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見出された運命の先に  作者: イミティ
第3章 迷宮国家ヴァルンバ
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第70話

 実に十日ぶりです!! ───はいごめんなさいお待たせ致しました。

 待たせた割にいつも以上に短く駆け足の内容ですが、今回でどうにか第三章は終わりです!



 第二層ではイノシシの魔物、ブルボアと遭遇する。拓磨は自身の持つ[鑑定]のスキルで大凡のステータスを把握し、戦うことは難しいことを悟った。第四層では不意をつくことで運良くホブゴブリンを倒せたが、本来あの階層の敵はレベル的にまだ足りていないのだ。正面から挑めば楽勝とはならないはず。


 実際の戦力は分からないが、ブルボアは生命力に関してはホブゴブリンより上だろう。不意をついたとしても一撃では倒せない。

 恐らくは、勝つことはできるだろう。しかしながらそれを今行うことは難しい。刀哉はああ言っていたが、実際のところ地上まで持つかどうかなんて全くもって分からない。


 ここで戦闘を行えば、それは無視できない時間のロスだ。

 それならば多少リスキーでも通り抜けてしまう方が良いだろう。


 刀哉を抱えたまま拓磨は駆ける。ブルボアとの距離は十数メートルと言ったところだ。

 正面からやってくる拓磨に向けて、ブルボアは明らかな突進の体勢を取る。それはすぐに準備完了とばかりに開始され、拓磨目掛けて猛突進をしてきた。


 迎え撃てるわけが無い。故に拓磨が取った行動は単純に回避だった。


 「『空間跳躍(テレポート)』」


 ブルボアに当たる直前、入れ違いを狙うように魔法を使い、拓磨はブルボアの背後へと転移する。

 これでブルボアは後ろへ突き進み無事に戦闘を回避……ともいかない。背後で急ブレーキをかけて突進を止めたのを把握し、拓磨は一層加速した。


 後ろからはブルボアが反転して追いかけてきている。その速度比は、どうも拓磨の二倍から三倍くらいに思える。それだけの速さで来られたら直線距離では逃走も叶わない。

 どうにか曲がり角を駆使して距離を稼いでいくが、視界から逃れることは出来ずいつまでもブルボアは追いかけてくる。


 ただ逃げればいいと言うだけでなく、拓磨の目的は地上への帰還だ。そのため通る道はあくまで一度通ったことがある道でないと、出口までの道のりがわからなくなってしまい、結果的に時間をロスすることとなる。

 そのため全ての曲がり角を利用できる訳では無い。


 刀哉を抱えての全力疾走で、僅かに息も上がってきた。いよいよもって逃げ切りは無理かと、拓磨も時間のロスを覚悟する所だった───その瞬間に、拓磨の横を通る人影が現れるまでは。


 「『風槌(エア・ハンマー)』ッ!!」


 前を向いて走る拓磨には何がどうなったのか分からない。しかし背後でブルボアが体勢を崩し地面へ倒れたのは音から把握ができた。

 そこで一度足を止める。拓磨が振り返った先には、こちらに背を向けて立つ樹の姿があったのだ。


 「平気か拓磨!?」

 「樹!? 何故ここに……」

 「美咲が第二層を抜けたから、お前の様子を見に来たんだ───倒す時間もないんだろ、ここは任せて行け!」


 突然の登場に流石の拓磨も驚く中、樹は語気を強めて叫んだ。

 

