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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
トリアートと過去と復讐
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弓矢のように2

 林を切り裂いて僕たちは走り出る。

 木々を抜け、開けた場所で僕たちが目にしたのは、岸壁を背に一人の少女が三人の男に取り囲まれている姿だった。

 弓を手に追い詰められ、金属製の鎧に身を包んだ男達に剣を向けられている。

「うおりゃぁぁぁあああ!」

 状況を確認しようとする僕とは対象的に、マイトが大剣を手に少女と男達の間に割ってはいる。

 彼の振り下ろした大剣が地面を抉り、土砂が男達に向かって飛んだ。土砂自体に攻撃力は無い。けれど、広範囲に地面を割り、広範囲に飛び散った土砂は、男たちを怯ませるには充分な攻撃だった。

「おいおいおい、大の男が三人がかりで女を襲うってのは、どういう訳だ?」

 マイトは言いながら、少女を背に守るように大剣を構える。僕も杖を構えると、マイトの隣につく。男たちはやや距離をとっていたが、やがて僕たちを包囲するように剣を向けるようになっていた。

「考えなしに飛び込まないでよ。これ、完全に敵対しちゃったじゃないか」

「すまねぇ、状況的に気にくわなかったから、ついな」

「それは同感だけど」

 マイトの言い分に僕は苦笑する。そんな僕たちを見て、背後の少女がようやく口を開いた。

「えっと……。あなたたちは?」

「通りすがりのハンターだよ。何があったか知らないけど、とりあえず手を出してみた」

 答えたのはマイトだ。僕としては詳しい話を聞きたいところだったけれど、すっかり男たちからは敵意を向けられてしまっているし、今更無関係とは言い難かった。

「お前たち、どういうつもりだ!?」

「大人しく後ろの女をこっちに渡せ。さもなければ、痛い目を見ることになるぞ」

 相手は相手で、お決まりの定型句を僕たちに告げてくる。この状況下で、すんなり引き渡せる訳はなかった。

「………………」

 じっと、少女が今の状況を見る。男たちを見て、マイトを見て、最後に僕を見て、一瞬ニヤリと笑った気がした。そして、次の瞬間――。

「助けてください! あの人たち、急に襲って来たんです!」

 見るからに切迫したかのような表情で、マイトに助けを求める。僕は彼女の様子に疑問を抱いたものの、マイトは何も思わなかったのだろうか? 「任せろ!」なんて言いながら、身体強化の魔法まで使っていた。

 逆に狼狽しているのは男たちの方だ。

「馬鹿な!」

「どういうつもりだ!」

 なんて言いながら、少女に鋭いまなざしを向けていた。

「面倒だ。行動不能程度でいい。殴り倒せ!」

 男たちのリーダー格の男が叫ぶ。三人がかりで一斉に剣を振り下ろしてくるが、僕がバリア魔法を展開して少女を守る。僕の隣では、マイトが一人の剣士を大剣を使って早々に弾き飛ばしていた。

 さすがにガードはされていたものの、弾き飛ばされた男は木々で背中を打ちつけたのか、もんどりうって地面でのたうちまわっている。これで実質、二対二だ。

 僕はポーチから黒い箱を放り投げると杖を使って叩き割る。地面に魔法陣が広がり、氷が走る。

「拘束しろ、『アイスロック』!」

 地を這うように走った氷は二人の男をその場に縫いつける。

「よくやった、トリア」

 そして、次の瞬間にはマイトが振り回した大剣が、男たちの顔面を強かに打ち付け、二人揃ってその場で昏倒させていた。

「もしかして……、死んじゃいました?」

 少女が恐る恐る二人の男を覗き込む。

「安心しろ、斬っちゃいねぇ。ちょっと強めに殴っただけだ」

「二三本、歯が無くなったりしてそうですけど?」

「さっきよりも見目よくなったんじゃないか? 大層な鎧も着てるし、大丈夫だろ」

「鎧、顔面じゃあ意味なさそうですけど」

 マイトと少女のやり取りを聞きつつ、僕は最初にマイトが殴り飛ばした男を氷魔法で拘束する。ついでに昏倒している二人も拘束して一息ついた。

 だが、遠くから木々の中を誰かがこっちに向かってくる音がする。

「俺たちみたいに誰か来たのか?」

 マイトの言葉に、僕は反射的に少女を見る。すると彼女は慌てたように、マイトの手を引いた。

「た、たぶんあいつらの仲間ですよ! ここ危ないですから、逃げましょう」

「そうか? 数人くらいならぶっ飛ばせばいいだろう」

「無理ですって! ほら、早く!」

 少女に引かれ、マイトが彼女と走っていく。僕は彼女の行動に違和感を覚えつつ、マイトを一人にすることも出来ないので、二入の後に続くのだった。


 ………………。


「あらためて……。私、リズリットと言います。気軽にリズって呼んでくれればいいよ」

 少女はそう言うと恥ずかしそうに頬をかく。

 僕たちは街道まで戻り、野営の為に張っていたテントまで戻って来ていた。幸いなことに、たき火もまだついたままになっており、森の中よりは幾分少女の姿をはっきりと見ることができた。

