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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
35/67

特別昇級試験5

明日からしばらくお盆休みに入ります。

しばらく更新できないかも、です。

 剣戟によってサイトを切り裂いたレイガース。

 驚いたのはエレクトラやマイトだけでは無い。彼自身、こんなにも簡単に目の前の相手を倒すことになるとは思っていなかったのだ。

「サイトォォォオオオ!」

 マイトが大剣を手に、演習場に躍り出る。

「来て! 『カムイ』! マイト君、私をサイトさんの所に連れてって!」

 精霊獣を従え、エレクが後に続く。カムイが吠えて疾走する。

「まあ、落ち着けって」

 だが、そんな二人を止めたのは他でもない。たった今、叩き斬られたサイトだった。

「いやぁ、何だかすまないな。こんなに二人が取り乱すとは思わなかった」

「何で? サイトさん、さっきまで……あれ?」

「お前、傷はどうした? 斬られたはずだよな」

 マイトがサイトに向かって手を伸ばすが、彼はひらりと身をかわしてその手を避ける。それからいつものように悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「うーん……、たぶんな。まあ、安心して見てろって。とりあえず無事だからさ」

 サイトはそう言うと、再びレイガースと向かい合う。

 キツネに抓まれたような顔をしているのはレイガースも同じだ。確かに自分の手で斬ったはずの男が、目の前で無傷で立っているのだ。改めて自分の斬った感覚をたどる。確かに目は斬ったと見たが、それにしては手に残る感覚は手ごたえが無かったようにも感じる。

「幻術の類か。それとも何らかのスキルか。今更何をしたところで驚きはしないが、状況はさっきまでと変わるまい。今度こそ、勝負をつけてくれる」

 彼の言葉と共に剣戟が走る。なのに今度のサイトは避けようともしない。結果、彼の腕が切り裂かれ宙を舞う。しかし、切り裂かれた腕は燃え上がると、そのままサイトの腕として元に戻った。

「ば、馬鹿な。今、完全に切り裂いたはずだ」

 驚愕で目を見開くレイガース。サイトはその様子を見てやれやれと肩を竦める。それからニヤリと嗤った。

「今更驚かないんじゃなかったのか?」

「程度と言うものがあるだろう。どういうことだ。これは幻術……ではない。不死身だとでも言うのか?」

「さあな。考えてみたらどうだ?」

 そう言うとサイトの姿が消える。代わりに火線が走り、次の瞬間にはレイガースの目の前にサイトが現れていた。

「『炎爆』」

 現れたサイトが唱えた瞬間、レイガースの身体が吹っ飛ぶ。

「そうか……、その身体、炎として」

「さすがにわかったか。そう『炎精霊化』。俺自身を炎の精霊として、身体を炎と化す。これは、そういう魔術だよ」

 言いながらサイトが歩けば、その後には火の粉が残り、うっすらと陽炎まであがっている。サイトはぶっ飛ばしたレイガースが取り落とした剣を拾う。

 それだけで剣はドロリと溶けてサイトの手の中に消えた。

「物理攻撃の無効化。武器破壊。体も無事じゃあないだろ。このあたりで降参してくれたら、俺としても助かるんだが」

「そうだな。ここまでされては勝てる気はせんよ」

 レイガースは小さく「降参だ」と口にする。それを見届けると、サイトは彼に指を向ける。治癒魔法の光が彼を包み、たちまち魔法による怪我を癒していた。

「情けのつもりか?」

「そんなつもりはない。ただな、久々に思いっきりやれて楽しかったよ。またやろうぜ」

 ニカッと笑うサイトを見て、レイガースは目を丸くする。

「二度とごめんだな」と言うと、演習場で大の字になるように横たわった。


 ………………。


「という訳で、三戦全勝おめでとうございます」

 翌日の事だ。フリーダに労われながら、サイトたち三人はギルドマスターの部屋に集められていた。

「少しハラハラいたしましたが、三人とも叩きつぶ――、いえ、勝っていただけて何よりです」

 フリーダの言にサイトたちは笑うしかない。

 ギルドマスターは苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。

「昨日の試験結果を受けて、私とギルドマスター、それから『赤銅の蛇』のメンバーの皆さんへのヒアリングを行って、ちょっとした私からの口添えで、今朝方ようやく皆さんの試験結果が決まりました」

 ちょっとした、というフリーダの言葉にギルマスとスピナ―、そして同席している『赤銅の蛇』のメンバーが少しざわつく。全員が目の下に隈をつくっているあたり、お疲れ様ですとしか言いようがない。

