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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
27/67

『魔蟲・アラクネロ』の討伐1

今回もフリーダさんが無双しています。

個人的に好きなキャラなんですが……。

そろそろ別のキャラにもスポット当てよう。

「トリア、フリーダと何かあったのか?」

 ある日のこと、ギルドホームで一休みしているとミアが声を掛けてくれた。表情こそいつもと変わらない無愛想なものの、本当に心配してくれたのだろう。無言のまま、持参したパイを差し出してくれていた。

「何も無い……って言ったら嘘になるけど、そんなに変かな?」

「うん、変だな。フリーダがいつも通りすぎるが、トリアが意識してるから不自然だ。エレクちゃんも気にしてるみたいだぞ」

「そうか……。面倒かけてごめんね」

「気にするな」

 僕たちが話していると、サイト、カイゼル、マイト、エレク、そしてフリーダとパーティーメンバーが全員集まる。全員が集まったのを確認して、サイトが話を始める。

「それでは俺たち『救いの手』の今後の活動について会議を始める。まずはフリーダ、頼む」

「かしこままりました」

 フリーダは立ち上がり、恭しく一礼すると僕たちを見る。目が合いそうになって反射的に目をそらすと、彼女がクスリと微笑んでいた。

 ふと視線を感じて対面を見れば、エレクがジトッと僕を見ていた。

「さて、先日お話ししたように、サイトさん、エレクさん、マイトさんの三人については、私と一緒に王都ハンターギルド本部に向かい、特別昇級試験を受けてもらいます」

「げっ、フリーダも一緒なのか?」

「マイトさん、何か不服でも」

「いや、かまわないけどよ。お前は昇級とか関係ないだろ」

「そうですね。事務手続き、関係者への挨拶、試験後の諸変更。もろもろをマイトさんが自分でしてくださるのなら、私は街でゆっくりできますね」

「すみませんでした。付いてきてください」

 マイトがテーブルに額を擦り付けるように懇願する。フリーダは咳払いを一つすると話を続ける。

「往路・復路でで三日ずつ。予備日に一日。試験本番と手続きなどで十日程。私たちは街を離れます。勿論、最短で十日というだけで、イレギュラーがあればその限りではありません」

「最短でも十日……、長いな」

 カイゼルが応える。

「その間、俺たちはどうする? サイトたちがいない状態じゃあ、対した依頼はできないぞ」

 カイゼルはCランクハンターだ。この中の誰よりもハンターとしての経験がある。その彼と一緒に残るトリアやミアもハンターとしての経験はある。しかし、それもEランクハンターとしての経験までだ。

 巨獣討伐や簡単な警護依頼は経験があるが、魔物や魔獣などを相手とした経験は無いに等しかった。

「大丈夫です。あらゆる可能性を考慮して、ちゃんと依頼を用意しておきましたよ」

 フリーダはそう言うと、三人の前に依頼書を見せる。その依頼は先日レッドグリズリーを討伐した渓谷に近い森に出現するようになった魔蟲の討伐依頼だった。

「魔蟲、アラクネロ。危険度は魔物の中でもDクラス。先日、森近くの農村で幼体が確認されたことから、森の中にコロニーをつくり始めたと推測されます。依頼の達成条件は魔蟲の殲滅。カイゼルさんたち三人でも問題なくこなせる依頼だと思います」

「アラクネロか。確かに危険は少ないが」

 何かを思案するようなカイゼル。何を迷う必要があるんだろうか。

「やろうよカイゼル。巨獣と危険度は変わらないし、充分に倒せる相手なんでしょ」

「トリア。だがな――」

「ミアも依頼は受けるよね?」

「私はどちらでも構わない。トリアの決定に従う」

 僕とミアの言葉にようやくカイゼルが折れた。

「わかった。一点確認だが、アラクネロが出たのは数日前なんだな?」

「そうです。依頼主は町の町長らしいですね。町での確認は約四日前になります」

「ならば明日にでも討伐に向かおう」

 なんとも急な話だ。カイゼルの言葉に僕は違和感を覚えつつも、魔物の討伐と聞いて胸が高鳴る。サイトはいないが、僕とミアにとっては初めての魔物討伐だ。

「それじゃあ決定だな。俺たち三人は昇級試験。カイゼルたちは討伐依頼での昇級ポイントの獲得。十日後にはそれぞれの目的達成で合流を目標とする」

 サイトの言葉に全員が返事をする。

 それぞれの出発は翌日として、僕たちはその日はそれぞれの家へと帰っていった。


 ………………。


 僕が部屋で休息をとっているとノックの音がする。

 僕が返事をするよりも早く、彼女が部屋へと入ってくる。皆が寝静まった夜にやって来たのは、寝間着に着換えたフリーダだった。

「こんばんは、トリアさん」

「またか。今夜も何か用?」

「ええ。そろそろハンターを辞める決意を固めていただけたかな、と思いまして」

 彼女の言葉に僕は長い溜息を吐く。

 ここ数日のことだ。彼女が僕の家に暮らし始めてから、毎晩のように僕の部屋を訪れるようになっていた。

 彼女が言うには「これが私ができる最善手ですから」とのことだ。

 特に何をする訳でもない。寝間着姿でその辺りの本を手に取り、ずっと本を読み続けている。彼女が僕に何をさせたいのかはわかっているし、相手にしなければいいだけだ。けれど僕は彼女を視界の端に追いやるだけでいつも精一杯だった。