 リズは長い髪をサイドで一つに結び、あどけない表情ながら、どこか活発そうな印象を与える少女だ。身につけているものは皮の鎧に弓を一つ、背には矢の入った筒を背負ってはいるものの、矢は残り数本程度しかもっていなかった。

 残りは小さな布の袋を下げているだけで、他には何も持っていない。旅人にしては荷物が無さ過ぎるし、ハンターとしても装備が心もとなかった。

「俺はマイト=レイニーデイ。それで、こっちがトリア。俺たちは『救いの手』っていうパーティーに所属していて――」

「『救いの手』! 本当ですか!」

 マイトの言葉に、少女がはたと手を叩いて満面の笑みを浮かべる。

「ん? お前、俺たちの事知ってるのか?」

「当たり前ですよ。いやぁ、それならそうと早く行って欲しかったなぁ。あれでしょ? 街ごと氷漬けで魔物を倒した凄腕魔術師と、魔術師をまもった剣士さん。有名な噂話ですし」

「あぁ~……」

 少女の言葉に僕が困る番だった。そう言えば、エレクが王都から帰ってくる時、けっこうな噂話になっていると言っていたのを覚えている。どうやら噂はこのあたりまでも届いているらしく、ハンター名や詳細なんかも口づてで伝わっているようだ。

「確かに僕は街を凍らせた魔術師だけど、マイトはその剣士じゃなくて……」

「へぇ~。君が噂の凄腕魔術師なんだ」

 言いながら、リズが上目づかいに下から僕を覗き込む。やわらかそうな唇に、少し赤みがかった澄んだ瞳。シャツの胸元から谷間がチラリと見えてしまい、僕は顔が熱くなるのを感じて顔を逸らしてしまっていた。

「やだぁ、可愛いぃ。そんな凄そうな魔術師に見えないのにね。実は高ランクのハンターとか?」

「いや、僕はまだEランクで」

「そんな謙遜いらないよぉ。私、Dランクだけど、君みたいに街を凍らせたりとかできないよ?」

 少女は僕の言葉を冗談だと受け取ったようだが、残念ながら僕はEランクのままなのは間違い無い。マイトが自分はCランクだと彼女に教えると、「だよね~」なんて答えていた。

「それにしても、何だって森の中で襲われてたんだ?」

 それぞれの自己紹介も落ち着き、改めてマイトが訊ねる。するとリズはちょっと困ったような表情で目を泳がせていた。どうやら、考えていることが表情に出るタイプらしい。隠し事には向いていなさそうだ。

「えっと……、よくわかんない。森をお散歩してたら、いきなり襲ってきて……」

「散歩? こんな時間にか?」

「いや、ほら、今夜はなんかそういう気分って言うか~」

 少女の言葉にマイトも首を傾げているが、僕としてはマイトと彼女のやりとりを見ていると、フリーダかカイゼルのような普通の感覚を持っているメンバーがいてくれればなぁ、なんて考えてしまう。

 リズが何かを隠しているのはバレバレだし、なのにマイトは気づいていないしで、いつもの倍は疲れそうな状況だ。

 そんな話をしていると、遠くに松明の明かりが見えた。

「あれ? こんな時間に誰か来るみたいだね」

 黙っていても良かったのだが、僕はあえてリズに告げるように口にする。すると彼女はやっぱり慌てた様な表情になって、せわしなく周囲を見渡していた。

「どうかしたのか?」

 そんな彼女の様子にマイトが訊ねる。すると彼女は少し思案して、思いついたように続けた。

「たぶん、私を探している、さっきの人たちの仲間かなって思って。匿ってくれないかな?」

「別にかまわないが……。やっぱり何か追われてるのか?」

「や、別に、そう言う訳じゃないんだけど。とにかく、ちょっと隠れさせて!」

 リズは言いながらテントの中に入っていこうとする。僕はそんな彼女を呼び止めると、いつものように思考を巡らせる。

 さて、怪しさ満点のこの少女を、どうしたものだろうかと。


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