淡いXmas Day
「凶-路地裏からの物語-」のクリスマス特別短編を書いてみました!
(と言っても、本編でも登場する人物はヒロインだけなんですけどねw)
一部本編に出てない設定が出てますがそこはご愛嬌という事でお願いします。
それでは、どうぞ!
突然だが僕は冬が大ッ嫌いだ。寒いのが苦手と言うのもあるのだが、一番の理由はそうじゃない。
寒いからと言ってリア共が体を寄せ合ったり抱きついたりする事が他の季節と比べて多いからである。それを見てると何だか無性にムカムカする。『リア充爆発しろ』とはまさにこの事を言うのだろう。
しかも、今日はクリスマス。今日明日と共に余計にリア充共がイチャイチャし合う日では無いか。物凄く憂鬱になってしまう。
(リア充4ねリア充4ねリア充4ねリア充4ねリア充4ねリア充4ね)
と心の中で呪いの言葉の様に何度も何度も繰り返してリア充共に悪態をついた。しかしそれで何かが変わるわけではない。
僕 神木尚哉は今住んでいるアパートにある僕の部屋のベッドに寝転んで大きな溜息を吐いた。
「何でリア充はスキンシップが好きなんだろ‥」
と無気力に自問した。僕にはもちろん彼女だって出来た事が無いし、キスももちろんした事は無い。典型的なカノジョいない歴=年齢だ。そして童帝である。
中学2年14歳。俗にいう中二病真っ盛りな時期である。まぁ、流石に『封印されしこの右腕よ……』とか『右目の邪眼が……』とか露骨な中二病表現はしないが、友達に引かれるレベルは何回か言ってしまっている。
その後も悶々とリア充への悪態をついていると‥、何やらキッチンの方からとても良い匂いがしてきた。この匂いは粗挽きソーセージだろうか?僕の大好物だ。ソーセージはやっぱり粗挽きに限る!
パチパチと、ソーセージの皮が弾ける音がする。その音を聞いただけで僕はご飯3杯を平らげられそうだ。
そうすると、キッチンの方から
「なーちゃん〜〜?朝ご飯出来たよ〜!一緒に食べよ〜」
とまるで歌姫の様な声の持ち主が僕を呼んだ。
「へーい。今行く」
と一言返事をして僕はダイニングへと向かった。
ダイニングへと向かうと……、そこには絶世の美女がキッチンで料理していた。何を言ってるのかよく分からんかもしれないが僕の語彙力だとこれが限界だ。
深海の様な青い髪を腰まで伸ばし、目は金鉱石からそのまま削り出して来たような眩しさの金色。どれもこれもここ日本では異様な姿だが、極めつけは着ている服だ。
純白のフリルが付いたエプロンドレスの下に黒いワンピースを着ている。脚には純白のニーソックス、そして手首にはこれまた純白のロンググローブを嵌めている。いわゆるメイド服と言うのだろう。
そして、思春期真っ盛りの男子にとって一番目に悪いモノがある。その大きな胸だ…。
たぶんEカップはあるであろうその胸が、エプロンドレスから惜しみなく主張されている。こんな思春期真っ盛りの男子にとってはまさに天国とも言えるだろう。だが、僕にとっては目のやり場に困るためあまり主張し過ぎないでほしいとは思っている。
この美人は俺のねぇちゃん。といっても本当のねぇちゃんじゃ無い。約2年前のちょうど高校生になる時に初めて出会った人である。何やら父さんの知り合いらしく僕の赤子の頃の事も知っていたらしい。両親によると高校生でアパート生活をするのは心配だが、親はアパートに気軽に行けない為代わりにこのねぇちゃんと一緒に住ませることにしたらしい。外見からもそうだが外人らしく名前はたしかセドナと行った筈だ‥。いつもねぇちゃんねぇちゃんと呼んでるためつい忘れそうになる。ちなみに、何で本当のねぇちゃんでも無い人をねぇちゃんと呼んでるかというと、セドナ自身が「私の事はおねぇちゃんって呼んでね!」と言ったからだ。理由は単純に「親しみを持ってほしいから」らしい。まぁ一年前はほぼ赤の他人状態だったため、そこから暮らすことに当たってちぐはぐな関係にはなってほしくないからだろうと個人的には思っている。
