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見出された運命の先に  作者: イミティ
第3章 迷宮国家ヴァルンバ
79/152

第29話

 はい、投稿でございます。ちょっと短めですがご了承ください。



 「…………ん、トウヤ?」


 朝、背後でルリが目を覚まし体を起こす。


 眠たげに眼を擦り、ローブから肩先を露出しながら体を起こしたルリは、不思議そうにこちらを見た。


 「……ぉはよ。起きて、た?」

 「あぁおはよう。少し前にな」


 どうやら既に起きていた俺が気になったらしい。俺はもうベッドから降りていて、完全に支度を整えている状態だ。


 白い肌が見えていることに気がついたルリはいそいそと服装を整えながら、何かを訴えるように俺の事を見つめる。

 普段とは少し違う行動に異を唱えているのかもしれないが、俺は敢えて気付いていないふりをした。


 「昨日はいつ頃帰ってきたんだ」

 「……夜、前ぐらい」


 昨日俺が自身の思考に不貞腐れて寝てしまったのが夕方辺りと非常に早い段階であることを考えれば、やはり俺が寝てからすぐだった様子。

 時間にすれば一時間程度か。


 その時間でどこに行ってたのか気にはなる。何よりそれが楽しむことを目的としたものでは無いなら、聞いておかないと不安になってしまうのだろう。


 「用事の内容を聞いてもいいか?」

 「……別、に。ただ、知り合いに、会ってきた、だけ……特に、何も無い」


 昨日は行きたい場所があると言っていたが、どこか特定の場所という訳ではなく、知人と会うことを目的としていた事のようだ。

 ただその知人というのは、友人とかそういうものでは無いらしい。口にするルリの声音はうんざりとしたもののようで、友人に対する気安いものと言うよりは、完全に嫌気がさしている相手に対してのものだ。


 連絡を取った素振りを見せなかったことから、元々この街に住んでいる人か、もしくは今この街に訪れていることを何かしらで知って会いに行ったか。


 どちらにせよルリはあまり思い出したくないもののようだ。


 その人間が男なのか女なのかも気になったが、あまり思い出したくないのなら無理に聞くのも寝起きの少女にすることではないだろう。

 そう思ったのだが、表情に出てしまったのか口を開くルリ。


 「……相手は、女……トウヤ、安心した?」


 先程のものとは一転して上目遣いになりながら微かに口角を上げて聞いてくるルリは、イタズラ的とまではいかないが、どこか俺の事をからかうようなものに見え動揺してしまう。


 「いや、別に俺は……」

 「……」

 「そんな見られても……はぁ、その通りだ。ルリが男と会ってるわけじゃないと知って安心してる。これでいいか?」

 

 誤魔化そうかとも思ったが、ルリの無言の圧に負けて素直な、というよりは開き直った反応を返す。

 そうだ、確かにそこの部分は気にしていた。ルリが異性と会っていたかもしれないと危惧していた。


 とはいえ、もちろんそんなのは俺の勝手な感情だ。ルリは別に恋人でもなければ、俺もルリに対して明確な恋愛感情を抱いている訳でもない。

 ルリが誰と会っていても責めることは出来ないし、しようとも思わない。ただ感情は別なだけで。


 ちょこんと、俺の袖を掴むルリ。


 「……トウヤ、独占、欲……強い?」

 「んんっ!?」


 そうして告げられた言葉に思わず変な声が出てしまう。


 「……強い?」

 「そ、そんなこと聞かれましてもですね……独占欲って、あまりポジティブなものではないと言いますか」

 「……ただ、気になった、だけ。トウヤ、嫉妬とか、あるから……」


 先程の話をしているなら、確かに、確かにそうだ。嫉妬とかしてたけども、確かにそうだけども。


 そんなずいっと身体を寄せて聞いてくるものでは無いと思うのだが。


 「……無い?」

 「無くはない」

 「……私は、あるよ? 独占欲」


 俺が明確な答えを渋るのに対し、ルリは聞いてもいないのにそんなことを答える。


 「……だって、トウヤが他の人、と、居たら……やだ」


 袖を掴んでいた手がそのまま俺の手を握って、その答えが本物であると主張するように俺の事を見た。

 俺に対しての独占欲が、自分はあると───そう言いたいのだろう。


 「……これ、良くない、事? トウヤ、嫌?」

 「…………またすごいことを聞いてくるな、ルリ」


 なるほど、確かにそんな素直な独占欲を向けられると悪い気はしない。いや、そもそもこのくらいの独占欲なんてありがちなもので、その程度がどのくらいかという話なだけだ。

 ただ、こんなにハッキリと明かされることはない。そもそも独占欲なんて、異性間での恋情的な意味合いが含まれる場合が多いのだ。誰だって相手に伝えるのは躊躇われる。余程近くて、お互いに気持ちが理解出来ていない限り。


 「嫌じゃないし、悪くもない。けどな……」

 「……恥ずか、しい?」

 「それはあるけども」


 というより答えにくい部分なんてそれが理由だろう。恥ずかしい、もしくは不安であるということ。俺がルリにそう伝えることで、どこか束縛を与えてしまったり、嫌われたりしないかと。

 俺もそう思ってしまう部分はある。だから独占欲があるかなどと聞かれても答えるのを躊躇う。


 その点、ルリが躊躇いなく俺に告げたのは……まぁ多分、先に自分から告げることで何も心配はいらないと言いたいのだろうな。


 それに、もう俺の方も答えてしまっているようなものだ。


 「……大丈夫。私、トウヤに、そう思って、貰えてる、なら……嬉しい、から」

 「…………俺の負けだ。わかった、これ以上はやめてくれ。俺の方がもう恥ずかしい」


 手を上げて降参の意思を示す。流石にその反応には白旗を上げざるを得ない。


 誰がこんな、可愛く素直なことを言ってくれる少女に対応出来るというのか。何より独占欲云々の話なんて、結構踏み込んでいる内容だ。


 「俺も独占欲はある。ルリが他の人と話してたら、例えそれが同性だとしても嫌だ……だからちょっと、この話は終わりにしよう」

 「……トウヤって、意外と……かわいい?」


 クスリと笑うようなルリの発言に、引き攣った笑みがこぼれる。まさか圧倒的に可愛い少女のような相手から、容姿的なものではなく雰囲気的な意味での『かわいい』という発言を貰うことになるとは。


 かなり、男的に辛いものがある。


 「……はい、今日も迷宮行くぞ用意用意」

 「……ん」


 早口で朝の支度を済ませるよう促して、誤魔化す。さぁさぁ早く行こう、今日もまた迷宮でレベリングだ。 

 次回は多分明後日辺り……にいけると思いたい。

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