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見出された運命の先に  作者: イミティ
第3章 迷宮国家ヴァルンバ
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第46話

 おまたせしました。



 その後は流石に罪悪感を持っていたのか拓磨が仲裁に入ってきたため下手に誤魔化す必要も無かったが、それでも男同士で会話は続いた。

 少し新鮮なのは、竜太と雄平の存在だろう。元々別に親しい間柄という訳ではなく、喋りはするがその程度、みたいな関係だったのだが、自然とグループとして会話ができている。


 安定してきているとはいえ、ここは危険を孕んだ世界だ。ある意味他者との距離も色んな意味で縮まりやすいのかもしれない。


 「そう言えば拓磨。雄平達を連れてきたのはお前の判断か?」


 そうして一時間ほど会話を続けても未だ喋り続けている俺達だが、俺はふと拓磨に限定して喋りかける。

 いつものメンバーはともかく、残りの四人を連れてきたことに関してどういう理由からなのか聞いておきたかったのだ。


 拓磨は途中に外で購入してきたジュースを一口含んで、こちらに向き直る。


 「あぁ。王女殿下から遠征の件を相談された時に、誰か良さそうなを人選んで欲しいとな。俺としては美咲に叶恵、樹は確定していて、あと数人を誰にするかと考えた時に刀哉から話されたことを思い出したのだ」

 「ゴブリン討伐の件か」

 「元々あまり気が強い方ではないが、雄平達も他よりは余程マシなのは確かだったからな、お前の助言から雄平と果穂を選んだ。竜太と亜由美に関しては、精神的に問題なく、かつ戦力のバランスを考えてというところだ」

 「だから慎二とか充(みつる)が来てないのか」

 「その通りだ」


 実を言えば、元々なぜこの四人なのだろうかと不思議に思っていた。というのも俺達に次いで身体能力の高い竜太はともかくとして、言ってはなんだが雄平や神無月、近添は能力が低いという訳では無いが、最有力とされるほどのものでもない。

 戦闘を重視するならば、それこそ明らかに高い戦闘力を持つ慎二や、剣道部のエースである鎮目(しずめ)充(みつる)や剣持(けんもち)二三(ふみ)など候補は居る。魔法面でも委員長気質で真面目な春風(はるかぜ)実(みのり)も居るし、正直彼らを連れてきた方が総合力は高い。


 だからこそ疑問ではあったが、戦力のバランスという面もあるのかと納得する。


 「一応全体的には皆戻ってきているが、それでもまだ蒼汰の死から快復出来ていない者も少なからず居る。行ける者だけで行くという選択肢も考えたが、それだと残った人間の中に彼らを励ます存在がいなくなって、再起の機会を喪失させてしまうからな……だからこそ、後からでも来れるように護衛役、まとめ役に近い形で置いてきた」

 「状況把握はどうしてる?」

 「王女殿下がもう一セット、お前に渡したのと同じ魔道具(マジックアイテム)を所有している。片方は慎二にな」

 「クリスも王女なのに随分と大変だな……」


 政治的立場以上に、今となっては勇者に対する助言役という立場がかなり強い。それだけ優秀でもあるのは分かるのだが……。


 「というかそもそも、クリスはどうしてここにいるんだよ。正直一番驚いてるのがそれに関してなんだが」

 「前に理由を聞いたらお前に用があったみたいだったぞ、刀哉」

 「俺に?」


 返答したのは拓磨ではない。竜太達と喋っていた樹だ。


 「具体的には?」

 「さぁ、俺もそこまでは。ただ王様がしっかりと許可を出してたみたいだし、国政の一環ではあると思う。あんな小さい子だが、頭脳は大人顔負けで交渉事も得意とくればおかしくはないな……まぁお前に対する用と関係するのかは知らないが、少なくともクリスちゃんが終始気にしてたのはお前のことだ」

 「……王女をちゃん付けで呼ぶなよ」


 少し不穏な言い方の樹に苦し紛れに言えば、「実際には王女様って呼んでるから」などと返って来る。同時に「王女に気にかけられてるなんて羨ましいな、ホント」なんて冗談交じりに笑われてしまう。


 「まぁ、元から刀哉は無意識に女性を落とす癖がある。特に歳下の少女などをな。そう不思議でもあるまい」

 「おいこら拓磨、クリスに失礼だろ」

 「このタイミングで自分じゃなくて相手を気にするあたりガチな気がするよな」

 

 いや、最初に自分のことに関して否定を入れると必死すぎる気がしないでもないし、別に普通のことだろ。それにこういうことを話しておきながらクリスが俺に全く気は無いとなれば、それはクリスにとってとても不愉快なことのはずだ。

 いや、表面上は大して気にしないかもしれないが、少なからず俺と距離を取ろうとするのは目に見えている。


 肩を竦める二人に一発ずつ拳をぶつけようかと本気で考えてしまう俺は悪くない。


 とはいえ、その後は再び他愛もない会話に戻り、更に少し時間が経った頃、流石に何時までも立ち話は出来ないと拓磨が動き出す。

 拓磨はクリスと何やら会話を重ねると、そのままこちらへと近づいてきた。


 ルリもついてきて、少しぶりにいつもの定位置に収まる。

 俺の隣で、自然と密着してくる体勢。


 「刀哉と……ルリ。二人は今夜はどうするつもりなのだ?」


 一瞬ルリの呼び名に迷ったようだが、拓磨は名前を呼ぶことに決めたらしい。それよりどうするつもり、というのは宿屋に関してだろうか。


 「少し曖昧だったな。良ければ二人もこの宿に泊まらないか? 久しぶりなんだ、まだ話し足りないことはあるだろうし……ルリも、女性同士の会話に興じていたようだしな」

 「……私は、トウヤに、合わせ、る」

 