「あ~、おはよー!」
と、僕に気づいた途端にっこりとあいさつしてくれた。
「あ、あぁ。おはよう」
と僕も挨拶したのだが、何故だかどうしてもぶっきらぼうな挨拶になってしまう。それに何だか胸がバクバクする。
「今日はクリスマスだね!今日の晩御飯はおねぇちゃん奮発して何か作っちゃうよ〜」」
ねえちゃんの料理はいつも美味しいのだが、特別な日は特にだ。
「ねえちゃんのスペシャルメニューなんて久し振りだなぁ!僕、とっても楽しみだよ〜!」
「えへへ、そこまで言われると余計に頑張っちゃうよ〜!」
と張り切って言ってくれた。楽しみだ。
「ところで、今日の朝飯は何かな?」
「今日はね、なーちゃんが大好きな粗挽きソーセージと、レタスとトマトと、後はコーンスープだよ!いつもより腕によりをかけて作ったから美味しく食べてくれると嬉しいな」
どれもこれも僕が好きなメニューばっかりだ。
「ソーセージがあるのは嬉しいな。早速食べるね、ねぇちゃん!」
と言い、ダイニングテーブルの席に座る。席の並びはねぇちゃんがキッチン方面で、僕がその逆。つまり向かい合わせとなっている。
「「いただきます!!」」
そうして、僕はねえちゃんが作ってくれた粗挽きソーセージを頬張った。
「旨い!」
とつい声を出して言うくらいねえちゃんのは旨い。ソーセージ自体は別にどこにでもある普通のソーセージなのだが、ねえちゃんの味付けがひと味違うからだろう。ちょうど良い塩加減でしつこすぎず淡白過ぎず、油も胃が一切もたれないが、味気無くも無い。そんな究極の丁度良いが揃っていて旨い。
次はスープだ。とうもろこしの旨味がこれでもかと封じ込められた濃厚なスープで、どんどんスプーンが進んで行ってしまう。
「そんなにガツガツ食べて、喉に詰まらせないようにしてね」
あまりにも僕が一心不乱に朝飯を食べていくので、思わずねぇちゃんが心配してくれた。こういうちょっとした気遣いもねぇちゃんが得意とするところだ。
「ふぅ……、ごちそうさま。今日もねぇちゃんの料理、美味しかったよ」
と、僕はガツガツ食べて少し膨らんだ腹をポンポンと叩いた。その後ねぇちゃんも食べ終わり、2人で協力して片付けをした。
「それで、クリスマスだけどもねぇちゃんはどうするの?」
「私は‥、買い物に行こうかな?クリスマス限定の品とか見てみたいし……。あ、なーちゃんも一緒に行く?この後友だちとかと会いに行かなければだけども‥」
「今日は特に無いよ」
予定が無いのもそうだが、ねぇちゃんと普段出かける機会がほぼ無いので僕は喜んで行くことにした。
「分かったよ!じゃあ、私は着替えてくるから待っててね!」
と、ねぇちゃんはねぇちゃんの部屋に行ってしまった。
普段ねぇちゃんは家の中ではメイド服しか来ていなかったので、違う服となると何だか新鮮な感じがする。
どうこうしてるうちにねぇちゃんの着替えが完了したようだ。
「お待たせ〜!」
と、僕の前にやって来たのだが……
腰まで伸ばした青い髪はそのままにメイド服からシンプルな黄土色のダッフルコートと、薄灰色のショートスカートに、黒くて厚い生地のニーソックス、そして赤いハイヒールを履いている。
そして何故だかわからないが、メイド服の時と同じ純白のロンググローブをはめている。ロンググローブの生地は絹のサテンで、とても防寒性に優れているとは言えない。何か理由でもあるのだろうか‥?
