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「あたし」

チェックメイトだとしても

作者: XI

*****


 エマさんは年下。六人目のバディ。初めての女性。新たな理想の権化、アバター。エマさんとはすぐに寝た。そのうち少しイジってやっただけで両脚が自然と開くようになり、人一倍気前良くよがった。


 あたしはエマさんが気に入って、いろいろと話した。エマさんはそのたびこくこくとうなずいた。「あたしは、一人目のバディからいろいろ教わったんだ。飲む打つ買うってところかな?」と教えてあげた。


飛鳥(あすか)さんは、その男性と……?」 

「いい質問。寝なかった。誰よりも女好きだったのに、彼、それだけは、あたしに教えようとはしなかったから」

「どうしてなのでしょうか」

「彼の墓石に訊いてみるといいかもしれない。ただ一つ、言えることはある」

「それは?」

「死ぬのが自分の仕事。そんなふうに思っているところがあったんだ」



*****


 銃規制がかたちを成してから、えらく時間が経過した。銃火器はレアさを極め、だからそれらを使った犯罪も珍しくなった。火薬の匂いを漂わせるのは一部の公務員だけになった。


 かと言って、性善説を信じていいほど世の中は甘く穏やかではないし、どうしたって「悪者」はいる、現れる。その「悪者」――「異形」はあたしの半身を削いでくれた。誰よりも大切だった双子の妹を……。以来、戦っている。戦い続けている。自らの誇りを天秤にかけて。


 かつての相棒、二人目の相棒を思い出す。思い出さない日なんてない。真田君、真田君? じつはねあたし、妹のことを忘れるわけにはいかないいっぽうで、あんたのことを愛していたんだ。あんたが「女房になってくれ」って言うんだったら、あたしは剣呑でアンタッチャブルな立場を放棄して、家庭に入るつもりだった。だったらそうだよ真田君、きみはどうしてあたしにそう言ってくれなかったのかな。はなはだ疑問だよ。あたしが失ったモノは、なにを顧みようがどうしたって大きすぎる。いまのあたしは喪失感のカタマリだ。


 あたしの人生はとっくに行き止まりで、神さまからチェックメイトを宣言されているのかもしれない。でも抗おうとするのは、あたしにだって意地があるからだ。「異形」を殲滅することはできないだろう。けれど身体が朽ち果てるまで戦ってやる。


 まずはエマさんを守ってあげないと――と考えていた矢先に、彼女は死んでしまった。またもや現れた「異形」――巨大カワウソにガブガブされて。


 人生は儚い。

 あたしの愛したニンゲンは片っ端から死んでいく。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「チェックメイト」をこんな風に使ってくるとは! ↑すみません、最近ラジオ大賞の作品読み過ぎて、お題のワードに過剰に反応するようになってしまいました。 冒頭の「六人目のバディ」に衝撃でした…
[良い点] 妹と6人のバディを亡くしてきたのか……。 それでもきっと、7人目のバディを愛す! それが彼らを愛したあたしの生き方よ!
[良い点] うう、エマさん……(つД`) 短いのに濃厚なドラマが詰め込まれていて、さすがX Iさまです! 素敵なお話をありがとうございました((* ´ ` )* . .))”
2022/12/08 05:07 退会済み
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