 そう言いながら叶恵達の方へ視線を向けた。ルリもつられれば、何となく恥ずかしそうに視線を下げた。

 もちろん俺も見ていたからわかる。あまりコミュニケーションが得意ではないルリだが、決して嫌がっていることはなくむしろ心地よかったとさえ感じていそうだ。


 叶恵も美咲も近添も、皆人付き合いが上手いタイプだ。神無月も物言いが誰に対してでもハッキリしてしまうところがあるので嫌われてしまうことも多いが、ルリが可愛いのもあってかかなり溺愛というか、愛でている様子だったし、それにルリのこの様子を見るになにか盛り上がる話題もあったのかもしれない。


 ただこの分だと部屋も別々になるだろう。俺は男連中と、ルリは女性陣と泊まることになるかもしれない。

 そこだけ気にしそうだが……案の定、それを訴えるように俺の事を見上げてくる。


 ただ嫌だと言っているようには見えず、単に俺に判断を仰いでいるようだ。


 「───明日はまた一緒の部屋にしような」

 「…………ん」


 結局そう結論を出した。当然だが、他の人には聞こえないように小声だ。

 普段こそこのぐらい口にすることは躊躇わないが、流石に同級生や親友が居る中で女の子にそんなことを堂々と言えるほど肝が据わっている訳でもない。


 ただし、ルリが紅潮させながら頷き俯くという反応を見せてしまうので、近くで見ていた拓磨には違和感を与えることにはなったが。


 「見せつけてくれるな」


 違和感どころか、勘づかれているな。


 「……まぁ、今日は泊まってくよ。ここ幾らだ?」

 「一人一泊金貨三枚」

 「高い」


 拓磨の頭を一発。拓磨は表情こそ変えなかったが「……痛い」と呟いた。

 いや、もちろん拓磨に非は何も無いのだが思わずつっこんでしまっていた。だってそれ、三万円と考えたらおいそれと出せる金額じゃないぞ。ただでさえ拠点として使うことが多いのに。


 「俺らが泊まってる所は銀貨で済むぞ」

 「……一応今のは単独の場合だ。俺達が泊まるのは大部屋で、部屋代が金貨三枚で、それに加えて人数ごとに銀貨五枚と言ったところだな。随分と高いが、各々が個室に泊まろうとすると一人金貨二枚とそちらの方がかなり高くなる……ともかく、もしお前が俺達の部屋に泊まるのなら、実質銀貨五枚で済むという話だ。もちろんルリの方も、女性陣の部屋に泊まるなら同じ金額だ」

 「そうならそうと先に言え……でも部屋代は割り勘にしなくていいのか? 金貨三枚って、安くない値段だが」

 「俺達も、後で返すとはいえ王女殿下からお金を借りている身だ。王女殿下が割り勘しろと言ったらそうしてもらいたいところだが、あの子のことだ、求めはしないだろう。だから構わない」

 

 なるほど、確かにクリスなら求めない。金に困ってないと言うよりは、クリスは俺達の援助をするのを当然だと考えている。

 

 「そういうことなら分かった。ルリも大丈夫だよな?」

 「……ん」

 「ということなんで、お言葉に甘えさせてもらうわ。ルリ、叶恵達に挨拶してきな。同性なら沢山スキンシップを貰えるし、今晩はよろしくって」

 「…………ん」


 ルリはちょっと複雑そうな、嬉しいような悲しいような顔をした。積極的に甘えたい訳では無いけどでもちょっと甘えたくて、でももちろんそんなことは言えないとか、そういうことだろうか? ルリは素直じゃないところも確かにあるが、どちらかと言うとかなり甘えん坊気質なので無いわけじゃない。


 それとも……俺に甘えたいとか思ってくれているんだろうか。

 

 正直どちらも有り得る。挨拶に行く前にぎゅっと強く密着してくるあたり、そういう感じもする。

 ルリはそれはもう幼女的な体なので、フラットと言って差し支えないはずなのだが、それでも女の子。特に胸や腰周りの感触はこんな体型でも確かに感じてしまうのだ。


 柔らかい、ふにっとしたそれが押し付けられる。その奥の心臓の鼓動までハッキリと感じるほどに押し付けられてしまう。


 とはいえ周りに人も居るので一瞬だ。ルリはちょっとだけ俺の事を上目遣いで見ると、そのまま叶恵達の方へ逃げるように去っていってしまった。


 これは、居た堪れない。いや、それすらも逃げの表現で、実際には気まずいを通り越して変な気分になっていた。


 可愛さとか、そういうものだけを感じるのは無理無茶無謀。あれはダメだ、単に抱きつくのではなく、明らかに体を意識させるように押し付けていた。

 上から下まで、ほんの一瞬だけでもルリはそうしていた。戦闘があれだけ出来るのだから、そのぐらいの体運びは余裕のはずだ。


 とんだ置き土産である。


 「……見せつけてくれるな」

 「同じこと言わんでいい」


 言い返せば、肩を竦めて返されてしまった。

 IPadが楽しくて少し甘え気味の文字数ですが、いや、一応これが平均としている数値ですので……じ、次回は明後日辺り。

 今回結局四日後となりましたが、次回こそは明明後日に戻れると思いますので!


 本当の最初ほ明明後日じゃなくて明後日だと言うのは、まぁその、ご愛嬌ということで……。

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