「……綺麗だ‥」
ボソっとだが本音が出てしまった。ねぇちゃんの容姿はお世辞無しで美しい。今まであった女性の中でもぶっちぎりである。これまでもこれからもこのレベルの美貌を持つ女性は会うことはないだろう。
「えっ…………、あ‥ありがとうね‥」
しかし、ボソボソ声が聞こえてしまったのかねぇちゃんは顔を赤くしてうつむいてしまった。綺麗と呼ばれたくらいで顔を赤くするなんて、到底信じられないと感じた。その美貌なら毎日言われるだろう。と
外に出てまず感じるのは他人の目だ。といっても僕に来るものではない。ねぇちゃんだ。
ねぇちゃんの美貌は美しいのは確かなのだが、理由はやっぱり日本人離れした外見だ。青い髪に金色の目、そして大きな胸。
……いや、日本人離れというより もはや外国人離れと言ってもいいくらい異端なその外見は良い意味でも悪い意味でも他人の目線を惹き付ける。
そうとも知らずねぇちゃんは僕に話しかけた
「今日はいい天気だね〜。」
今日の天気は清々しいくらいの快晴。昨日のクリスマス・イブは曇天だったのにえらい違いだ。
「あ、うん。とても綺麗だね」
僕はこの空とねぇちゃんの事。どっちも指して言った。
この青い空とねぇちゃんの青い髪は同化していて、何だか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
身近な事を話しながら数十分。アパートの近くのあるデパートに着いた。そこで新しい服や雑貨等を買う予定らしい。
「ねぇちゃんはどんな服買う?」
「私は‥最近寒くなってきたから今着てるコートより温かいのが欲しいかな〜?なーちゃんはどんなのが欲しい?」
「僕は特に欲しい物がないかな‥?」
と答えたが、ねぇちゃんが
「もう!ただでさえ持ってる服が少ないのに今買わないのは流石にダメだよ。私が冬服一式一緒に選んであげるからね!」
と、僕の味気ない服を見て心配してくれたようだ。そう言われたら、買うしかないと。渋々新しい服を買うことになった。
「こんなの、どうかな?」
と僕に派手な色のTシャツを勧めてきた。
「えぇ……、コレは僕に似合うわけ無いと思うんだけどなぁ‥」
と試着するのを断ろうとしたが
「良いじゃん!1回着てみようよ〜!ほら、サイズもちょうど良いからね!」
と多少無理矢理に勧められたので試着してみることにした。
試着してみたが、確かにサイズはピッタリだ。たった2年しか一緒に過ごしてないのにねぇちゃんのチョイスはやっぱり凄いんだと身を持って感じる。だが‥
「やっぱり僕には似合わないよなぁ……」
今まで地味すぎる服を着ていたせいで余計に似合わなく感じる。今さっき着てたのが黒いジャンパーに使い古したジーンズに黒のシューズという地味を象徴したかのようなファッションだったから尚更だ。
着替え終わったから、一旦外に出てねぇちゃんに見せてみた。
「あ!凄いね!!!なーちゃんに合ってるよ!」
と言われた。僕は(この服着ほんとに似合ってるのかなぁ‥)と思いつつもせっかくねぇちゃんに選んでもらったものだからと思い。素直に買い物カゴに入れた。
「私もそろそろ選ぼうかなぁ‥」
と言い、ねぇちゃんはレディースコーナーへと向かった。
ねぇちゃんが選んだのはカーキー色のコートと、黒色のカーゴパンツを選んでいた。
ねぇちゃん曰く「このコートとズボン何だか厚い生地で暖かそうだね〜!」らしい。そしてそのまま一直線に試着室へと行ってしまった。
僕はねぇちゃんの試着が終わる間、試着室の近くにあるベンチに座り込んだ。
(しっかし、何でねぇちゃんはいつもロンググローブを身に着けてるんだろ‥?)
