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異世界短編

夏休みに姉からのスチルフルコンのバイトに乗っかったらいつの間にか王子の隣のモブでした。



「あんた大学夏休みで暇でしょ?このゲームのスチルコンプしといて?勿論バイト代ならあげるわよ!期間は5日でコンプ出来たら5万円!!」


「乗ったぁ!!」



渡されたゲームはPCの乙女ゲーム「空より花は美しい」


花と空って、比べる次元が違くね?って思ったけど、バイト予定も無いし、出かける予定も特にない。

そんな俺は軽い気持ちで飛びついた!


うん。飛びついちゃった。ぶっちゃけ余裕イケると思ったし。




***




クッソ眠ぅ〜…


今日で四日目。夜は少しは寝てるものの、一日中ほぼゲームと飯はカップ麺。


しかもこんな依頼をしてきた当の姉ちゃんは5日間友達と旅行行って楽しんで、帰って着いたらスチル確認して出来てたら賞金獲得。出来てなきゃあげないとか言われた。鬼畜すぎる。



しっかしやってみたら思った以上にルートがあって、ヒロインちゃんに対して5人の攻略者、それを恋人エンドと友達エンドをコンプしたら出る裏ルートの逆ハーエンド後に、更に出る裏ルート。


5万に釣られたけど、これクリア出来ない前提でほぼやり込みさせとこうって魂胆だと気がついたのは半分を超えたあたりで。


当然そこから意地になり、スマホ片手に攻略サイトで分岐点見ながら、なんとかもう直ぐその裏裏ルートも攻略の目処が見えてきた!待ってろ5万!!


「でもちょ…駄目だ…もうクソ眠ぃ…まぁいっか。あと1日あるし、余裕あるわ…」


スマホで最後のルートを念の為おさらいしながら眠りに着いた。





で、起きたら異世界でした。




はいテンプレ来たー!!


ハイハイおはようございます!!

え!?俺死んだ?いや死んだ気はしねぇな!!

なんだコレ!?


とりま鏡確認すりゃ、なかなかイケメン。イヤッフー


そんでクローゼット見て気づいたね。

ハイ出た!空花の制服ゥ〜!!


そして改めてこの身体の記憶をたぐれば、この身体は王子の横のモブくんですわ。まぁそんなもんそんなもん。いきなり王子とかにされてもビックリしちゃうし。寂しくなんか無いんだぜ!

あのかわいいゆるふわキャラなヒロインちゃんや、オッパイバインな縦ロール悪役令嬢とかと、うふふっあははっしたかったとか、ないんだからね!!



…ちっ!モブじゃやってらんねぇな!!


自分に正直に改めて布団に潜ろうとするが、ストーリーの強制力で身体は勝手に着替え始め、抵抗虚しく学園へ向かった。え、なにコレ怖い。




「おはよう!体調はどうだい?」


フワッフワの金髪にブルーの瞳。

爽やかイケメン全開、慈愛に溢れた王子様。

それがこのメイン攻略者フィルストーン・シャンボン様。


朝からモブにはその笑顔が眩しいぜ!

濃い茶色の髪に茶色の瞳。はいこれが俺。


あ、そうだ体調聞かれたんだった。


「まぁまぁっスね」


「…いつもと言葉遣いが違うのでは無いか?えっと君の名前…すまない。覚えてないのだが、教えてくれるかな?」


モブとはいえ、かなり近くに居たはずなのに、名前すら覚えられてない!頑張れよ身体の持ち主!なんて泣けてきたが、考えてみりゃ俺もこいつの名前知らねぇや…まぁいっか。覚えてないっつーんだから、適当言っとけ!


