妹とは違う存在 1
『ピピピピピ』
覚ましの音で俺は目覚めた。妹はやっぱり帰ってきていなかった。
「今日は俺が洗濯か」
そう言って、妹の部屋から出た。洗濯籠の中には、妹のパンツがあった。僕は、しばら く、ジーっと見つめた後、そのパンツを手に取り、類ですりすりし、匂いをクンかクンかし ました。ちょっと湿っていた。自分がしてはいけことをしてたことに気づいたのは、そのちょっと後だった。
「何してんだ……俺は。別にこんなことしたかった訳じゃないのに」
数時間たっても俺の奇行は続いていた。
妹のブラジャーを探し出し、自分の胸に付けてみる。
「割と……似合う」
誰かに操られている。そうに違いない。しかし俺は結局今日一日、妹の洋服を着て過ごしてしまった。
明日は高校の入学式 なのに、俺はそんなこと全然頭にはいっていなかった。もちろん明日、妹が帰ってくることもな。俺は妹の部屋で、妹の服をきて、寝てしまった。この光景を一般人にみ せたら、どう思うのだろうか。普通の兄妹って……なんだっけ?
そもそもなんで普通っていう概念があるのだろうか。俺がその突然芽生えた思いを変えなければいけないのは、世間が見てくれないから。普通の兄妹でいたい気持ちもある。でもそれだけでこんな気持ちをずっと我慢しなければいけないのか。俺はそれも嫌だ。昨日、その気持ちを抑え、隠し通そうと思ったのに……今の俺は、抑えられないほど強い気持ちがある。
俺は自分でも不思議に思うくらい、妹のことが好きであることに違和感がなくなってきていることに気づいた。
今日の夢にも妹が出てきた。いつも見ているような夢だ。夢が記憶に残る。俺のこの謎の気持ちとなにか関係があるのだろうか。
『ピピピピピッ』
「お兄ちゃん! 起きて!」
うわぁ妹が俺の上に全裸で乗ってるよぉ。俺はまだ夢のなかにいるんだぁ
「お兄ちゃん!」
うるさい目覚まし時計とまぶしい朝日、そして可愛い妹の声で俺は目を覚ました。乾いた目をこすり、目を開いた。そして、一番に目に入ったものがあった。そうこれは、 妹のおっぱいだ。妹のおっぱいはそこまで大きくはなかったが、成長が見込めるものだった。
「なあ、リリィ。胸大きくなったなぁ」
起きて最初に言った言葉がこれ。そして、妹は笑顔に言った。
「そんなことないよ、お兄ちゃん!」
可愛い。可愛すぎる。妹がこんなにも可愛く見える。
「なあリリィ、服着なくていいのか?」
おとといからの謎の気持ちが続いてることもあって内心喜んでる。でも耐えろ。平穏な日常を失っていいのか?
「ねぇお兄ちゃんこれ私の服だよ?」
あ……
「え……あの」
「いいよ、お兄ちゃん」
「え?」
俺は昨日、妹の ベットで、妹の服をきて寝た。早朝に妹が帰ってきて、俺のこの光景をみられたんだ。普通だったら絶望的な状況で、妹に気持ち悪がられているぱずなのに、現実はそれと全然違かった。妹が全裸になって、俺の寝てるところにまたがり、くっついていたのだ。なぜだ。裏でもあるのか。
「お兄ちゃん、私に、お兄ちゃんに言いたかったことがあったんだ」
「え、あ……」
「私、お兄ちゃんのこと、好き」
俺は嬉しかった。多分こんなに嬉しいと思ったのは生まれて初めてかもしれない。俺はダメなやつだ、少なくても世間からみたら。でも俺はそれに答えるように言った。
「俺もリリィのこと、好きだよ。リリィがいない二日間、俺は寂しかった」
「お兄ちゃん、暖かいね、布団」
「あぁ、リリィ。そうだリリィ、朝ごはん作ってよ。リリィのご飯が食べたいな」
妹が笑顔で台所に向かった。その笑顔に裏があるかもしれないという不安がないわけではだい。妹が二日間も何してたか分からないのも怖かった。しかし、リリィはそばいいる。それでいいじゃないか。
こうして、俺とリリィの新たな日常がスタートした。
「リリィ、さっきのもう一回言って!」
「うん、お兄ちゃん大好き!」
妹が風呂からあがり、俺は残り湯を堪能できる。俺は言った。