座り込んでも特にやることも無いのでついつい最近気になっていたことを考えていた。
今の気温は寒いし、ねぇちゃんの外出コーデには到底あってないだろ。とか、あの記事じゃ指先が余計に寒くなりそうだなとか、色々考えていたが、ふと考えているとベンチの近くの床に赤い財布があるのに気づいた。よく見るとそれはねぇちゃんの財布で、僕は慌てて拾い上げてねぇちゃんがいる試着室に駆け込んだ。
「あ‥」
気づいたときには時既に遅し。僕はねぇちゃんの下着姿を見てしまうことになった。
その豊満な胸や尻。それと対照的に引き締まった腹。下着はいわゆるビキニみたいな薄く白いもので仮にもねぇちゃんなのに欲情してしまう。しかも、よく見たら乳輪やそこの中心にある膨らみまで写っている。
「な……なーちゃん!?」
とねぇちゃんは僕が急に入ってきたのを見てびっくりしてしまっていた。それは無理もない。着替えてる途中にいきなり入って来られたら誰だってびっくりする。
「ご‥ごごごごごごごめんねぇちゃん!!!」
と言い残し出ようとしたのだが、ねぇちゃんのそのロンググローブを外した左手を見て一瞬だが凍ってしまった。
ねぇちゃんの左手の人差し指と中指が無いのだ……。まるで何らかの鈍器によって潰されたであろう跡もある。
「ねぇちゃん……、その指は……?」
と呟いてしまった。
呟いたのだが、運悪くねぇちゃんに聞こえてしまったのか。ねぇちゃんは急にその左手を隠し
「…………み……見ちゃ嫌……」
と言い、その左手を隠しながら一歩後ろに下がった。目には涙を浮かべている。
「こ‥こんな姿見たらなーちゃんも幻滅するよね……。こんな醜いおねぇちゃん……嫌だよね……。ごめんね‥ごめんね‥」
と遂にはぽろぽろと涙を流してしまった。よっぽど見られたくない事だったのだろう。そして、何故ねぇちゃんが頑なにロンググローブを付けているのか。その理由がわかった気がした。その手を見られたくなかったのだ。
「ね……、ねぇちゃん……」
僕は次の言葉を考えるよりも先に、無意識にそのねぇちゃんの左手を優しく握りしめて、こう言った
「ねぇちゃん……。左手の指が何で無いのかは僕にはわからないしその理由も聞くつもりも無いよ。だけれども、ねぇちゃんは美しいんだから大丈夫だよ!ねぇちゃん以外にも指がない人なんていっぱいいるんだから!しかも、そんな事位で僕はねぇちゃんを嫌いにならないし、縁を切りたいとは思わない。だって、ねぇちゃんは僕の唯一無二のねぇちゃんなんだから!」
と言った。すると、ねぇちゃんは余計に目に涙を溜めながら
「そんな事言ってくれたの、あの人達以外誰もいなかった‥。気持ち悪い。醜い小娘だなって……。私、こんな醜いのに……、これからもなーちゃんのおねえちゃんで良いのかな?」
と言った。僕は「うん。僕のねぇちゃんはねぇちゃんだけだよ……」と1言と優しく言った。ねぇちゃんは感極まったのか、僕を抱き締めた。そして1言
「優しいね、なーちゃん」
とひっそりと言った。僕はそのままハグされたままだったが、不意に正気に戻り
「と‥とにかくここ出ないと……。ねぇちゃんごめんね!」
と言い試着室から出た。ねぇちゃんのその大きな胸にそのまま包まれてるとねぇちゃんなのに欲情してしまうと思ったからだ。
「いっぱい買っちゃったね〜!」
とねぇちゃんは大きな紙袋2枚を持ちながら嬉しそうに言った。あの後、ねぇちゃんにしっかり謝った。人には見られたく無い事があるからだった。だが、ねぇちゃんは快く許してくれた。しかも
「ありのままの私を見て欲しい」
と良い、これからはロンググローブを家では外すらしい。それを聞いて僕は、ねぇちゃんにとって大切な存在になりたい。と素直に思った。
「ねぇちゃん?そういえばクリスマスケーキ買って無かったような……?」
「あっ‥いっけない!急いで買いに行くね!」
僕は何となく覚えていたが、ねぇちゃんはどうやら服に気を取られ過ぎてクリスマスケーキを買うことを忘れていたようだ。
「……出来ればケーキの箱はなーちゃんが持ってくれると助かるんだけど‥」
とねぇちゃんは申し訳無さそうに僕に頼んだ。ねぇちゃんは紙袋2つ持ってる為、ケーキの箱を持つ余裕が無いのだろう。
「わかった!」
と僕は一言OKサインを出し了承する。
「ありがとうなーちゃん!私、なーちゃんのそういう優しいところ大好きだよ」
と満面の笑顔で僕へと伝えた。その優しい笑顔は絶世の美女であるねぇちゃんの中でも一番の美しい顔だと思った。そして僕も
「僕もねぇちゃんの優しさが大好きだよ!」
と言った。ねぇちゃんは満更でもない用に顔を赤くしてぽっと
(嬉しい‥)
と呟いた。
Merry Christmas!
最後まで読んでくれてありがとう御座います!
中々書く時間が無かったので、ろくな校閲をしないで出してしまったのですがどうだったでしょうか?
今執筆中の本編はできるだけ早く投稿したいと思っていますのでどうか温かい目で見ていただけると嬉しいです!
それでは、皆さんメリー・クリスマス!
そして、旧年中お世話になりました!来年もよろしくお願いします!