「ガブリチョフです」


「君の名前はジョンソンだったはずだが?」


「……しまった!!!嵌められた!!」


オタオタと逃げ出そうとするが、王子の手から光る触手の様なもので絡め取られて動けない。


「やだ!やめて!突然のBLストーリー!?この触手でなにする気!?エロ同人!?エロ同人なの!?」


「何を言ってるのかわからないのだけど…君は誰だい?」


「ジョンソンです」


「そんな今更キリッとされても騙されないよ?」


くっ…渾身のキメ顔したけど駄目らしい。

触手で身動きは取れないし、そういやゲームでも魔物に襲われそうになったヒロインをコレで助けてた気がするな。なんだっけ。魔力を具現化したものとかなんとか。まぁその辺はどうでも良くて。


「まぁ君の存在は予想してたから、そんな慌てないでくれるかな?『王家の危機が近づくと、側近に異世界より現れしものが憑依する』って文献があってね。」


「お!なら話早いじゃん!」


「なんか軽いなぁ。で、王家の危機って何か教えてくれる?」


「知らん」


「…え?」


「マジで知らんし、俺も寝て起きたらこんなんなってて絶賛パニック中」


そんな頭抱えられても。だって知らないものは知らないんだし。てか「ハズレ異世界人とかあり得ない…」とか言うな。好きで来たんじゃねえっつの。


「とりま聞くけど、その文献の異世界人ってどーなった?」


「とりま…?ええっとたしか『国危機を救って彼は消え、元の人格に戻った』とあったよ」


「なら危機脱出したら帰れっかな!!?で!?危機って何?」



イケメン王子に盛大過ぎる溜息つかれました。






***



「見たかい?可愛かっただろう?」


「そっスね!」


さっき王子の後ろで見たヒロインちゃんの名前はファミールちゃん。

ピンク色の肩まであるふんわりとした髪形も可愛い。ゆるふわ系かわい子ちゃん。


先程、子猫が木から降りれなくなったのを見つけて木に登り、猫ちゃんを抱っこして足を滑らせて落ちた所に王子登場。

お姫様抱っこで難を逃れたとこで、王子の婚約者がジャッジャーン☆


「貴女何をしてますの!?そんな無茶をして王子に怪我があったらどう責任を取るつもりですの!?」


「あ…あのごめんなさい…わたし…この子が降りられなくなってて…」


「そんな話聞いておりません!人の婚約者とその様に近付くのもよろしくありませんわ。貴方は常識をご存知ありませんの?」


「アメリア!言い過ぎだ!僕がたまたま通りかかって助けただけなんだから、彼女を責めるのは間違っている!」


「な…わたくしは、貴族としての常識を解いてるだけですわ。それにその方は庶民ですのよ?」


「身分で人を見るとは何ごとだ!君がそんな人だとは思わなかったよ!」


「わたくしはただ…っ!もう宜しいですわ!貴女覚えてらっしゃい!!」




***



「ふるふる震えて…愛おしかったよ」


「いや〜ふるふるして可愛かったッスね」


「ファミール」

「アメリアちゃん」



お互い無言で見つめ合う。

うん。いくら絶世のイケメンでも野郎じゃ楽しくねーわ。


「俺、分かっちゃいましたわ。この世界の危機」





***


「は?ファミールが悪女!?何を言ってるんだい!?言いたくは無いが…アメリアでは無くか?」


学校の授業サボって裏の園庭を2人で喋りながら歩いてる。てか広ッ。東京ドーム何個分なのこの敷地。



「いやー俺もゆるふわかわい子ちゃんだとずーっと思ってたんスわ。でも考えてみりゃそりゃそーだわってね」


「ずっと?君はここに来たばかりの異世界人では無いのか?」


「ん〜…異世界人の知恵袋っつーか、ちょいと予見の力がありましてねぇ〜。暫くここの影に隠れて様子でも見ましょうか?」



暫くすれば授業の終わりの鐘が聴こえてきた。


暫くするとゆるふわヒロインちゃんがやってきて、木陰でお弁当を広げ出し…そのままくぅくぅと、お昼寝を始めた。


「かわ…」

思わず喋ろうとする王子の口を塞ぎ様子を見れば…ヒロインちゃんの前に長髪イケメンが現れ、その頬を撫でる。


「こんなところで寝て…風邪を引くよ?」


「え?やだっ!わたしいつの間に寝ちゃって…!えっ!?サイロン様?」


