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先ほどから大きな破裂音が馬車の周りで鳴っています。
魔物は音に驚いて追いかけるのを一度は止めます。しかし復帰するのが早くなっているようです。
むしろ馬たちが魔物と音に驚いています。
「どうするんですか。気のせいか数が増えてませんか。」
「これだけ大きな音がすれば、周りの魔物を呼び寄せるだろうな」
「冗談を言っている場合じゃありません。」
城を出てからろくなことがない。
私の幸せなんてのんびり暮らせればそれでいいのに。
物心ついた頃には王都は魔物に占拠されていた。
王族だったためそこまで貧しい暮らしではなかったが、私は農家のおじさんたちと畑を耕し、いつも汗まみれに働いていた。礼儀作法も一通り習ったが、ドレスよりも作業着のほうが落ち着く。
ムラ生活?大歓迎です。
「恨めしいです。」
「何が恨めしいんだ。」
「自分がですね。この状況で何も出来ない自分が嘆かわしいです。」
「こうなったら仕方なくないか。戦えないなら逃げるしかない。弱ければ負ける、そういうものじゃないのか。」
「運命に従えってことですか?」
「そういう考えもできるな。おっと弾切れだ。」
「!?他に何かないのですか。」
「とにかく走らせよう。」
道なりに走らせますが、少しすると左右後方と囲まれました。
「絶対絶命です。」
「こういう時は神に祈るべきじゃないか。ムーニィは巫女だろ?」
「豊穣の神に何を祈ればいいんですか。」
我が国の王族は神官の役割もあり、私は巫女の仕事もしていました。
しかし、私が仕える神は豊穣の神です。祈るなら私たちが食べられた後に良い養分になれるようでしょうか。
それに、
「神様なんていません。」
神がいるなら私たちはどうしてあんな思いをしたのでしょう。
「何か言ったか?」
「いえ。他所の信仰ではこういった状況を試練として受け入れるようですね。生涯をかけて仕えているのに、運命を変えてくれないのならむしろ怨みたいです。」
「ははっ、そうだな。」
笑うしかないです。もっとも乾いた笑いしか出ません。
「だけどな、運命は変わったみたいだ。」
すると、風切り音とともに周りの魔物たちが倒れていました。
ムーニィ
巫女 末娘 姫
モイス
非戦闘員