 確かに時間はない。しかしオークと同等レベルの魔物を樹一人で倒せるかも不安だ。拓磨とて一対一では慎重を期さねばならない相手だ。

 だが……拓磨はその躊躇いを破棄して、再び正面を向く。


 優先順位は間違えてはいけない。今は刀哉の治療が最優先とされる。樹を心配して足を止めては、それこそ急いできた樹の行為を無駄にしてしまうだろう。


 「すまない、ここは任せる」

 「ああ、任せてくれ!」


 拓磨は樹に背を向け、再び走り出す。背後では戦闘音が聞こえ始めるが、当然止まることは無い。


 そのまま体力を削ってでも全力疾走して駆け抜けた迷宮。余裕もない中、ただ無心で地上までやってきていた。

 入口付近となるとやはり他の探索者も目につく。駆け抜ける拓磨のことを見るが、こういった事が他にもあるのだろうか、我関せずとばかりに端に退き道を譲ってくる。


 確かに、今はその程度の配慮で十分だった。地上に飛び出し、門番を務める人の声も振り切った先では、クリスの侍女であるサラが待っていた。


 「───どちらへ!?」

 「タクマ様方がお泊まりになられている宿に、全て手配されています。ミサキ様達もそちらへ」


 拓磨の切迫した問いは『どこへ向かえばいいのか』という意味が込められたものだが、一聴すると脈絡のない問いにサラは落ち着いて答えた。

 それを聞き、礼も言わずに駆け抜ける。あと少しという思いがあるからこそ最優先事項の達成のみに勤めていたのだ。


 宿までを走り抜けるのは簡単だった。美咲が通ったのはやはりほんの少し前だったようで、少しの道が出来ていた。


 宿の扉を抜けて、そこからどこへ向かえばいいかは一人の女性が立っていたことで把握する必要がなかった。


 白衣のようなものを身につけたその女性は一目見るだけでも関係者だとわかり、しかし拓磨達へ向けた瞳は酷く無感情でもあった。


 「あぁ、それが患者ね。じゃあ、そっちの部屋に運んどいて」


 拓磨の姿を認めた女性の言葉は、なんとも無感情に言い放つ。これが切迫した状況でなければ刀哉を『それ』扱いしたことに胸ぐらでも掴みに行っていただろう。

 しかしながら、今の拓磨は幸か不幸か冷静さを失えない状態だったのだ。特に反抗することも無く、恐らくクリスが寄越した治癒術師であろう女性の言葉に従って言われた通り指定された部屋へ刀哉を運ぶ。

 

 部屋の中は普通の宿泊室そのものだったが、ベッドのみ睡眠用のものではなく、恐らく医療用のものであろう角度のついたものに変わっていた。

 二つあるベッドのうち、片方はカーテンで仕切られている。美咲は居ないが、時間の差があったようだ。


 刀哉をベッドへ寝かせると同時に、遅れて女性が部屋へと入ってくる。


 「はいはい。患者を置いたなら健常な人間は出てって頂戴。ただでさえ男ってだけで憂鬱なんだから、術師のコンディションをこれ以上悪くしないで」

 「……刀哉を、任せて良いのですね?」

 

 息を整えることも無く拓磨がそう聞いたのは、女性の言い回しがあまりにも治癒術師、医療者らしくないもののため、その心配から来たものだ。

 失礼とかそういう前に、本当にこの女性に任せていいのかどうか不安がある。無論拓磨もクリスが下手な人間を呼ぶとは思っていないため、そういう意味では信頼しているところもあるが、それと実際に人柄を目にしての反応は別だ。

 この一問答がより時間を急かす要素となることに気づいたのは、発言した後だったが。


 「安心して。私、怪我した人を治すのが好きなの。治療のためなら傷口をどれだけ見てもおかしくないし、怪我をする人を治せばまた怪我してくれるかもしれないもの」

 「……刀哉をお願いします」


 拓磨の方を見ることなく言った女性は、既にこちらなど眼中に無いようだった───どうも聞いた限りではかなり人格破綻者のように思えるが、恐らくは自身を安心させるためのジョークなのだろうと片付け、部屋を後にする。

 この先は拓磨にはどうしようも無い領域。治癒術師に任せるしかない場所。


 刀哉の粘りに、任せるしかない状況。


 「……俺に出来ることはやった。後は、お前次第だ」

 

 えぇ、第三章はこれで終了でございます。ここまで待たせた理由は第四章のプロット確認という事ですが……実はそんなに終わってないというのはここだけの話。作業遅くて申し訳ない……。


 取り敢えず次回ですが、登場人物紹介を挟むかどうかってところです。挟まないなら第三章の幕間を書くか、第四章に行くか。なんにせよ明明後日辺りになりますので宜しくお願いします。

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