「いや、こんなところで何をしてるのかと思ってね」


「お昼を食べようと思ってたのに、寝ちゃってました☆サイロン様もおひとついかがですか?」


ニコリと笑ってアップルパイをお皿に乗せてサイロンに渡し、それをサイロンは口に運べば驚いた顔をした後、フワリと笑った。


「これは…君が?」


「はい。お口に会うか分かりませんが…」


「いや…とても美味しいよ…母が作ってくれた味に…よく似ている」




***


翌日、別の攻略者の行動を追ってみれば、ヒロインちゃんに出会って、摘んでいたお花を貰って、幼き日に亡くなった幼なじみを思い出して涙を溢した。



その午後に違う攻略者は、ヒロインちゃんが学園に紛れて混んだ犬と戯れているのを見て、自身も無類の犬過ぎなので会話が弾んでいた。



***



色々見て回った翌日の昼休み。


「はいでは王子様。今までのヒロインちゃんを見てどう思いましたか?それを踏まえて、王家の危機を30文字以内で答えなさい」


「え?誰にでも平等に、人を慈しむ子だと…」


「はい、ブッブーーーーー!!」


盛大に腕でバツを作る。

ちなみに顔はとても馬鹿にした顔をしてます。不敬罪?侮辱罪?そんなん知るか。こちとら日本人じゃい。


「何が違うと言うんだ!?君も彼女を見ただろう?」


「見た見た。見た上で王家の危機がガッツリわかりましたわ」


目を見開いて驚く王子に、椅子に座るよう促す。

この場所はちょいと木の影になっていて、葉の隙間から学園は見えるけど、遠目で見ることになる向こうからは誰が居るかはわからないベストポジション。


「ゆるふわ子ちゃんだけどさ…見える?」


「ん、ああ!校舎の中に居るね!あんなにプリントや教科書を持って…大変だ!手伝ってあげねば!」

立ち上がろうとする王子様を引っ張って座らせて、

「まぁまぁ見てて」そう促せば、不満げに椅子に座り直し暫く見つめていると…


何ということでしょう〜、イケメン攻略者が現れて、荷物を殆ど持ってくれました。

彼女は御礼をとびきりの笑顔で伝え、あらやだちょっといい雰囲気☆


「てな訳で、あぁ良かったとか、なんで彼が…とかのヤキモチは置いといて、今の違和感を20文字以内で答えよ。です」


「違和感?どこかにあったか?ただ彼女は荷物を…」

「はいブッブーーーーー。余裕で20字超えました〜」


流石の王子様もイラッとした様子で「だから一体なんなんだ!?」とか少し声を荒げてくる始末。

「マジでわかんないんスか?」

ジト目で問うも答えは一緒。


「その1、ここの先生ってそんな鬼畜?あんなか弱そうな女の子に誰があんな大荷物持たせるの?」


「…確かにそんな教師は居ないな」


「その2、彼女は荷物を持ってるならさっさと行くなりすればいいのに、なぜあの場で止まってた?」


「それも確かに…覗いていた間、特にどこかに移動する様子も無かったな…」


悩む王子を置いといて、今朝買ったサンドイッチをバックから取り出しパクりと食べれば、口に広がる肉汁に目を見開く。え!?異世界飯尋常じゃねぇ美味さ!!マジか。帰りも買おう。


「それで?食べてる場合じゃなくて、危機とはなんなんだい!?」


「ほっほまっへ…ん、おー…美味いけど、飲み物無かったの忘れてた…パンにはなんか飲み物ないと辛いよなぁ〜」


苛々した様子で、バックからコップの付いた水筒お茶を出してくれる王子。王子だけど学生だもんね。ちゃんと持ち歩いて偉い!有り難く頂戴いたします。


「えっと、あ、そうそう後は昨日の件な。フィル君はさ、お弁当にアップルパイのみってあり得る?」


「…無いな…。いやしかしソレが好きならばそんな事も…」


「フィル君。彼女の好物聞いたことある?」

2個目のサンドイッチをほうばりながら聞いて見れば、気まずそうな顔をして、


「前に聞いた時は、僕と同じサンドイッチだと…」


「うんうん。おんなじって言われると嬉しくなっちゃうよね。男の子だもん。わかるよー。そんでたまたま焼いたパイがあのイケメンさんのお母さんの味とかあり得る?てか弁当開いて即寝ちゃうとか病気なの?たまたまお花摘んだら思い出の花だとか、犬と遊んでたら犬好きの子現れて…ねえ、ここの学校犬とか平気で入ってくるの?」


