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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
トリアートと過去と復讐
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マイトの竜退治1

お留守番のマイトが今回のメインです。

 トリアとリズリットがリローネに向かった後、ベルベックの街ではちょっとした問題が起こっていた。

「竜がね、出るらしいの」

 ハンターギルドの一階、いつも『救いの手』の面々が集まっているテーブルに、今日はマイトしか来ていない。そんな彼の目の前には、困った顔のルーシーがぼやくようにテーブルについていた。

 普通トリアやフリーダであれば、そんなことを言いながらやって来た彼女に対して、少しは警戒心なり、トラブルを感じ取って、頭を働かせるものだ。しかし残念ながら、今問題に直面することになりそうなのは、『救いの手』でも一・二を争うほど頭脳労働の苦手なマイトだった。

「受付の仕事はどうした?」

 案の定、平素と同じような表情でサンドイッチを頬張るマイト。

「それは大丈夫よ。今は休憩時間だしぃ。こんな時間にギルドにいるのは、今日はすることの無い暇人くらいよ」

「それもそうだな」

 時刻は既に昼前、クエストボードに貼られる依頼は、目ぼしいものは朝早くのうちに持っていかれている。その為、ほとんどのパーティーは街から出ているらしく、ギルド内も閑散としていた。

 マイトとルーシーを除けば、若手ハンターが数人、テーブルで何事か話しているだけだ。

 そして彼は、ルーシーに自然と「暇人」にカテゴリー分けされていることに気が付いていなかった。

「それでね、竜が出るらしいの」

 マイトの反応の無さに、ルーシーが困った表情で先程の言葉を繰り返す。それなのにマイトは興味を引かなかったようで、「へぇ~」なんて頷いていた。

 思わずたじろぐルーシー。

 これがトリアやサイトであれば、普段から彼女に対して便宜を図ってもらっている手前、少なくとも話だけは訊いてくれるだろう。

 しかし相手はマイトだ。

 パーティの中での彼に対する評価と言えばミアなら『馬鹿』、トリアなら『戦い一筋』、そしてフリーダなら『脳筋』と言ってのけるだろう。

 お人よしなサイトとトリアのような反応を期待するだけ無駄というものだった。


 そこで、ルーシーは方針を変えることにする。マイトにはマイトに対する話の展開が必要だ。

「ところでマイト君、ティルメシアさんのところに言っていたサイト君たちから手紙が届いているんだけど、マイト君が預かってくれないかな?」

「サイトたちから?」

 ルーシーは自然な流れで手紙を手渡す。

 彼女も事前に手紙の内容は把握しているし、宛名はトリア向けだったので、彼が帰ってからでも大丈夫だと思っていたのだが、使えそうなものは全力で利用するのが彼女の信条だった。

 手紙の内容はサイトを除く四人が、ティルメシアの元で数日修行すること。その為、ベルベックの街に戻るのが数日遅れることが書いてある。

 その手紙を読んだマイトは「じゃあトリアに渡しておくか」なんて言っていたが、そんな彼に対してルーシーは即効性のある言葉を口にするのだ。

「凄いよね。実績のある魔術師さんの修行だなんて。エレクちゃんとかミアちゃんはともかくとして、カイゼルさんほどの実力のある人が修行したら、どれだけ強くなるか想像もできないよ」

「え……?」

 きょとん、と何を言われているのかわからないと言った様子のマイト。そんな彼に対して、ルーシーは微笑みながら追撃を仕掛ける。

「だって……、そうでしょ? 今までもCランクハンターとして腕を磨いてきたのに、そこにサイト君の先生の指導まで受ければ、実力なんてメキメキ上がるんじゃないのかな~。今まではマイト君と同じくらいだったけど、あっという間にもっと強くなって帰ってくるかもねぇ」

「あの野郎! こうしちゃいられねぇ。俺も修行しねぇと!」

 単純なマイトの事。少し煽られただけで、大剣を手に、今にも走り出しそうになる。そんな彼に、ルーシーはにんまりと笑うと、悪魔の笑みで囁くのだった。

「だったら、修行の一環として、竜なんか手頃な相手じゃないかなぁ。最近、Dランクの森に竜が出るらしいんだけど、興味無い?」

 こうして、彼女はまんまとマイトに面倒事を訊かせることに成功したのだ。


 ………………。


 竜――、魔物の中でも一線を画し、肉体としての強さと高い魔力を持っている。

 そんな彼らにも様々な種類があり、知性は乏しいが腕力や破壊力に優れている固体や、高い魔力を使って様々な魔法を行使する固体など、数十種類にも分類される。

 最上級種ともなれば、数百年以上の生きると言われている古龍や、高い知能と社会性をもった竜族なども竜種に分類される。

 もっとも、一般的にハンターギルドで話題に上がるのは、知性が無く、人や街に対して脅威になる固体。地竜や翼竜、もしくは群れで行動している狗竜などがあげられることが多い。

