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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
トリアートと過去と復讐
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過去との邂逅1

久々に夕方にあっぷします。

いよいよトリアの過去編です。

 ギルドホームのテーブル。その一角、『救いの手』の指定席は重苦しい空気に包まれていた。

 サイトはいつも通り。エレクはどこか沈んだ顔。フリーダは冷めた表情で場を見ている。マイトとカイゼルは気まずそうに成り行きを見守っていた。

「と言う訳で、私はトリアの為に『救いの手』の皆に、強盗の捜索・捕縛を依頼したい」

 彼らの視線が集まっているのは、今まで真剣な表情で経緯を話していたミアだ。お世辞にも説明がうまいとは言えなかったが、普段とは違う彼女の剣幕に、だれも説明の間は口をはさめずにいたのだった。

「いいでしょうか?」

「なんだ、フリーダ」

 ミアが話し終わったと見て、今まで静観を決め込んでいたフリーダが手を挙げる。

「ミアさんのお話はわかりました。それで、どうしてそんな依頼を受注しなければならないのですか?」

「決まっているだろう。トリアがハンターでいられる」

「なるほど」

 フリーダは頷き、薄く笑う。

「ですがミアさん、その依頼を受注しなくても、トリアさんが望むなら彼はハンターを続けられます」

「トリアがわだかまりを抱えたままでか?」

「抱えたままでです。トリアさんは復讐を全てだと言いましたが、そんなものは日常の幸せと時間で忘れることができるものです。そもそもハンターも復讐の為の手段だったのでしょう? むしろ復讐を忘れると言うのなら、ハンターから手を引いた方が彼の為では?」

「為にはならない。始まりは手段だったかもしれない。でも今はそれだけじゃない」

「どうしてあなたが、そんな風に言い切れるんです?」

「私はずっとトリアと一緒にいた」

「契約者、トリアさんの一部として、ですよね。あなたはただ、自分の技を守りたいだけですよ」

「何が言いたい」

「そのままの意味ですよ。あなた、一人では魔法すら使えないんでしょう。トリアさんがハンターを辞めれば、契約者であるあなたに戦う術は無くなる。だからトリアさんを利用してるんじゃないんですか?」

「訂正しろ」

 ミアの手が、腰の双剣に伸びる。

「ちょっと待て。落ち着けよ、お前ら」

 徐々にヒートアップしていくミアとフリーダの間に入ったのは、意外にもマイトだった。

「フリーダ、言いすぎだ。ミアも落ちつけよ。剣まで抜く必要は無い」

 マイトのおかげでミアは剣に伸ばした手を元に、フリーダも一息ついて落ち着きを戻していた。

「あぁ~……。俺にはそもそも状況からわかんねぇんだが、何も受注するのが悪いって訳でもないんだろ? たかが強盗の捕縛だ。俺たちならただの盗賊くらいなら簡単に捕まえられるって」

「あなたは馬鹿ですか」

「へ?」

「事件が起きたのは、もう何年も前です。当時の資料を調べれば手掛かりくらいは見つかるかもしれませんが、相手がまだ生きているかどうかさえ定かではない。調べる為の時間と労力、たとえ目星をつけることができたとしても、立証はほとんど不可能です」

「あ~……。でも、目星をつけたってことは、相手は盗賊だろ? だったら問答無用で捕まえて――」

「間違っているかもしれない相手で妥協する。そんな復讐があるか」

 カイゼルもフリーダに同調する。

「俺としても今回の依頼については反対だ」

「何でだよ」

「今回の依頼、あくまで捕縛だと言っているが、トリアは捕縛だけのつもりなのか? 両親を殺した犯人を目の当たりにして、冷静でいられるとは思えん」

「言いすぎじゃないのか」

 カイゼルの物言いに、マイトが顔をしかめる。

「いいんだよ、マイト」

「いい訳ないだろ」

「ううん。カイゼルの言っていることはもっともだと思う。僕自身、冷静でいられるかどうかなんてわからない。あくまでも捕縛だけのつもりだけれど、怒りにまかせて魔術を使わないなんて言いきれない」