「…あり得ないな。魔獣防止に、学生や教師以外は、入り口で身分を証明してない限り生き物は結界に阻まれるはずだ。」


少しずつ何かに気が付いてきた様子。


「あのさ、あとは例えば侯爵令嬢のアメリアちゃんにその辺の庶民の男が近づいて、『一緒にご飯食べようよ!俺、庶民だから礼儀とか知らないんだけど、気にしないでくれる?』とか、町で会って『アメリアさん!奇遇ですね!婚約者が居るの知ってるけど、一緒にお茶でもいかがですか!?』ってフィルくん置いて付いて行ったらどうする?」


身に覚えがあるのか、眉間のシワが半端ない。

王子様感めっちゃ薄れてる。


「ありえ…ないな…」


「だしょ?この前アメリアちゃんが言ってたのは至極真っ当なご意見だと気が付いた?

このまま逆ハールートで、至極真っ当な王家が王家である為に、キチンとしたことを言ったアメリアちゃんを意地悪だとかなんだとかで追放したら、もうこの国は終わりだわ」


「いや…でも彼女…ファミールは…」


「例えば突然学園で侯爵の娘さん切って、庶民の子を突然王妃になんかに召し上げたら、そりゃあ庶民は盛り上がるよ〜、今世紀最大の大恋愛!ってね。」


あーぁサンドイッチ終わっちゃった。

あとで王子のお気に入りのサンドイッチ買ってもらお。

名残惜しくて指をぺろりと舐める。


「んで、アメリアちゃんの御実家は大激怒。そっちの派閥は王家的にも大丈夫?んでもって、そこまでした上で、そのゆるふわちゃん…ホントに王妃になんてなるんかねぇ」


「なんだと!?」


思わず怒気を含ませて立ち上がる。

魔力漏れてるのが見て取れて怖いっつーの。


「これさ、逆ハールートなんだよね。

ゆるふわちゃん。フィル君一本に絞ってない訳よ」


「…逆ハー?君は何を…」


貰ったお茶をコップに移して、もう一杯頂きます。


「だってさ、アレだけ選り取り見取りなイケメンが揃ってて、みんな彼女に惹かれてる。きっとみんな『彼女はいつか僕を選ぶはず』だよね?」


「……」


返事すらしなくなっちゃった。


「そしたらどうする?『彼女』が『僕』を選ぶまで、彼女の近くに居て、幸せにしてあげよう?…いや無いわ〜!!フィル君ては一人っ子の王子様なのに、そんな盲目的に愛を捧げてちゃ、そりゃ王家の血筋は途切れるし、王家のピンチ」


「あのツンデレなアメリアちゃんなら、自分に何かあってもきっとフィルくん優先、国家優先にするよね。でも彼女は?入ってこないはずの猫を助けて、フィルくんに怪我を負わせてた可能性まである。」


「あれは偶然…!」


「猫ってさ〜基本登ったとこで、ある程度落ちてもにゃんこ大回転でそうそう怪我もしないし、しかもあの時猫の居た位置、そんな降りれないほど高い場所でも無かったしね?そんな時毎度タイミング良く王子様登場〜ってさ……まっ、ちょっと良く考えてみてよ。んじゃ、お茶御馳走様」



とりあえず1人にしてあげようと席を立ったら尋常じゃない目眩に襲われた。


フィル君が何やら心配してくれて叫んでる。ちょ、とりまガブリチョフって呼ばないで…ウケるし!

てかちょっと待って。サンドイッチくそ美味かったから、フィル君の好物のサンドイッチも食べてみたかった!!だからちょっとマジでまって、暗転するにはまだ早……!!







目が覚めたら自分の部屋でした。

夢だったのかな〜とか思うけど、なんとなく指にはあのサンドイッチの匂いが残ってる気がして…


とりま手を洗って、なる早で裏裏エンドクリアせねば!!キーボードがベタつくのやだしね!!


