これが3だと思うのかい?
ふわあぁ。ねむすぎる。校長先生の話が始まって十分以上。よくそんな話持ちますね。私にその才能教えて欲しいです。
「えー今日は四年に一度の閏年ですが……」
まだ長そうだし、いらねぇだろそんな話。
あ、さっきレンに邪魔されて言いそびれたこと言っておこう。
実は昨日の夜ちょっとだけAWについて調べて来たんだよね
なんかAWにはいろいろ設定(?)があるらしい。
設定(?)って表記したのは向こうの世界の設定があまりにもリアルすぎて、設定に思えないんだと。設定にリアルとかあるのかは知らんけど。
本来ゲームっていうと、運営とかゲームを開発した人が、あらかじめプログラムした言葉しか喋れないけど、AWの世界のNPCは俺たち人間のように生きていて、一人一人に感情があって過去があるんだとか。
それで絶対2036年では不可能な技術だって騒がれてて、宇宙や異世界からやって来たものなんじゃないかとまで言われてる……らしい。
あと設定関連で向こうの世界の人は『NPC』じゃなくて『クロム』、プレイヤー達は『トラベラー』って呼ばれてるっぽい、わ
NPC…じゃない『クロム』は俺たちのことを、AWの唯一の神『グランディア』によって世界を変えるために連れて来た別の人類だと思っていて、だからログアウトしても、別の世界に帰っただけって思われているらしいっす。
らしいらしいばっかだけどごめんな。
ここまで全部wikiなんだ。
「これで校長先生の話を終わりにします。」
あ、終わった。案外脳内で会話してると早く終わったように感じているもんだね。なにか人間として大切なものを失う気もするけどこれからもやっていこう。
「これで終業式を終わりにします。次期生徒会長の黒崎さん。よろしくお願いします。」
「はい。全員起立」
その言葉に現実に引き戻され、三角座りをしていた状態から出来る限り背筋を伸ばして立った。
なんか三角座りとか体育座りとかいろんな呼び名あるよなこれ、クッションかなんかないとお尻が痛い。
ん、みんながゾロゾロと立ち始める中一人だけ立っていない者が…。
…はいレンくんでした。あとで花音さんにチクっとこ。
「あれー蓮くん?なんで寝てたのかな?
立ってない人って壇上からバッチリ見えてるんですよね」
「こ、ここここれはですね!マ、マリアナ海溝よりも深くエレベストより高いわけがあるんですよ姉御…」
「誰が姉御ですか…。で、お聞かせ願いましょうかその訳とやらを」
「……あ、今日すごい天気良いっすよね!」
「………………………」
「そうそう今日駅前のパン屋に新作できたんだって!」
「………………………」
式が終わって校門前で蓮を見つけて走って来たら、なにやらにっこにこで花音さんとお話ししてました。兄弟仲が微笑ましいことで。
うん俺の入る余地はないな、帰ろ。
さぁ明日のゲームが楽しみだ、、、
「あ!シュウ!一緒に帰ろうぜ!」
誰ですかその人。逃げ場を見つけたように俺のもとに駆け寄ってくる。
「も、もう、蓮ったら…秋冬くんが困ってますよ?」
そう優しく俺のことを心配してくれる花音さん。
…あれ、気のせいかもしれないんだけど、女の人に心配されたのが初めてかもしれないということに胸が………
「いやいやそんなことないから大丈夫だって!」
お前はもう喋んな。絶賛あんたのせいで困ってたわ
「「………はぁ」」「待って冗談だから!ちゃんと謝るから!二人してため息つかないで!!」
ほんとに賑やかな奴だなこいつ
しばらく蓮を中心にいつもの世間話か何かをしていた時、さっきからソワソワしていた花音さんが言葉を発した。
「……あ、あああああの!し、秋冬くん……あ、明日からほんとに一緒に遊ぶことでいいんですか……?」
顔を赤くして聞く花音さん。
突然の事でなんで答えればいいのかわからない俺。
それを生暖かい目で見守る蓮。
おい最後。
「あ、き、今日の朝にエリから一緒に遊ぶのOKって聞いて……。
本当に私となんかでいいのかなって思って……」
いつも上品らしく背筋を整えていた花音さんが、ちょっとだけ猫背になり視線と顔を落として、不安そうに聞いてくる。
そ、そそそそんな表情された事ないからこう言う場合、どうすればいいのか全く持ってわからないんですけど。
と、とりあえずなんか答えるべきだよな…?
