★第12話
8/25 本当は(シリアス的な雰囲気の中で)クーファとお風呂に入る夢のお話でしたが、色々あって文字数削りまくりました。なんで今回とても短いです。
修正前のお話は他サイトにて……。
───絶対に居なくならないと、そう誓った。
───絶対に離さないと、そう誓った。
俺の腕の中で不安な顔をする少女に、俺はそうやって、なんの根拠も無い発言をしていたのだ。
でも、覚悟だけは確かにあって、少女への、妹への想いは本物で。
「……大丈夫だ。絶対、帰るからな───」
───結局のところ、俺の夢というのはいつだってそうだ。腕の中の温もりも、その声も、幸福感も、全て塗りつぶしていく。
夢と現実の区別がつかないのも、ほんの僅かな時間。目を開けばいつもの、ここ一週間過ごした部屋の天井が見えていた。
「……今回は、それか」
当然のように、その夢の記憶は完全に引き継いでいる。俺自身の、夢ではなく過去の記憶もしっかり覚えている。
クーファの不安を、心配を、そして触れた肌の温もりを。
腕の中にあったそれが無くなったこの空虚感が、俺の心を押し潰そうとしてきていた。
いつもの、喪失感。一時の幸福と、それを失う何倍もの絶望を、俺は何度味あわなければいけないのだろうか。つい数秒前まで、妹と、クーファと一緒に居たと言うのに。
俺の心が、記憶が訴えかけているのだろう。今この時、あの光景を見せられたのは、次へと進む決意が、少し影響したのかもしれない。それでもなお、より強い決意を、俺に求めているのだろう。
「……分かってる。早く帰るよ。だから、もう少し待っててくれ」
ここにはいない妹に、妹達に、聞こえるはずもない言葉を放った。
日に日に増していく喪失感と絶望感に押し潰される前に、実感出来る進歩をしないといけない。そのためには何だってするし、どんな敵とだって戦う。
ギリッと奥歯を噛み締め、心を落ち着かせる。最優先事項は、全てにおいての最優先事項は、元の世界に、あの場所に、アイツらの元に帰ること。
辛さなんて、感じている暇はない。
そう意識を切りかえて、俺は微かな温もりが残っているベッドから、立ち上がった。
◆◇◆
少しすれば、夢のこと自体は頭から切り離すことが出来る。それに加えて今日は、ある種大きな変化がある日だからな。
そしてそれを察知したかのように、いつものメイド───サラさんが現れる。
その登場はある程度予期していた事なので、驚くことはなく俺は彼女の方に顔を向けて、先んじて言葉を放った。
「王女殿下から俺を呼ぶよう言われましたか?」
「……その通りでございます」
最初から考える素振りも見せずに言い当てれば、驚いた表情を浮かべるサラさんに、俺は一応説明をする。
「前回の襲撃もありましたし、勇者が寝泊まりする部屋の廊下に誰も居ないなんて可能性は少ないなと思いまして、昨日夜に拓磨とした話は把握されているかなと」
本当は近くにサラさんか誰かが居るのを気配で把握していたので、それで確信を持ったが、そこまでは言わなくてもいいだろう。
ともかく、その時点で昨日の話は全てクリスの耳にも入っている可能性は考えていた。
頭を下げたサラさんは、俺を賞賛すると同時に、俺の言葉が正しかったことを肯定する。
「ご慧眼、お見逸れ致しました。失礼ながら、確かに私は昨晩のタクマ様との会話のご様子を確かに把握しておりました。トウヤ様が、その……ここを出立なさるおつもりであることも。それをお嬢様にご報告したところ、トウヤ様を再び呼ぶようにと」
「俺も自分から行くつもりでしたから、今すぐにでも行けますよ」
話の内容は凡そ予想が着いているし、俺としても次に進むためには再びクリスか王様と話すことが必須だと考えていたから、呼びに来てくれて手間が省けた。
昨日に続き再びの案内。サラさんは終始俺の事を気にしていたようだが、それは俺がこの城から出ていくということを意識してだろうか。
サラさんは俺が居なくなることを悲しいと捉えているようだが、それでも俺は行くだろうな。許可が出なければそれもまた別となるが。
聡明な子だからな、クリスは。俺が城から居なくなるデメリットを挙げれば俺の言葉を否定してくる可能性もあるが、そこは説き伏せるか、もしくはそれ以上のメリットや、感情に訴えるしかない。
ともかく、話をしてみなければ結局のところ推測以上はできない。
夢は扱いやすくていいですね。それはともかく、さて次回、ようやく城の外に出れるかどうか……ってところですね。
ファンタジーのお約束、冒険者とかにも触れたいですし、果たしてどうなっていくことやら……次回は明後日辺りです。