スマホで先に知ってるけど、裏裏エンドは聖女エンド。

ゆるふわちゃんがみんなに愛されて、そして光の魔力が目覚めて、この世界は浄化して、世の中幸せになりました。チャンチャン。



結果はわかっちゃいるが、攻略対象者全て放置エンドと思えば、夢とは言え彼らを見たので、なんとなく親近感湧いちゃって堪れない気もする。

そしてぶっちゃけあんだけ計算高い出会いイベントを見てしまったら、聖女エンドの聖女感が激減してる。聖女って誰が?聖女って何?状態。





さてはてと、コンプ目指してPCの続きを始めれば、ストーリーは既に終盤。


聖女となって空に舞うゆるふわちゃん。


『僕は…ちゃんと君を見ていなかったんだね。君はいつも僕を正しい道に導いてくれていたのに…』


あれ?ゆるふわちゃんが空に舞った後に、王子が語り出した…?


『君は…彼女や僕に正しい道を教えてくれていというのにね…』


寝る前に見たスマホの情報とちと違うな?

そんな違和感を覚えながら読み進める。


『彼女は皆の心を奪って、空に舞った。きっと彼女はこの先も沢山の愛を皆から貰い、また彼女も届けるのだろう。でも僕は、本当の君を知ってしまった。沢山の愛より、ただそっと僕のそばに咲いてくれた一輪の愛を。…そんな君の愛を僕にくれないか?…もう今更だと言われてしまうかな?

ねぇ…アメリア』


『わたくしの…愛は…いつだって貴方の元にありましたのに…』


『もう愛は旅立ってしまったかい?』


画面にはいつもは目元がキリッとした意地悪そうなアメリアじゃなく、涙を浮かべ幸せそうな顔のスチルからの、2人のキスシーンのシルエットスチル。


そして感動的なエンディング曲が流れ始め、エンディングロールが始まった。





え!?アメリアエンドなんて聞いてないけど?

スマホ調べても出てこない。

とはいえ、エンディングロールが終わって、これで裏裏ルートも完全攻略!!!


伸びをして振り向けば、旅行鞄を持った姉ちゃん。


「五万くれ!!」


「え!マジであんたコンプしたの!?…絶対無理だと思ったのに…」


慌てたようにカチャカチャとPCを操作する姉ちゃんを、ドヤ顔で待つ。


「…んふっ!最後の最後のスチル、空白だけど?」


めちゃくちゃ嬉しそうな姉ちゃんに、慌ててPCを確認するが…マジで無い!!


「え!?待って、俺今アメリアちゃんの泣き顔からのハッピーエンドみたところよ!?」


そのアメリアちゃんの泣き顔エンドがありません!!


「は?アメリア?…ここのセーブから始めるけど、ほらもうあとエンディングだけじゃない!」


ゆるふわちゃんが聖女になり、エンディングロールが流れ終わると、そこには聖女の羽が生えたゆるふわちゃんが空から街を見守るシーンのスチル。


そしてラスト一枚が埋まった。


「いやいやマジで!!え!?エラー!?アメリアちゃんは!?」


「悪役令嬢のアメリアエンドなんてある訳ないでしょ?寝ぼけてたのね!残念!五万は上げられないわぁ〜!」


「待て待て待て待て待て!俺の五日間を返せ!!五万寄越せよ!いやまてよ、五日間って言うんだから、まだ5日目だし、これはまだ範囲内だろ!!?」




ギャアギャアと五万を渡したくない姉と、意地でも五万を貰いたい俺の攻防は3時間に渡り、もう旅行疲れで寝たい姉ちゃんが2万5千で手を打ったところで、俺も妥協してエンディング。



姉ちゃんが寝る前にくれた、空港で買ったって言うサンドイッチが物凄い美味くて、なんだかマジでフィル君と食べたあの味に似てる気がして、指に付いたソースも口に運ぶ。




「んじゃぁ、アメリアちゃんと幸せにな…」



なんとなくそう呟いてPCを消そうとした時、画面に映るタイトル『空より花は美しい』が目に入り、俺の幻のエンディングのフィル君達を思い出して笑った。



初の短編でした。

なんか主人公の勢いに乗せられてました。

楽しんでいただけたなら幸いです!

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