「そうなったら、私が止める。だから調べよう」

 僕の言葉に応えたのは、今まで成り行きを見ていたエレクだった。

「私は調べる価値があると思う。もしかしたら、犯人を見つけることができるかもしれない。見つからなかったとしても、それはトリア君にとっては無駄にはならないよ。私たちでできることをしようよ。もしもトリア君が魔術を使っても、殺させたりは私がしない。どんな状況でも命だけは助ける」

「さすが白魔術師だよな。これなら安心してぶっとばせるってもんだ!」

 エレクの言葉にマイトが大剣を肩に担いで笑う。

「……この脳筋」

「何だと!」

 マイトがポツリと呟いたフリーダに喰ってかかろうとする。しかし、そこはカイゼルが頭をはたいて黙らせていた。

「サイト、お前はどう考えているんだ?」

 埒が明かないと思ったのだろう。カイゼルがサイトに水を向ける。それを見て、全員の視線がサイトに集まっていた。ただ、サイトの返事はもう決まっているようだった。

「どうもこうもないな。パーティーリーダーとして、俺はこの依頼を受注する。まあ、依頼と言っても、ギルドを通した依頼ではなく、報酬や条件なんかも規制の緩い個人的な依頼・自由依頼としてだがな」

「馬鹿な――」

 サイトの言葉にテーブルを叩いたのはフリーダだった。

「サイトさんはトリアさんに復讐を忘れさせたかったんじゃなかったんですか?」

「そうだな。俺は、トリアが一人で戦い続けるなら、復讐なんて忘れればいいと思っていた」

「だったら依頼は受けるべきではない。復讐なんて忘れる道を選ぶべきです」

「だがな、トリアは一人で戦う以外の道を見つけ出したみたいだ」

 言われてフリーダが省みれば、僕の隣にはミアが。そして今は、ミアと並ぶようにマイトとエレクが僕の傍には立っていた。

「フリーダもわかってはいるんだろ。ここでつっぱねたところで、トリアはともかく、ミアやエレクは引き下がることは無いだろう。だったらちゃんと調査をした上で、この件を終わらせた方がいい」

 サイトの言葉にフリーダは深々と溜息を吐く。

「わかりました。確かに、このままでは通常の依頼にも支障をきたしそうです。期限付きとしますが、自由依頼として受注しましょう。ですが、そんなに長い期間はとれませんよ。私たちの活動としては、当面は王都に拠点を移すのが目的なんですから」

「わかった。ありがとうフリーダ」

「よしてくださいよ、お礼なんて」

 僕の言葉にフリーダはばつが悪そうに呟く。顔こそこちらに向けてはくれないが、納得はしているのだろう。ちょっと拗ねたようなしぐさが新鮮だった。

「さてと、それじゃあさっそく調査をするか」

「やっぱり最初に調べるのは街の自警団とかかな? 当時の資料とか見せてもらえるといいんだけど」

 切り替えは速く、サイトの言葉にエレクが訊ねる。すぐに応えてくれたのはカイゼルだった。

「そうだな。そっちは俺が当たろう。自警団の連中とも面識があるし、資料も見せてくれるだろう」

「私もご一緒しましょう。一人で当時の資料に目を通すのは骨でしょうから」

「あ~……。すまん、フリーダは俺と一緒に来てほしい」

 カイゼルについて行こうとするフリーダに待ったをかけるサイト。彼女は怪訝な表情をしていた。

「資料はエレクがついて行ってくれないか? あとマイト、すまないが邪魔にならないように二人について行ってほしい」

「私は別にいいけど」

「なんか俺だけ扱いが雑じゃないか?」

 しかし、マイトが二人についていったところで、資料の調査に役に立つとは思えない。

「サイトは何をするつもりなの?」

「なぁに。ちょっとした魔法調査だよ。その為には、フリーダの力が必要になるからな」

 そう言うとサイトはいつものように悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 こうして僕たち『救いの手』は、僕の仇についての調査を始めたのだった。

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