第15話
お待たせ致しました。本日少しですが戦闘シーンがあります。
最初なので、今回はサラッとです。本格的な戦闘シーンは次回あたりから出していくつもりです〜。
というか、久しぶりの戦闘シーンで少し苦戦しました( ̄▽ ̄;)
受付嬢さんが先程まで担当していた人をほんの少しだけ見送り、そしてこちらを向く。
ルリを見て一瞬の動揺はあるが、それも直ぐに隠れた。
「こんにちは! 本日はどのようなご要件でしょうか?」
「探索者になりに来ました。ここで手続き出来ますか?」
「探索者登録ですね? 少々お待ちください」
どうやらスムーズに進みそうな予感。これは冒険者登録とほとんど同じなんじゃないかと考えながら、受付嬢さんは二枚ほどの小さな紙を取り出す。
必要事項を記入しろ、ということらしい。俺の方に一枚、そしてもう一枚をルリの方にも置いているのを見て何も聞かない受付嬢にこちらが驚いてしまう。
もしかして、意外とあるのか? ルリぐらいの容姿の人が登録すること。
……いや、紙に年齢を記入するところがあるから、容姿よりもそちらで判断するということだろうか。
ふと、気になってルリの方を見てしまう。もしや今ならルリの年齢を見れるのではないかと思ったのだ。
───そう思ったのだが、俺が見た時にはルリはもう紙を記入し終えていた。さもまるで急いだかのように、驚くべき速度である。それを受付嬢さんも少し驚きながら受け取っていて受理しているので、記入内容には特に問題がないのが見て取れる。
ルリがこちらを見て「何?」と首を傾げて来たので、何でも無いと言って俺も自分のを記入した。
「……一応、司書、やってたから。速筆は、出来る」
どうやら記入速度に驚いていると思ったらしいルリは、そんな補足を。確かにそこも驚いたのだが、そうではなく。
そもそも司書って速筆を得るような機会があるのかと思うが、こちらの世界にはスキルがあるので速筆といった技術なども地球よりは習得が容易そうだ。
俺も本を読んでいただけで[速読]のスキルを取得していたし。
「───はい、ではこちらが許可証になります。迷宮に入る際に守衛の兵士に提示を求められますので、紛失しないようご注意ください」
さて、冒険者ギルドと同じぐらいの迅速な対応で登録が終わると、これまた冒険者カードと似たような物を貰う。とはいっても、冒険者カードがランクなどを記載する一方で、こちらは『到達階層』という項目が代わりに存在している。
名称からしても、迷宮内で到達した階層を示すものと思われ、ルリも同じものを貰っている。
登録が終わったならと俺達は取り敢えずその場から退くことに。後ろにもまだ並んでいる。ルサイアの王都と比べれば、こちらの方が活気づいているとでも言おうか。
恐らくは需要の違いなのだろう。
「登録、やっぱり早かったな」
「……迷宮、行くの?」
ある程度予想はしていたが、一分かかったかどうかだ。そうなると当然だが時間も余っている。
時間は昼を少し過ぎたあたり。昼食自体は先に携帯食で済ませていたが、ともかく迷宮に試しに行ってみるぐらいの時間はあると思われる。
「準備とか休憩とかいいか?」
「……馬車で、充分休んだ、から……あと、もってくもの、わかんない、し」
「それは確かに。じゃあそこら辺の確認も兼ねて、試しに行ってみるか」
「……ん」
迷宮の位置は街の中央付近であると見当がついている───見当という名の勘ではあるが。
この街は、というかこの国は明らかに迷宮を主軸として栄えているのだろう。となれば、そういったシンボル的なものが街の中央にありそうというのは、決して的外れとは言えない予想のはず。
まぁその場合、迷宮がそんな簡単に移動出来るはずがないので、最初から迷宮を中心に街を興したということになるのだが、それもそれで有り得そうだ。
◆◇◆
人が多いとは言っても、ここから迷宮までは探索者ギルドの近くという都合上、全体的に流れができている。比較的スムーズに移動を終えた俺達は、確かに迷宮の入口で許可証の提示を求められたので貰ったそれを見せて中へと入る。
ちなみにやはり予想は当たって街の中央に迷宮の入口は存在したのだが、それはなんと言おうか。地下へと続く石畳の階段、というのが一番近い表現な気がする。