で、でもなんて?助けを求めて蓮の方を見るとニヤニヤと嬉しそうな顔を向けてくる。
楽しんでる場合ちゃうぞお前。後で指へし折るから
こんなクソつまんない事考えてる間にも、時間が迫ってくる。
……まず、大丈夫ですと言うべきか。
「あ、は、ははははひゃい!!…大丈夫、、です…」
見事に声が裏返った。死にたくなってきた。
「……ふふっ!…あ、ごごごめんなさいお互い似た者同士だなぁってつい…」
ウ゛ッ゛ッ゛(急所)
…まあ笑ってもらえたのはいいんだけど、これ若干馬鹿にされたのか…?
「ふっふーん、よしよし二人ともあいさつが済んだようだし、明日のことについて話そーぜ!」
この気まずい状況から助けてくれたのは嬉しいけど、やるならもっと早くしろよ。あとふっふーんてなんだよキモいわ。
……指は一本ぐらいにしといてやるよ
それからレンが三人を引っ張って駅へと向かった。
「そうそう、始める国は『ブラスト』になったってことで…あ、姉ちゃんはAWについて調べた?」
「あ、うんもちろん調べましたよ。あんまりゲームとかやらないけど、ああいうものって見てるだけでも面白いんですね!」
「だろだろ!!そうだ、これを機に姉ちゃんも別のゲームで遊んでみない?」
「んーあんまり戦う系は遠慮しとこうかな…。
血とかまだ怖いし」
「えーそうなの?いいじゃん血」
ちょっと血だけを求めるのは俺にもわかんない
「ん…?じゃあ姉ちゃんAWでなにすんの?」
「なんか調べてみたら、支援職?とか料理人とかそういう感じの怖くない気楽なやつがいいかなって…」
「えー?姉ちゃん飲み込みクッソ早いじゃん。絶対戦ったほうがいいじゃん!
パズルゲームとか格闘ゲームとか一回ハマったら、たったの一時間で何時間もやってる俺のこと抜かすじゃん」
「……い、いやあれは別に姉より勝る弟なんていないだけだし……別にゲームに熱中してたわけじゃ無いから大丈夫…」
「なにが大丈夫なのかわかんないんですけど、色々酷くない?
あとそれだけの理由で必死に頑張っている弟を軽々しく抜かすのもあれだと思うんですけど」
「それほど弱かったってことだろ」「あぁん!?」
「ふふっ!はははは!」
突如狂ったように笑い出した花音さんを見て、俺と同じことを考えていたであろうレンと目が合う。
「あ、あああいやすみません…別に二人をバカにしてたわけじゃなくて、あのー…」
「あ、いや花音さんって意外と笑うんですね」
「そうなんだよなぁ、変なとこで笑うけど」
「ん?誰が変だってー?」
「いや変なとこって言ったんですけど聞いてます?」
「ははっレンまじでないわぁ。極刑もんですねこれは」
「ッスーーーーーお前まで敵に回る気なの?」
「ふふっやっぱり面白いね!あんまり学校ではこんな感じで話さないから、久しぶりに本気で笑ったかも」
「なあレンやっぱり変なとこで笑うな」
「だろだろ、昔からそうなんだよ。学校で一人はいる真面目そうだけど内心誰よりもふざけてるやつ。それが姉ちゃん」
「ごめんその例えわかんない」
「……」
小声で花音さんに聞こえないように話す。
「あの…バリバリ聞こえてるんですけど」
「「!?」」
「…….まぁその通りなのでなにも言えませんね。
昔からゲーム結構好きなんですけど、黒崎の人間らしく真面目にしてたら、ありもしない伝説残されてゲームしないってイメージになってるんですよね。
……あ、またすみません。一人で話しちゃって……」
なにか昔のことを思い出すように遠い目をしている。………でも、一つだけ言いたい。
「やっぱり変な人たちだな黒崎家」
「おい聞こえてんぞ」
あ、心の中で言ったのに漏れ出してたみたい
「で、でもそういうのって簡単にできませんよね、すごいと思います」
「あ、猫だ」
「おいごらレン、いいこと喋ろうとしてるのにぶった切んなおい。
…いやまぁ確かに可愛いけども!」
猫に駆け寄って、嬉しそうに花音さんが猫を撫でる
「で、でも、ありがとね!こっちの素の自分の方って家族以外に出さないから……。
そ、そうだ!明日のことについて話そ!ね!?」
あ、話変えるために大きな声を出したら猫が逃げ出した。
