終業式
夏が来ると不意におもいだしてしまう。何故か懐かしいような、くるしいような、せつないような。まるで自分の好きだった物語が終章を迎えてしまった時のような不思議な感覚。
「夏休みだからといって羽目を外しすぎないように。」
そんな聞きたくもない校長先生の話を聞き流し今年の夏は何をしようかと考えていたがどうせ部活、部活、部活で夏休みと言う名の地獄が待っているのを思い出し深くため息をついた。
「類! ほんとあの先生話長いよなぁ。暑くて居眠りもできねぇよ。」
同じクラスの佐々木寛太が額の汗をぬぐいながら話しかけてきた。
俺(安曇類)はサッカー部に所属している普通の高校2年生。俺に声を掛けてきたのは佐々木寛太、小学校からの親友と呼べる友人だ。
「本当だな。誰も聞いてないのによくもあんなに長々とは話せたもんだよな。」
「でも、やっと夏休み始まるなー。今年こそ一緒に海行こうぜ! んで、川も行って、プールもいこう! 同じクラスの女子でも誘って遊びまくって夏休み満喫するぞぉ!」
「あのな、帰宅部のお前みたいに毎日暇ってわけじゃないんだぞ。3年最後の大会もあるし。てか、お前そんなに泳ぎたいのか。」
「やっぱキツイかぁ、サッカー部ほんと休み少ないもんな。」
「わるいな、また暇なときがあれば連絡するよ。」
そんな適当な会話を交えながらクーラーの効いた教室へと足早に帰った。
俺も好きな事を好きなだけしたい。何故か自分の好きなサッカーに打ち込むだけでは何か足りない気持ちがあって時折やるせない感情が湧いてくる。
「じゃあ先帰るわ。また夜に連絡するから。部活頑張れよ!!」
「サンキュー」
寛太とそんな会話を交わし更衣室へと足を運んだ。
なんだか脚が重い、強い日差しと昨日降った雨のせいかとてもジメジメしている。行きたくないな、今日はサボろうかな。と、更衣室を後にしようとしたら
「おい類!どこへ行くんだ早く着替えてゴール運べ!」
キャプテンの中沢太一だ。最悪のタイミングだと思いながらしぶしぶ更衣室へ向かおうとした。
「お前まさかサボろうとしてたんじゃないだろうな。」
さすがキャプテンとても鋭い。
「練習前にトイレに行こうとしてました……」
慌ててその場しのぎの嘘をついてしまった。
「カバンをもったままか?」
「あ、」
すぐさまバレた。
「はやく着替えろよ。今日からランメニューも多くなってくるからな!」
「げっ、この気温で多くするって死人も多くする気ですか?」
「去年もなかなかの地獄だったからな。今年は人数が少なくて控えがいない分しっかりスタミナつけて最後まで最高のパフォーマンスを出来るようにしないとダメだろ? あと、お前はサボろうとしたから2倍な。」
「本当に死にますよ。」
うちの部は3年9人2年6人1年5人マネージャー4人で活動している。人数ギリギリという訳でも無いが初心者が多いため試合で使われる人数が限られてくる。
それにしてもこのメニューいつまで保つのだろうか。これ以上部員に辞められたらもっとランメニューが増える。確実に死ぬ。そんな事を考えながらダラダラと着替え始めた。
「よぉし、それじゃあ練習はじめるぞ!」
「オォォォォーーーー!」
憂鬱な練習が始まるのとは裏腹に気合の入った掛け声と共に俺のみじかい夏は幕を開けた。