とは言ってもむき出しではなく、階段の周囲は分厚い壁で覆われていて、三重の扉を経て中へとはいることができるようになっている───理由は分からないでもない。迷宮から魔物が溢れた場合の応急処置用ではないだろうか。
迷宮内へと続く階段は一つではなく、どうやらそれぞれが同じ迷宮内の別々の通路に繋がっているようだ。
どうも迷宮内に入る冒険者、もとい探索者を分けているらしい。一度に同じ場所から何人も入らせると、確かに魔物の横取りとかあって大変そうだしな。
ルリと共にどこか神秘的な感じすらする石畳の階段を降りて、俺達は迷宮の第一階層へと降り立つ。
「明るいな」
「……迷宮が、発光、してる……?」
降り立ったのは横幅五メートル程度、高さもそのぐらいの通路だ。本来なら地下であるここは照明が無ければ光を確保できないはずだが、迷宮の中は特にそういったものが取り付けられていないにもかかわらず、暗くはなかった。
確かにルリの言うように迷宮自体、つまり壁や床、天井が光っているように見える。
「これならまぁ、灯りは必要ないか」
魔法で照明を用意するつもりで居たのだが、その手間が省けたらしいことを悟って、歩き出す。
「ルリは迷宮についてはどの程度知識があるんだ?」
ふと、ルリに声をかける。残念ながらこの世界で俺が得た知識はそう多くはない。もちろん消費した時間と比べれば十二分以上の知識は得ているが、その時間自体が多くないのだ。
あの王城にあった図書館の本を読み尽くすことは出来ないし、そうなってくるとどうしても少し掘り下げた知識までは持ち得ていない。生活する上では不十分なことは無いだろうし、致命的では無いのだが、少なくとも俺が迷宮に関して知っていることは少ない。
「……私も、そこまでじゃ、ない。ただ、基本的なこと、ぐらいは、知ってる……と思う」
「基本的なことだけでも十分だ。じゃあ、迷宮の難易度ってわかるか? この階層の魔物がどのぐらいの強さなのか目安を知りたい」
そもそも俺は迷宮に関して本当に知識だけしか知らない。魔物が地上の何倍という速度で自然発生する、地下へと続く建造物、もしくは遺跡。
深層へ行けば行くほど出現する魔物が強くなり、故により効率的にレベルを上げることが出来るということで俺は目指していたが、逆に言えばそのくらいなのだ。
具体的に出現する魔物の強さや、そもそも何階層あるのかということなどは知らない。
「……ここは、別に普通。レベル、20はあれば、平気……?」
「それでもレベル20なのか」
駆け出しと言うには高い。中堅とは言わないが、少なくとも初心者がいきなりというのはリスクのある難易度だ。
とはいえ俺の現在のレベルは11。適正レベルよりも下ではあるが、勇者であることを加味すれば十分と言えるだろう。
「……魔物、は、ゴブリンと、その亜種、系統が多い、らしい……」
「ゴブリンの亜種ね……」
一応、一口にゴブリンとは言っても色々と居る。普通のゴブリンは森などでよく見る緑色の肌をした、俺も何度か倒してきている魔物だが、それ以外にも魔法を使うゴブリンメイジや、肌が青く全体的に普通のゴブリンよりも能力の高いブルーゴブリン、更にそれよりも一回り強い赤色の肌のレッドゴブリンなど。
名づけ方が単純なのは、分かりやすいようにということだろう。そうに違いない。
そうした、普通のゴブリンと似ていながらも能力や見た目に差があるものはゴブリンに問わず亜種系統と呼ばれている。亜種、という言葉からも予想は着くだろうが。
ゴブリンにこうも種類がいるのは、ゴブリンの繁殖力が強い一方で能力は弱いためなのだろう。環境に適応した結果とか、そもそも繁殖力が強いから突然変異体も生まれやすいとか。
そしてそうして生まれた存在が繁殖して、ゴブリンの亜種として認められるみたいな……実際のところそれが合っているかは知らないけれども。
しかしあくまでゴブリンなので、形状としては小人という点に関しては変わらない。
それはこの迷宮でも同じだろう。
取り敢えずの情報として頭に入れておき、通路を進み出す。今回は特に目的地があるわけでもなく試しなので、適当に進む感じではある。
魔物と遭遇したらまずはこの通路でもちゃんと戦えるか確認しようと思いながら進んでいれば、一分もしないうちにルリが袖を引く。