「リリィの使いたてバスタオルつかっていい?」
「もちろんいいよ、お兄ちゃんに使ってもらって嬉しいよ」
その後、妹は裸エプロンで朝食を作り始めた。やっぱり妹は料理が上手い。どうしたら、 こんなに上手くできるんだろう。妹の調理姿はいつもより、ドキドキした。
「ふーん、今日は和食か……」
「違うほうが良かった?」
「そんなわけないよ!俺は妹の料理ならなんでもおいしいよ!」
朝食をとり終わると、学校に行く時間になった。
「お兄ちゃん、最後にアレ、してほしい……」
「ちゅっ」
俺は妹のおっぱいにキスをして、家を出た。家をでたら、ドアの前に女の子がたっていた。
「ええっと、ヒナ……?」
ヒナの本名は結城 ひな。小学六年までずっと一緒に遊んでいで、いわゆる幼馴染ってやつだ。でも、中学になってからいそがしくなってしまい、一気に関わり合いが途切れてしまった。そう、今この状況は三年ぶりにヒナと再会したってことになる。ヒナは、あの時よりずっと大人らしい見た目になっていて、落ち着いていた。俺は今、とても気まずい。ひなはこっちを見て、笑顔で言った。
「一分の遅刻だよー」
「俺はつい、言い返してしまった。
「別に待ち合わせなんてしてしてねーし。それに、一分とか遅刻のうちに入らないだろ」 「いいじゃん、そんなこと。それより、高校一緒になったんだってねー初めて知ったときは びっくりしちゃったよ。一緒に学校行かない?」
なんだろう、初めて顔を見たときの気まずさはどこかに消えて、まるで昔に戻ったみたいな感覚になった。人って、見た目は変わっても、心は変わらないんだな。俺はヒナと一緒に学校へ行くことにした。
「こうやって一緒に歩くの久しぶりだね」
俺はひなに話しかけた。しかし、ヒナは急に俺を置いて走り出してしまった。前には俺たちと同じ制服に人がいた。
「ねぇ、君も一緒に学校行かない?」
「嫌」
その人はそう言って走り去った。
「おい、ヒナ? 大丈夫か」
俺が追いかけて言った。
「うん、私は平気」
「なんで、あの子に話しかけたの?」
「ううん、何でもない。ただ、ちょっと気になったんだよね」
まぁ、あんなにガッチリした女の子? がいたら、誰でもきになるか。そうやって俺は、自分で今の状況を解決させた。
学校はやっぱり綺麗だ。初等部、中等部、高等部が全てそろっていて、これまで沢山の 『成功者』を作ってきたという伝統がある。学費もここは飛びぬけて高い。こんな高い学費 を全部負担してる俺の親戚には感謝しきれないよ。ちなみに、妹はここの初等部だけど実は か 不登校なんだ。そう考えると、親戚は膨大は学費の三分の一くらいを無駄にしている。このことに対して、俺の親戚はどう思っているのだろうか。後々、自分に降りかかってこなけれいいけど。高校の水泳部はどんな雰囲気なんだろうか。それ以前に、仲の良い友達はでき るのだろうか。俺は、入学式場の体育館に入るまで、いろいろなことを考えていた。入学式 は平凡で、俺は眠くなってしまい、うとうとしていた。そして、入学式が終わると、教室に 入った。なんだか新鮮な空気、俺は辺りを見渡した。
「ヒナ! 同じクラスだね」
「ああ、そうね」
「俺はとっても嬉しいよ。ヒナも俺と同じクラスで嬉しいだろ?」
「べっ別に、あんたなんかと同じクラスになったからって、全然嬉しくないんだからねっ!」
ヒナはなぜか、ツンツンしていた。でも俺はヒナのツンツン姿を可愛いと思ってしまった。そして、さらによく見ると、さっきヒナが話しかけた銀髪のガッチリした女の子? もいた。俺はすかさず、名簿を確認した。
「えっと、あった。タドゥクォーロ・レイナ」
それが、あの子の名前らしい。外国人みたいな名前だった。こうして、初日の学校の活動 が終わり、下校の時間になった。そしたら、ヒナが寄ってきた。
「ベっ別に、あんたなんかと一緒になんて、帰りたくないんだけど、今日ぐらいは友達もい ないだろうし、一緒にかえりたかったら一緒に帰ってあげてもいいんだからねっ!」