 しかし、今回ルーシーが持ってきた話では、問題の竜に対しての情報が圧倒的に足りていなかった。

「最近ね、Dランクの森に竜が出るらしいの。森の木とかを薙ぎ倒しながら、暴れまわっていているらしくて、主に森で狩りとか採取をしている新人さんとか小さい子たちが危なくて森に入れないのよ」

「そいつは大変じゃないか。俺たちみたいにパーティ依頼を受注できるなら兎も角、採取依頼で生計をたててる奴なら、生活に直結するだろ」

 マイトの言葉にルーシーは頷く。

「実際、森に入れない子達が多くなっちゃって、荷物の運搬や護衛依頼なんかで生活しているらしいんだけど、数に限りがあるでしょ? 当然、全員にいきわたる訳は無いし。それだけだとやっていけないのよね。だから、何人かの若手ハンターがギルドに集まったりしているらしいんだけど、ほとんどが良くてDランク。EランクとかFランクまでいて、とてもじゃないけど竜の討伐なんて任せられないの」

「そりゃそうだろうな。竜の相手とか、俺だって地元の闘技場で数人がかりで竜と戦っている大人を見たことがあるくらいだ」

「でも、生活の為なら討伐するしかない。放っておいたら、依頼とか関係なしに大勢で討伐に行きそうなのよ」

「DとかE・Fの奴らが束になっても敵わねぇだろ。最悪、死人が出るぞ」

「でしょ? だから高ランクのパーティに依頼をお願いしたいんだけど、Aランクパーティは遠征に行っていて数日は帰ってこれなさそうだし、いつも頼りにしているサイト君はティルメシアさんのところに行っているでしょ。それで困っていて」

「ん……? それならBランクの奴らに依頼すればいいんじゃないのか? 一組で不安なら、二・三組みでの合同依頼にして、多人数で退治すれば――」

「そうなの! そこが問題なのよ!」

 喰い気味に、ルーシーがテーブルを叩いて声を荒げる。

「普通ならマイト君が言ったみたいに対処するんだけど、今回は森に出るようになった竜に対しての情報が圧倒的に無いのよ。新人の中には竜を見かけた子もいるんだけど、なんだか黒い靄のようなものを纏っていて、竜の姿をハッキリと見ることができなかったらしいの。わかってるのは、竜で地面を四本の足で歩いて、尾や爪の破壊力が凄いってことくらいなのよ」

「ほとんどわからないってことだろ、それ。それに黒い靄? やばそうなことこの上ないな」

 マイトも靄をまとった竜などと言われてもピンとは来ない。サイトやトリアなら違ったかもしれないが、ギルドにも前例などの情報が無いらしい。

「討伐相手が竜っていうのは間違い無いのか?」

「それも確定情報じゃないのよ。見たのは一人や二人じゃないんだけど、種別も判別がついていないのよ。見た子達全員が口をそろえて竜が森で暴れてるって口にしていても、新人や若手の子たちの情報だけじゃあ、ギルドとして確定はできない。裏付け調査が必要なのよ」

 討伐対照が確定できない以上、依頼としてクエストボードに貼るわけにはいかない。危険度もわかっていないのに、依頼として成立させられないからだ。こうなると討伐の為のうつ手がなくなるし、討伐出来ない以上、若手のDランクの森への立ち入りを禁止せざるをえない、というのが今の状況のようだった。

「おまけにね、こんな危険そうな依頼をまわされるのを嗅ぎとってか、ベテランぞろいのBランクのパーティーが、ギルドに顔も出さないのが数日続いているのよ」

「おいおい……。何か? それじゃあベテランは揃ってばっくれてて、若手がわりをくってるって訳か?」

「情けないことにね」

 ルーシーは肩を落として嘆息する。

 もっとも、ハンターだって依頼をこなして生活しているのだ。危険そうな依頼なら回避するだろうし、今回のような案件を任されて、重傷を負えば、自分たちの生活が危なくなる。

 自衛の為にギルドに顔を出さない彼らを、情けないとは思いつつ、糾弾や非難はできない。

「マイト君にお願いしたいのはね、討伐って言うよりは竜の正体の判別が主なの。ある程度の危険度がわかれば、依頼として成立するし、相手の正体がわかれば、依頼を受注してもいいっていうパーティが出てくるかもしれないでしょ」

「なるほどな。それくらいなら俺一人でもできそうだな」

「そうでしょ。でもね、遠目に見ても靄の所為で正体はわからないみたいだし、ある程度の距離まで近づかなきゃいけないと思う。襲われるかもしれないし、もしかしたら戦闘になるかもしれない。それでもお願いできるかしら?」

「危険はわかってるよ。だがな、『救いの手』は困った奴らを見捨てないし、何よりカイゼルの野郎に先に行かれるのは我慢ならねぇ。これも修行の一環だと思って、なんなら正体不明の竜とやらに一撃かましてやるよ」

 マイトはそう言うと愛用の大剣を肩に担ぐ。

 そして彼は正体不明の竜の正体を探る為、Dランクの森へと向かうのであった。ただ、別のテーブルに集まっていた若手ハンターたちの視線にはまったく気が付いていなかった。


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