「……先、居るけど」
「言い方が幽霊でも見たような感じなんだが」
そんな後ろから袖を引いてちょっと指さすってやり方は不穏なのだが。ともかく俺も気づいてはいたので、そこの曲がり角から少しだけ顔を出してみる。
声こそしていないが、通路の先に数体のゴブリンが居る。魔物と遭遇するにしてもどのような感じかとは疑問に思っていたが、待ち伏せをしているわけでもなんでもない。もし他の人と遭遇したらこんな感じなのだろうと思うぐらいに自然に迷宮を闊歩している。
そのゴブリン達の肌は青色と、先程記憶から呼び出していたブルーゴブリンのものと一致していた。
数は、五体。同時に相手するのはキツイだろうか……いや。
「ちょっとやってくる。多数の敵と戦えるかどうかも確認しておきたいしな」
そもそも魔物を相手に真っ当に斬り結ぶというのは選択肢としては悪手なのかもしれない。数は多く、人間には無い武器を持っていることも多い。
魔法を用いて即時殲滅ぐらいの勢いならば、同時に相手にするよりもよっぽど容易だ。そもそも敵に囲まれる状況は無いに限る。敵が複数いる場合は、それを活かされないように戦うべきなのだろう。
「……私は?」
「有難いが、最初は俺一人で行かせてくれ。予想ならそう苦戦はしないと思うんだ」
ルリが聞いてくるが、今回は待っててもらうことに。助太刀してくれるのはとても有難いが、それだと俺の出る幕がないのだ。
俺のレベリングが、一転してルリの戦闘講座になってしまうのは避けたい。今回に限らず、この先もルリには苦労を強いるが、ある程度手加減してもらう必要があるだろう。
少なくとも俺がルリについていけるようになるまで。
「……わかった。危なくなったら、行く」
「あぁ、それで構わない。んじゃ取り敢えず、待たせるわけにもいかないからささっとやってくる」
腰の鞘から剣を引き抜き、その言葉と共に角から飛び出していた。
ブルーゴブリンはこちらに背を向けている。隊列もそう整然としたものではなく、何となくで並んでいるだけだと判断して、一番後ろにいたブルーゴブリン目掛けて左手を突き出していた。
そこでブルーゴブリン達はこちらに気がつくが、その頃には準備を終えている。
「『降雷』」
ブルーゴブリンのすぐ頭上で発生する光。本当は全員にやるつもりはなかったが、予想以上の魔力構成のスピードによって、五体全員分用意することが出来た。
その光から真下のブルーゴブリンに向けて一条の、いや光景で言うなれば五条だろうか、雷が駆け抜ける。地面まで抜けた雷によってブルーゴブリンの体が悲鳴をあげた。
プスプスと煙が上がり、五体全員がバラバラのタイミングで地面へと崩れ落ちる。
それが絶命したというのは見た目で直ぐにわかったのだが───思った以上に呆気なく終わった戦闘に、抜いたのに使う機会の無かった剣がなんとも気まずい。
俺の計画で言えば、『降雷』で数体倒しそのまま突撃した勢いで残りを剣で斬る、という簡単なものだったのだが、更に簡略化されてしまった。
これは俺自身の魔法能力が思ったよりも上がっていたと見ていいのだろうか。あの一瞬の中で中級魔法を五つも同時展開するのは、城の頃では難しかったに違いないし。
立ち尽くす俺の元へ、ルリがやってくる。
「……早く、終わったね」
「正直拍子抜けしてるわけだが……まぁ、終わったな」
使っていない剣をしまって、微妙な表情で頷く。
「……トウヤ、は、結構強い、から。多分、この辺りは、一人でも余裕、だと思う……」
「かもな。とは言っても、俺的にはあまり魔法に頼りきりになりたくはないんだが」
「……別に、剣でも平気、でしょ?」
「そうだけど、慣らしの問題でな」
魔法一辺倒になるよりは、剣と魔法を両方使えた方が良い。多少使わないぐらいで鈍るなんてことはないと思うが、ここ一週間程度で剣を握る機会が少なかったのは事実だ。魔法はいくらか使ったりしたものの、剣は本当に戦闘以外では使わない。
ちょっと中途半端ですが、いい感じに終われなかったので無理やり区切りました。
さてさて、次回は明後日辺り。ようやく迷宮にも入ったことで無事章タイトル回収と、更に戦闘シーンの盛り込みも出来る状況となったので、実質ここからが本番ですね、多分。




