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アメノヒ

作者: 高天原

おばあちゃんはいつものように、

窓際のあばあちゃんの椅子に座っていました。

おばあちゃんの椅子はもう何年も使い古されていて、

少し動くとガタガタと揺れてしまい、

壊れてしまうのではないかと、

座っている方が疲れてしまい、

僕はおばあちゃんの椅子には座らないようにしている。

それでもおばあちゃんが座ると、

ガタガタと揺れることなくじっとしている。

手編みの座布団の上に座りひざ掛けを掛け、

ストーブの脇でいつも笑っているように眠っている。

おばあちゃんの椅子は、

天気のいい日には太陽にあたるように、

寒い日にはストーブが近くになるように。

おばあちゃんの椅子を中心に何年も季節が繰り返されていました。

ある日冬も間近の寒い日のこと、

どんよりとした暗い雲が空一面に広がって、

もう昼なのに朝日が昇る前のような、

夕日が沈んだ後のような、

暗く静かな日。

音を立てないよう気を使っているように、

ストーブのやかんが静かに湯気を立ち昇らせている静寂の時間。

おばあちゃんの近くで眠っていた僕はふと目が覚めた。

僕の背中にはおばあちゃんのひざ掛けが掛けられていた。

おばあちゃんの方を見ると、

窓越しに空を眺めていた。

いつもは笑っているおばあちゃんが、

その時は涙を流していました。

いけないものを見てしまったと思い、

すぐに寝たふりをしたけど、

目を閉じながら、

どこか痛いのかな?

なにか悲しい事があったのかな?

とどうしても気になってしまい、

おばあちゃんのひざ掛けを持って、

おばあちゃんに聞いてみた。

するとおばあちゃんはすぐにいつもの笑顔で、

僕を膝の上に抱きかかえお話を始めた。

それは神様のいる天国という所の話だった。

この暗く重たい雲の上に、

神様のいる天国があって、

一面真っ白な雲の絨毯があり、

空は遮るもののないどこまでも広い青空が広がっている。

お腹が空いたら雲をちぎって食べると、

綿あめのように甘くておいし。

そして毎日が暑くもなく寒くもない。

夜には星空が広がり、

月や星がすぐそこにあるという。

そこでは神様がみんなを集めて仲良く遊んでいる。

嫌いな人は誰もいない、

神様の前ではみんな好きになってしまうというのだ。

一日中歌を唄い。

どこまでも追いかけっこして、

雲の中を泳ぐこともできるという。

そこにおばあちゃんは行ってきたというのだ。

とても楽しく幸せな時間だったと、

遠くを眺めるように話してくれた。

でも僕はおばあちゃんの膝の上がとても暖かく、

とても気持ちよくて、

最後まで話を聞く事が出来なかった。

いつしか曇り空は雨を降らせ始めた。

僕は雨の音で起こされると、

いつの間にか眠っていたことに気付いた。

顔を上げるといつものように笑っているように寝ている、

おばあちゃんの顔があった。

僕が起きたことに気付いたおばあちゃんは、

優しく抱きかかえると、

膝の上から降ろしてくれた。

僕はおばあちゃんが天国に行ってしまうのではないかと、

急に不安になってしまった。

おばあちゃんは天国に行くより幸せな事があるので、

今はまだ僕と一緒にいてくれると言った。

僕にはそれが何かわからなかったけど、

一緒にいてくれるなら何でもよかったので、

また膝に抱き着いた。

またおばあちゃんは笑って頭をなでてくれた。

外は冷たい雨が強さを増して、

窓を叩きつけていたけど、

とても暖かい静かな日だった。

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