「そう言えば、討伐依頼やけに乗り気でしたね」

 フリーダは視線を手の本に向けながら、何でも無いことのように訊ねる。

「依頼を受けるのは当然でしょ」

「そうですね。マネージメントの立場としても、乗り気になっていただけるのは助かりました」

「僕たちが断るとでも思ってたの?」

「カイゼルさんは渋るだろうな、と思っていましたから。トリアさんが乗り気で助かりました」

「ならいいじゃないか」

「そうですね。やっぱり、マイトさんやエレクさんに置いて行かれるのは悔しいですか?」

 その言葉に僕は思わず彼女を見てしまう。フリーダはいつの間にか本を閉じて、穏やかな表情で僕をじっと見つめていた。

「悔しいよ。マイトなんて、僕よりハンターになったのは後だしね」

「今の自分なら、マイトさんとも実力で並べるとでも?」

「そこまではわからないよ。でも、ハンターとしての経験は負けるつもりはない」

「そうですか。ハンターとしての、ね」

 そう言うと彼女は少し意地悪な表情でニヤリと笑っていた。

「話を戻しましょう。今回の依頼は魔物の討伐ですが、トリアさんは魔物の討伐は初めてですよね?」

「オークとかゴブリンくらいなら相手したことがあるけどね。アラクネロだっけ? 危険度がD以上の魔物は初めてだよ」

「そうですか。それじゃあ、一つ賭けをしませんか?」

「賭け?」

 僕が訊き返すとフリーダは頷く。

「お題は『トリアさんが依頼を成功させるか?』。トリアさんは依頼の成功に賭けますよね?」

「当たり前だよ。失敗するつもりなんて無い」

「ですよね。ですが、私はあなたは失敗するに賭けますよ」

「……何でそんな」

「私はトリアさんが思っているよりも皆さんの力を把握しています。今のトリアさんではきっと失敗します。そうなるのが当然ですよ」

 フリーダははったりを言うような奴じゃない。何故だか確信をしているようだった。

「トリアさんが依頼を成功させれば、私はトリアさんがDランクになれるように取り計らいましょう。どんな方法手段を使ってでも、必ずあなたをDランク以上にしてみせます」

「そんなことができるの」

「現にエレクさんとマイトさんは昇級しそうでしょう?」

 フリーダの手腕なら何らかの方法や手段を準備するのかもしれない。ただ、僕の目的を知っている彼女が、何のリスクもなしにそんな条件を提示するとは思えなかった。

「もしも僕が依頼に失敗したら? まさか、ハンターをやめろとは言わないよね?」

「それも魅力的な提案ですが、そんなことを賭けの対象にしたら、トリアさんは乗ってくれなくなります。ですから、ここは代替案で妥協しますよ。そうですね……。私かミアさん、エレクさんに愛の告白をしてください。今回はそれだけでいいですよ?」

「なっ……」

「ちなみに、私に愛を告白した場合、一晩一緒に過ごしていただきます。意味はわかりますよね?」

 思わず僕は絶句する。何を言い出すのかと思えば、よりにもよって最悪の提案だった。

「そんな賭けを受ける訳ないだろ」

「それならそれで構いませんよ。そうなると、あなたは昇級のチャンスをミスミス見逃すことになりますし、低ランクのままでいてくれるなら、私には他の方法でハンターを辞めさせる方法もあります」

 フリーダは僕を弄ぶように、身を乗り出すと僕に顔を近づける。

「ハンターは自由なものです。目の前のチャンスは必ず掴み取ります。あなたがチャンスを前に尻込みするようなら、どっちにしろハンターとしての才覚はありません。それで、どうします?」

 そこまで言われて、僕が引く訳が無かった。

「わかった。その賭け、乗るよ。その上で僕はDランクに昇級する。事務手続きの準備でもしておいて」

「頼もしい限りです。でも、事務手続きの準備は徒労に終わると思いますから、告白スポットの調査と寝具の用意をしておきますね」

 決意を固める僕に、フリーダは余裕綽々といった表情のままだ。

「それじゃあ、明日も早いですから、今日はもう寝ましょう」

 フリーダはそう言うと部屋を出て行く。僕も部屋の明かりを落とすと、ベッドで横になる。月明かりが部屋の中に差し込んでいる。その光の下には、フリーダがさっきまで手に持っていた本が照らされていた。

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