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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
トリアートと過去と復讐
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ティルメシアの修行・フリーダの場合

久しぶりにフリーダさんです。

転生者を育てた者、からの続きになります。

「あははははっ。どうした、スピードが落ちているぞ!」

 ティルメシアの笑い声が洞窟内に響き渡る。

 そして、洞窟内には『アイスニードル』や『火球』などといった攻撃力の低い魔術の魔法陣が、所狭しと展開され、それらの魔法をかいくぐりながら、フリーダは洞窟内を逃げ回っていた。

 フリーダはいつものメイド服の上に、黒い外套を羽織っている。

 ある時は外套で魔法を防ぎ、かいくぐり、休むことなく走り続けることによって、全ての魔法を避け続ける。それが彼女に与えられた試練だった。


 ティルメシアに修行をつけてもらうようになって早一週間。

 サイトを除く、エレク、ミア、カイゼル、そしてフリーダの四人は、それぞれに課題を与えられていた。

「どうして私まで……」とぼやいていたのはフリーダだ。

 元々、彼女は戦闘が本分では無い。パーティの運営や各種事務手続き、資産運用などマネージメントの為に所属しているにすぎない。一応、ギルドにハンターとして登録してライセンスこそ取得しているものの、彼女のランクは最低のFランク。ハンターとしての活動など想定すらしていなかった。

 しかし、カートリア聖公国に向かうにあたって、『鑑定』を使えるフリーダが同行しない訳にもいかない。ましてや『光滅の書』に関係する可能性があるなら尚更だ。

 とは言え、同行する以上は危害が及ぶ可能性があるので、最低限の自衛の手段は必要。

その為にティルメシアによって防御や回避、逃走手段、情報収集などの底上げを強要されていた。

逃げ続けること数十分。ようやく魔方陣の展開がおさまり、フリーダは岩影でへたりこむ。

そんな彼女に、汗一つかいていないティルメシアがニヒルな笑みを浮かべて近づいて来る。一般的な魔力しか持っていないにも関わらず、無尽蔵に連射ができるあたり、彼女も充分、化け物じみていた。

「これでは身体がもちません。一体、いつまでこんなことを続けるんですか?」

「何だ、不服か?」

「あたりまえです」

 少ない休憩時間にフリーダはティルメシアに詰め寄る。だが、彼女はニヤニヤと笑みを向けるだけで、その切れ長の瞳でフリーダを観察でもしているようだった。

「まあそう言ってくれるな。これでも、君の訓練には気を使っているんだぞ。使っているのは初級魔法だけだし、何も相手を倒せと言っている訳でもない。加えて、その外套やいくつかの『マジックアイテム』を渡しているではないか。それらを使いこなせば、初級魔法の十や二十、どうってことは無いだろう?」

「それは感謝していますが……」

 フリーダは反射的に身に付けた『マジックアイテム』に手を触れる。指先に白銀に光るブレスレットのひんやりとした冷たさを感じる。

 渡されたのは黒衣の外套やブレスレットだけでは無い。左手にはモスグリーンのくすんだ手甲。いつも付けていたカチューシャの代わりに、今は真っ白な翼型の髪飾りをつけている。

「それらは戦闘の能力はほとんどない。しかし、パーティー内での君の役割を広げ、能力を最大限に活かせるようになるだろう」

 そう言うとティルメシアは優しくフリーダの髪をかき上げ、彼女の頬に手を添える。

「何より、私は君のような可愛い少女が傷つくことが我慢ならない。その為なら、その程度の道具は惜しくはないよ」

 そんな彼女の言葉にフリーダは危険を感じて胸の前で腕を組み距離をとるが、そんな仕草もティルメシアにとっては可愛い姿になるようだった。頬を染めながら、より笑みを広げていた。