「ではギルドマスター。お願いいたします」

 フリーダが一歩下がり、咳払いと共にギルドマスターが居住まいを正す。

「あー……、それでは試験結果を伝える。まずはマイト=レイニーデイ。エレクトラ=アレース」

「おう」とマイトが進み出る。

 エレクトラは頬を染めているが、試験結果には自信を持っているようだ。

 昇級証書とライセンスが用意され、スピナ―が彼らに手渡した。

「Cランクハンターとしての昇級を認める。これからの活躍に期待する」

 二人がそれぞれライセンスを受け取る。マイトがガッツポーズをとり、エレクトラは胸に抱いていた。

「総評だが、まずはマイト。ハンターランクとしては格上を相手に互角以上の勝負を見せてくれた。勿論、Eランクとなった経緯での座学については今後も強化していく必要があるが、そこまでの実力がありながら下位ランクの依頼しか受注できないのはギルドとしての損失だ。よって、昇級を認める」

 マイトは「ありがとよ」なんて言っていたが、フリーダに「……脳筋」と言われて顔をしかめていた。

「次にエレクトラ。君は治癒術と神聖魔術だけでなく、精霊魔術も行使できる状態だ。これだけの逸材は宮廷魔術師でも稀有な存在だ。また、その向上心と戦闘能力は本物だと感じる。今後も上位ランクの依頼にて研鑽し、より腕を磨いてほしい。ここに、昇級を認める」

「はい、頑張ります」

 よほど嬉しかったのだろう。彼女は少し目じりを光らせながら、杖をぎゅっと握りしめていた。

「さて、最後に、サイト=レオンハート」

「ん……」

 名前を呼ばれてサイトが進み出る。同じようにスピナ―がライセンスを用意してくれていた。

「Bランクハンターとしての昇級を認める」

 手渡されたのは銀色に光るライセンスだった。それを見て、サイトは喜んでいたが、マイトやエレクトラは不思議そうに、フリーダはちょっと複雑そうな表情をしていた。

「なんだ。どうかしたのか?」

「いや、だってな」

「ねぇ」

 サイトの言葉にマイトやエレクトラの歯切れは悪い。そんな二人の言葉を引き継ぐようにフリーダが言った。

「サイトさんはAクラスハンターに勝ったのに、Bクラスへの昇級ですからね。納得がいかないんですよ」

「あぁ~、なるほどな」

 言われてみて、サイトはギルドマスターを見る。

「その件については何度も説明しただろぉ」と彼はフリーダを見ている。彼女は彼女でニヤついているあたり、嫌がらせ半分くらいはありそうだった。

「確かにサイトについては我々の中でも意見が分かれた。今は一線を退いているとはいえ、剣聖とまで称されたレイガースに勝利。彼からも言われていたような常識の枠外の魔術。身体能力もずば抜けていることはわかっている。だが、それはあくまで試験の中。ただ一度の戦いでのことだ」

 ギルドマスターはそう言うと、咳払いを一つする。

「私たちが君たちに与えられるランクと言うものは、ただの指標にすぎない。そして私たちがギルドとして与えられるランクは最高位がAランクだ。私としては前途ある一人のハンターに、Aランクを与えてしまっては、かえって見識を狭くしてしまうようにしか思えない。Bランクとして世界を見て、ポイントを貯め、いつかまた王都に来てほしい。その方が君たち『救いの手』の為になると判断した」

 ギルドマスターの言葉にサイトがフリーダを見る。

「だ、そうだが?」

「そうですね。私としてはあなたをAクラスにするつもりでしたが、サイトさんがBクラスでも構わないと言うのなら、私に言うことは何もありません。Aクラスになりたいのなら、もう二三日滞在して、骨の髄まであなたの力と能力を彼らの脳髄に叩き込みますが」

「本当にやりそうだから、遠慮しておくよ。俺はランクにはあんまりこだわりないしな」

「まあ、あなたはそう言うでしょうね」

 やれやれとフリーダが肩を竦める。サイトの言葉に胸を撫で下ろしていたのはギルドマスターやスピナ―だった。


「さて、これからどうする?」

 ギルドホームを出て、サイトが三人に訊ねる。

「そりゃ勿論。帰ろうぜ、ベルベックに」

「そうだよ。トリア君やミアちゃんたちも待ってると思うしさ」

 マイトやエレクトラは帰る気でいたのだろう。とっくに荷物はまとめ終わっていたし、王都に滞在するつもりもなさそうだった。

「それじゃあ、ベルベックの街に凱旋といきましょうか」

 フリーダに促され、一行は馬車に乗り込む。

 エレクトラが馬車から最後に王都の街を見る。それからベルベックの街で待つ、トリアを思い出して、胸が熱くなるのを感じた。ようやく、彼に追いつけそうで、はやる気持ちは押さえられそうになかった。


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