「ほら❤ ほら❤ ほら❤ ほら❤」

 (あか)いチャイナドレスの胸元(むなもと)からこぼれ()た、ふたつの乳房(ちぶさ)。それが(こぶし)(かえ)()()()(なか)で、()ねて、(はず)み、(あそ)(まわ)る。これ()よがしに。嘲笑(あざわら)うかのように。()(まえ)、こんなに(ちか)くでおどっているのに、(おとこ)には()()せない。もう、もう――……。ぷりぷりとおどり(つづ)ける乳房(ちぶさ)(まえ)に、(おとこ)意識(いしき)(うす)れていった。

「もう()わりなの? つまらないわね」

 少女(しょうじょ)(おとこ)(くび)(わし)づかみにし、(おとこ)身体(からだ)片手(かたて)(ほん)()()げる。馬乗(うまの)りの体勢(たいせい)から、股下(またした)から(おとこ)身体(からだ)()()くようにして()()がり、(おとこ)(くび)をつかんだまま頭上(ずじょう)へと(かか)げた。(おとこ)身体(からだ)(ちゅう)()く。どれだけ(あし)をばたつかせても、(なん)にも()たらない。

「やっぱりこの程度(ていど)なのね。もういいわよ」

 少女(しょうじょ)片手(かたて)(おとこ)(くび)をつかみ()げながら、もう片方(かたほう)()(みずか)らの(むね)にそえた。()()なマニキュアがつや(ひか)(つめ)、しなやか五(ほん)(ゆび)を、ピンと一直線(いっちょくせん)にそろえて(かた)める。そして、まるで(ゆみ)をつがえ(かま)えるかのように、貫手(ぬきて)を、()()(つめ)(さき)(おとこ)左胸(ひだりむね)へと()けて――

「さようなら」

 13()()の、()(はな)()かせた。



 少女(しょうじょ)ひとりと、(おとこ)13(にん)との戦闘(せんとう)決着(けっちゃく)した。

 ()()なチャイナドレス姿(すがた)の、()みどろの悪夢(あくむ)――

 13(にん)(おとこ)たちは、少女(しょうじょ)人外(じんがい)暴力(ぼうりょく)(まえ)に、全滅(ぜんめつ)した。



 13(にん)死体(したい)頂上(ちょうじょう)に、(あか)少女(しょうじょ)はひとり、(こし)をかける。

 ニーハイ(あみ)タイツの(あし)()み、今夜(こんや)、この()(ころ)した(おとこ)たちを(しり)(した)()いて、少女(しょうじょ)はひとり、ふけっている。

 ――(あか)一色(いっしょく)世界(せかい)没頭(ぼっとう)する。

 少女(しょうじょ)(みずか)(つく)()げた、()みどろの(あか)世界(せかい)(おとこ)たちがやり()りしていた(しろ)(こな)には見向(みむ)きもしない。(あか)いチャイナドレスに、(あか)いピンヒール。黒髪(くろかみ)白肌(しろはだ)も、(いま)(かえ)()()まっている。そして、少女(しょうじょ)(ほお)はますます紅潮(こうちょう)し、呼吸(こきゅう)(いろ)づいていく。()(こころ)も、(あか)一色(いっしょく)に。死屍(しし)累々(るいるい)(なか)少女(しょうじょ)は、(あか)(ひた)り、()()れ、(あじ)わい、()()す。

 死体(したい)(やま)頂上(ちょうじょう)(こし)をかけた、(あか)少女(しょうじょ)

 少女(しょうじょ)はいつまでも、(あか)(ひた)り、(とろ)けていた。



 夕焼(ゆうや)けの校舎(こうしゃ)に、放課(ほうか)()()らせるチャイムが()(ひび)く。

「ごめんね。今日(きょう)(はや)(かえ)らないといけないの」

 女子高生(じょしこうせい)愛佳(あいか)は、今日(きょう)友人(ゆうじん)二人(ふたり)(さそ)いを(ことわ)り、一直線(いっちょくせん)帰宅(きたく)する。一緒(いっしょ)にコスプレイベントに参加(さんか)する(なか)ではあるが、これだけは(ゆず)れない。



 ――あの快感(かいかん)を、(わす)れられない。



 (よる)摩天楼(まてんろう)を、()()満月(まんげつ)()らす。

 (なら)()高層(こうそう)ビルの根本(ねもと)では、道路(どうろ)渋滞(じゅうたい)警察(けいさつ)車両(しゃりょう)のけたたましいサイレンがそこかしこから()り、(よる)都会(とかい)反響(はんきょう)している。そびえるビル(ぐん)(なか)でも(もっと)(たか)いものの頂上(ちょうじょう)に――少女(しょうじょ)姿(すがた)があった。

 ()()なチャイナドレス姿(すがた)少女(しょうじょ)が、すらりと()ち、(さわ)がしい都会(とかい)見下(みお)ろしている。



「うふふ。今夜(こんや)(たの)しいパーティになりそうね」



 ビルからビルへと跳躍(ちょうやく)していく少女(しょうじょ)

 ()()赤色灯(せきしょくとう)乱反射(らんはんしゃ)する都会(とかい)

 少女(しょうじょ)今夜(こんや)も、(あか)()まる――。



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