「休憩はこのくらいにして、修行でも何でも続けますよ。魔法のの中を走り回るのはもう嫌ですが」

 フリーダは土埃をはらうと、更に距離をとるように洞窟内を歩き始める。ティルメシアは少し残念そうにしていた。

「まあ、君の意見はもっともだ。この修行も、もう佳境といったところだな」

「それは何よりです。それで次は何をするんです? 中級魔法の嵐の中でも走るんですか?」

「それも魅力的だが、残された時間も少ない。次の機会としよう」

 ティルメシアの言にゾッとするフリーダ。

 今更ながら、サイトが会いたがらない理由を感じ取っていた。

「少し早いが、今日のところは切り上げるとしようか」

「もうですか? いつもなら、まだ氷の槍とか炎の矢を降らせている最中だと思いますけど」

「ははっ、ちゃんと加減はしていただろ」

 どこがですか、と恨めしそうな顔をする。が、ティルメシアを喜ばせるだけだと悟ったのか、フリーダは何も言わず、彼女の次の言葉を待っていた。

「別に大したことはない。充分な休息をとって、君にもそろそろ卒業試験を受けてもらおうと思ってな」

「私もですか」

 フリーダは目を丸くする。

「そうだ。サイトは例外として、カイゼル、ミア君も試験は合格している。次は君の番。ただそれだけのことだよ」

「そうですか。試験を受ければ、この修行も終わり、ということですよね?」

「勿論、合格すればの話だがね」

 ミアはじっとティルメシアをみるが、彼女は涼しげな表情で視線を受け流している。最初からフリーダの意見は求めていないし、試験は決定事項のようだ。

「わかりました。それじゃあ、また明日」

「あぁ。明朝、洞窟にくるように」

 踵を返し、フリーダはティルメシアの家へと戻る。フリーダ以外はまだ修行の途中なのだろう。家は誰もいないようで、シンと静まりかえっていた。

 先に用意された客間のベッドに体を投げ出す。天井を見上げながらぼうっとしていると、少しずつ意識が遠くなる。抗いもせず、そのまま睡魔に彼女の意識はのまれていった。


 ………………。


 夢を見ていた。

夢はフリーダが初めてティルメシアと対峙した時、『救いの手』の面々が幻想魔法にとらわれた時の夢だった。

 フリーダも例に漏れず、ティルメシアの魔法にとらわれ、自分以外の全員が撃破される幻を見せられていた。

「君に戦闘力は無いのだろう? 降参したまえ」

 ティルメシアの言葉に間違いはない。自分には戦闘力は無いし、状況を打破することもできない。しかしフリーダは敗北を認めることはできなかった。

「こんな時、トリアさんなら――」

 そう呟きながら、自分のもつ『鑑定』で少しでも反撃のきっかけを模索する。そうして見つけたことは、他のメンバーの誰にも、『鑑定』が働かない、打つ手が無いという事実だった。

「どうした? 降参以外の選択があるのかね?」

「そうですね……。敗北を認めれば楽にはなれるのでしょう。でも諦められない理由もあるんですよ」

 ベルベックに残してきたトリアのことを思い出す。

 最初は打算だった。彼にハンターを辞めさせることが、自家のマキュレイ商会や父の為になる。そう信じて、彼女は彼に近づいた。

 しかし、同じ時を過ごすうちに、徐々に彼に惹かれている自分にも気がついていた。

 ただ一途に、真剣に足掻き続けるトリア。フリーダは、そんな彼の助けになりたいと思ってしまったのだ。

「惚れた弱みって奴ですね。例え可能性が無かったとしても、私が諦める訳にはいかないんですよ」

 石にされてしまったカイゼルの剣を手に、フリーダはティルメシアに切りかかる。

 当然、彼女の攻撃など、ティルメシアに通用する訳は無い。易々と剣を避け、逆にフリーダを弾き飛ばす。

 地にはね飛ばされながら、フリーダは受け身をとり、今度はエレクの使っていた杖を手に殴りかかる。

「そうまでしてでも通したい思いがあるのかね」

 答えは決まっている。だから、杖を片手にフリーダは言い切ったのだ。

「トリアさんと一緒にいたい、それ以外に理由なんかありません! 彼が復讐を忘れられないのなら、私が彼の復讐をマネージメントすればいい。彼の気持ちが誰かに向いていたとしても、絶対振り向かせてみせます。その為には、こんなところであなたに負けてはいられないんです!」

 フリーダの切った啖呵に、ティルメシアは思わず破顔する。

 こんなにも思われているトリアに興味を持ちながら、ティルメシアは戦い続ける。

 そしてフリーダはついに、彼女が幻想を解除するまで、無謀な戦いを挑み続けたのだった。


 ………………。


 翌朝、フリーダは約束の時間の少し前には、ティルメシアの待つ洞窟にやって来ていた。既に彼女は杖を片手にフリーダを待ち受けている。

「何かあったのかね。随分とスッキリとした表情をしているな」

「えぇ、少し夢を見たんです」

「夢ね。リラックスできたようで、何よりだよ」

「思い出すだけで赤面ものですけどね」

 フリーダの言葉に二人は顔を見合わせて笑みを浮かべる。

「さて、そろそろ試験を始めようか。準備は万端だろう?」

「勿論です」

 ティルメシアは杖を掲げ、光が洞窟内を照し出す。フリーダは外套の中で握った手に力を込める。そして、彼女の意識は光の中に吸い込まれていった。

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