周りが、俺とヒナに注目した。俺はなんか恥ずかしくなったので、ヒナの手をとり、学校の外まで、速足で連れていった。そして、校門を出てるうちに、俺はなんとか落ち着いた。
「痛いよ、遠野君!」
俺はすかさず手を離した。
「ご、ごめん」
それから少し間をとってから、俺は聞いた。
「なぁ、さっきのあのロ調は一体なんなんだ?」
ヒナは申し訳なさそうに言った。
「ごめんね。私、遠野君と二人きりの時は、普通なんだけど、みんながいる前だと、どうしてもあんな感じになっちゃうの」
俺は少し安心した。ヒナのことを、今日一日だけでかなり知ったんだなと思った。
「嫌な思いしたよね……」
ヒナが、少し寂しそうにいった。俺は慌てて答えた。
「そんなことないよ。それに、ツンツンしてるヒナだって可愛いよ!」
ヒナはちょっと照れていた。でも、すぐにいつもの顔に戻した。
「今日の朝から、私のツンで嫌われるんじゃなないかって凄い心配したんだよね」
「俺は、また心がほっとした。朝のヒナのあの様子は単なる俺に対することだったとわかったからな。
「俺がそんなこと思う訳ないさ」
ヒナは辺りをちょっと見渡した後、俺に向かって言った。
「ちょっと、人気のない路地裏に来てくれない?」
そう言って俺の服の袖の部分をつかんで、狭い路地へ入っていった。近い。近すぎる。ヒナの吐息が俺の首筋にあたっていた。腕には、ヒナの胸が当たっている。
「あ、あの……私ね、遠野君の事が好きだったの。ずっと言えないでいた……」
俺は驚いた。まさか、三年ぶりに再開したばっかの子に告白されたなんて。俺は何をすればいいのかわからなくなってしまった。でも告られたのは確かだ。
「お、俺でよければ、よろしくな」
「明日からあんたは、私の彼氏なんだからねっ」
そう言ってヒナは走り去っていった。今からじゃないのかよ、と突っ込みたくなった。ヒナのあんな顔、初めて見たかも…… まったく俺のどこがいいのか。俺は今朝、妹のおっぱいにキスをしたことを思い出した。勢いでしてしまったのか……いや、そうでもないな。俺は妹が好きで好きで仕方なかったはずだ。しかし何故だろう。今は別にそうでもない。っていうか、リリィの存在自体忘れかけてたような。いや、さすがにそれはないかな……
ヒナに告られた時からのこの気持ち――今は……ヒナが俺の胸のとこにある。あぁ、でもまた家に帰ったら妹が……リリィのことが……
ふと思いついた。家では妹とエッチなことをたくさんして、学校ではヒナといちゃいちゃカップルで過ごせばいいじゃないか。そうだよ、これはおれにとって素晴らしい状況。だっ て、ヒナとリリィが対面するこなんてないんだから。俺の家にヒナを入れない限りは大丈夫 大丈夫。いやそれはさすがに罪悪感があるな。そうやって考てる時、一つの単語を思い浮か べた。
『ノンケ』ん? ノンケってどういう意味だっけ。えっと確か異性愛者のことだったような。日本人のノンケって辛いよな、愛する人を一人にきめなちゃいけないんだから。そうしないと、相手が傷つくからって。そもそも俺は告白の承諾という自分のしたことが正しかったのだろうかそして 俺は叫んでしまった。
「なんで俺はノンケなんだ!俺をホモに目覚めさせてくれー」
なんでこんなこと叫んだのか、自分でもわからない。まあ、さすがに俺ホモには目覚めないだろ、ないない。
その時、シュシュってカーテンの閉まる音が聞こえた。俺は、今の声をこの家の人に聞か れたんじゃないかって不安になり、慌ててその家の表札を確認した。そこには……『名門の家 タドゥクォーロ』と書かれていた。
タドゥクォーロって、あの銀髪のガッチリした女の子? じゃないか。俺はショックだった。だって同じクラスの女の子? に今のセリフを聞かれたんだから。 俺は最悪な気分でショボショボと家に帰っていった。明日、誤解を 解いてやるんだから。