…これ見るからに悲しそうな顔してんな
「そうだな!まぁそのために集まったもんだし、でも話すって言ってもなに話すんだよ」
話すことはいっぱいあるはずなのに思い出せない。
三人で歩きながらしばらく考える。
「あ、あれじゃね?プレイヤーネーム」
「あー確かに。アバター結構違ってたらわかりにくいしなぁ」
「あ、それ完全に忘れてました。名前…ゲームであんま決めたことないですね…」
「んー俺は普通にレンかな」
「なんか千人ぐらいいそうな名前だな」
「む!確かに…誰もつけたがらない名前をつけよう!…レン二号!」
「言ったな。聞いてましたよねー花音さーん!」
「はいバッチリです」
「嘘ですすいません」
「あ!なら苗字とかつけたらいいんじゃないですか?ラストネームとかミドルネームとか…」
「らすとねーむ?」「無知かよ」
「……ラストネームっていうのはですね、 日本の名字みたいなものです。例えるならばレン・クロサキとかそんな感じの」
「あ!それいいかも!英語にしてみようぜ!!
じゃあ黒崎だと、ブラック…………」
なんで英語にすんだよ。
「うーんなかなか難しいですね…確か昔気になって調べたはず…ポイントとかその辺だった気がします」
「レン・ブラックポイント」
「だっさっ!」
「人の名前バカにしちゃいけないって習いませんでしたー?」
「名前じゃないし苗字だしー!」
「屁理屈かよ。友達減るぞー!」
「と、とととととトモダチ?ナニソレ」
「……………。っていうか英語の苗字気になって調べることってある?」
「おっとまた私いじりですか。二人も大概だと思いますね」
いやーこっちをジト目で見てくるのはやめてください。あいつが悪いんですあいつが
そうやってくだらない話をしながら三人で笑いながら歩く。
なんか、、、初めてこんな感じで帰った気がする。嬉しいけど同時に悲しい気持ちもある
「あ、もう駅に着いちゃいました…楽しかったですね!」
「ほんとだ、シュウとあんま帰る時間なかったし…部活があったからね部活があったから!
「強調しないで」
「冗談冗談、でも多分部活少なくなるだろうし!部活がない日は一緒に帰れるぜー」
「…いやぁ今まで一人寂しく帰ってたから自然と涙が…でもお前一緒に帰ってた友達的な人いなかった?」
「んーあれは舎弟的な?親友はお前だけだぜ!でも学校話しかけてくんなオーラ全開だったから一緒に帰れなかったけど」
「舎弟ってなんやねん。金持ちが。
あとあれ話しかけてくださいオーラ出してたつもりだったんですけど」
「そのオーラもだいぶ不思議だけどな」
「あ!あの私は生徒会の仕事がないときにでも一緒に帰らさせてもらえませんか……?」
終わるにつれて声が消え入りそうに小さくなっていく。
ははっ自分から言うの恥ずかしいよな〜
…
「あ…あ、はい別に大丈夫ですよ!こ、こっちもお願いします…」
あかん俺も同じだった。
話すことはもう終わったと思い俺が帰ろうとしたものの、レンがこっちを名残惜しそうな目で見てくる。
…………
………………
……………………
「秋冬くん?そろそろ時間では無いですか?」
「まっさかー、あそこで話してただけd「それデジャブなんだけど」
「ってか真面目にやばいじゃん!また明日な!」
「おう!あ、細かい話は夜に!」
「ああ!」
「今日はありがとうございましたー!それではー!」
レンと花音さんが手を振る。
そして急がないと間に合わん、走ろう。
ふぅ、時間前に改札の前に来ることができた…この分だと間に合いそうだな。
改札を抜けようとする。開きませんでした。
さて、ここで問題です。なぜ僕は券を挿したのにもかかわらず通れなかったのでしょうか?正解は…………
金が足りねぇからだよバカ!!!!!
間に合った…!なぜめんどくさくなってやめてしまったんだ過去の俺。
恨んでばっかだけどもう一回恨むわ過去の俺。
いつもよりちょっとだけ、いや何倍も心がほっこりしたまま電車に乗った。
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