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没)神に祈る魔女  作者: 月風テフカ
その1
2/5

1-1

行き当たりばったりでどこまでいけるのでしょうか。

馬車は揺れています。


王都を抜けると、田園地と放牧地が広がっています。

あまり郊外に出たことがないので、はじめのころは景色をみているだけでも楽しいものでした。

けれども景色を眺めているのもそろそろ飽きてきました。

・・・勇者様は口数が少ないのでしょうか。勇者様から話しかけてくることはありません。


「勇者様、よろしいでしょうか」

「あぁ、どうした」

「少しお話をしたいのですが」


会話が固いのはそれほど勇者様との交流がないからです。

御者台に移動し、勇者様の隣に座ります。


「ずっと操車をされて大変ではありませんか。」

「慣れてるから問題ない。キミこそ大丈夫か?座ってるだけでも疲れるだろ。なんかあったら言ってくれ。」

「ありがとうございます、問題ありません。」


よかった。会話が出来そうです。


「勇者様のお住まいはここからかなり遠くと聞いています。どのようなところですか。」

「何もない村だよ。村人みんながのんびり暮らしている閑かな村だ。街が遠くて行商があまりこないから、村で作物を作り道具を作ったりしている。・・・ま、一般的な村と変わらないよ。」

「のんびり暮らせるのが一番だと思います。」

「そうだな」


私たちは勇者様の住まう村に向けて馬車を走らせています。

国外にあるとのことで、馬車だと時間がかかるそうです。

救国の報酬である私は当面はその村で暮らすようです。


のんびり暮らせるというのは幸せです。

もうツラそうな民の顔はもう見たくない。

そのような村なら私はそれほど不幸ではないのかもしれません。


「勇者様は、」

「その、勇者様って呼び方やめにしないか。俺は勇者って柄じゃない。」

「私たちの国を救ってくれた英雄ですので、相応しい呼び方だと思います。」

「とにかく名前で呼んでくれ。」


勇者様の名前を思い浮かべて、

なんだか名前で呼ぶのは恥ずかしいですね。


「モイス様」

「なんでしょうか姫様。」

「ズルいです。私のことは名前で呼んでくれないのですか。」

「姫様は姫様だろ。」

「もう城を出たので姫ではありません。」

「悪かった。ムーニィ。」


こうして話しているだけでも、満足できてしまうのはどうしてでしょう。名前を呼ばれただけなのに、とても嬉しく感じます。私は気づけなかっただけで、これから幸せになるのかも知れません。


「モイス様。気になっていたのですが。」

「どうした。」

「どうして、魔物討伐の褒美にお姉様達ではなく、私を選んだのでしょうか。その、モイス様とはほとんどお会いしていませんでした。」


モイス様とは、魔物の討伐後の祝勝パーティで初めてお会いしました。その時も挨拶程度しか会話していません。


「あぁ。・・・少し言いにくいんだが。知りたい?」

「お願いします。」 


モイス様は言いたくないようです。

恥ずかしいことなのでしょうか。


「俺がいま暮らしているところの主がキミを欲しがっていて、それで今回の魔物の討伐をしたんだ。魔物の討伐も最初からキミが目的だったんだ。」


みんなが幸せになりました。ですが、やはり(元)姫だけは幸せになれないようです。

モイス 勇者

ムーニィ お姫様

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