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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
24/67

ベルベック市場とマネージメント3

連休中にもなんとか投稿できました。

フリーダさん、書いていて楽しいキャラです。

「という訳で、本日付けでパーティー『救いの手』の事務員を務めることになりました。フリーダ=マキュレイです。よろしくお願いします」

 ミアと僕がフリーダと出会った翌日。ギルドホームにはメイド服で挨拶をする彼女の姿があった。

「と言う訳で、とか言ってるが、どういう訳かさっぱりわからないのは俺だけか?」

「奇遇だね。僕もだよ、マイト」

 キョトンとしている僕たちをそのままに、彼女を連れてきたサイトが話を続ける。

「実は昨日、俺たちがマキュレイ商会というところに行くことがあってな。そこの会長さんと意気投合して、俺たちの出荷したレッドグリズリーの素材をかなり購入してくれることになったんだ。併せて、これからの討伐依頼や探索依頼での素材なども買い取ってくれるそうで、彼女はその仲介としてパーティに所属することになったんだ」

「へぇ……。変な偶然もあるもんだね。僕とミアも、昨日彼女に助けてもらうことがあって」

 僕の言葉にミアもコクリと頷く。カイゼルとサイトがそっと目を逸らしていた。

「まあいいや。つまりは新しいパーティメンバーってことだろ」

「そういうことだ」

 マイトの言葉にサイトは頷く。

「俺は大剣使いで拳闘士のマイト=レイニーデイだ。フリーダは剣士で前衛……には見えないな。もしかして魔術師で後衛なのか?」

「いいえ? 私は魔法もからっきしです。生活魔法で火くらいは起こせます。先だって自己紹介させていただいた通り、商人でパーティの事務を専門に働かせていただきます」

「事務が専門。戦いは?」

「それはあなたたちのお仕事です。私の仕事は依頼の受注、事後処理、資産運用、備品管理などです」

「サイト……。こいつ、何言ってるんだ?」

 フリーダの説明にマイトの表情が曇っていく。眉間に皺を寄せ、あからさまに不機嫌そうな表情になる。

「事務員とか、そんなの必要無いだろうが。依頼の受注とか今までも普通にやってたし、事後処理とかも受付のルーシーにお願いしてたじゃねぇか。なのに、こんな戦力にもならないような奴が必要なのか?」

「あー……、それはだな」

「サイトさん。ここは私にお任せください」

 サイトが言い淀んでいると、彼を止めるようにフリーダが前に出る。そして、じっとマイトの目を見つめた。まるで虫でも見つめるような無感動・無感情な冷徹な目だった。

「な、なんだよ、やるのか?」

「………………これだから脳筋は」

 やっと言葉を口にしたマイトに、端的にフリーダが答える。一瞬でギルド内の空気が凍りついた。

「今、なんて言った?」

「脳筋、といったのですよ。その虫並みの脳では人間の言語も理解できませんでしたか? 意味がわからないということであれば、懇切丁寧に説明してあげましょうか。ゴキブリにも理解できるように」

 つらつらと毒を吐く彼女の様子に面喰っているのはマイトだけじゃない。僕やサイトを含め、誰一人、何も言うことができなかった。

「今、あなたが言っていた依頼の受注についてですが、あなたは受注の一つも自分ではやったことがありませんね? このパーティでは、ほとんどがサイトさんがやっていたと伺いました」

「まあ、そうだな」

「で、あなたはその間に何をしてたんですか? 受注の仕方を勉強しました? それとも、そこでギルドの空気を汚しながら時間を浪費していましたか?」

 フリーダの物言いにぐうの音も出ないマイト。確かに、僕たちはいつも受付の依頼や事後処理はサイトに任せっぱなしだった。

「この前のレッドグリズリーの事後処理についてもそうだ。ルーシーに依頼をしたら、かなりの額の中間マージンを取られたと言っていただろ。全体売り上げの数パーセントだが、一回当たりの売り上げ額が大きくなれば、マージンの額も跳ね上がる」

「なるほど。その中間マージンもフリーダがいれば、これからは必要なくなるのか」

「そういうことです。さすがトリアさん。理解が速くて助かります」

 僕の言葉にフリーダが満面の笑みを浮かべる。

「ただ、私がしようとしている事務専門というのは、もう一歩進んだパーティ運営なんです」

「というと?」

「怖れながら、皆様、ただいまパーティ『救いの手』の資産額をご存知ですか?」

「え? いや、それは……」

「そう言えば知らないね」

「わからん」

 僕、エレク、ミアがそれぞれ答えてサイトを見る。サイトはそっと視線を逸らしていたが、カイゼルがやれやれと溜息を吐いていた。

「今まで担当していたサイトがこの調子なんだ。限りなくゼロに近いんだろ?」

「カイゼルさんもご聡明なのですね。ええ、その通りです」

 カイゼルとフリーダのやり取りに驚いたのは他の僕たちだ。

「な、何でそんなことになるの?」

「兄貴、説明しろ」

「元々、あの依頼は馬車の購入資金に充てる為のものだったろ? それに全員に個別報酬とか払ったりしてたらだな、ほとんど手元に残らなくて。サーセン」

 無言のまま、サイトの後頭部にミアの蹴りが入る。ただ、今回ばかりは同情の余地が無かった。

「資金管理には商人である私が適切かと思いました」

「そうだね。助かるよ」

 もう誰も反対を唱える者はいなかった。マイトを除いてだ。

「俺は認めねーぞ。だいたいだな、ハンターっていうのは自由なもんなんだ。資金が足りなくなれば依頼の一つでも受注すればいいんだ。俺が軽く稼いでやるよ」

「マイト。いくらなんでもそれは――」

「いいんですよ、トリアさん。今、私が脳筋にもわかるレベルで説明しますから。彼と言葉を交わすと、お耳が汚れます」

 フリーダがサクッとマイトを言葉の刃で斬り裂きながら、淡々と言葉を続ける。

「そもそも資金をどういうことに使っているかご存知ですか?」

「え? そりゃ、剣とか買ったり。武具とか買ったりじゃないのか?」

「そうですね。備品の購入も資金の使い方の一つです。大切なのだけあげれば、メンバーのケアや報酬。依頼受注時の供託金なんかもあるんですよ」

「供託金って何だ?」

「要は依頼失敗時の補償金ですよ。報酬の一割から三割程度です。これをギルドに預けることで、依頼失敗時にそのお金が使われます。だから供託金が支払えなければ、当然依頼の受注もできません」

「え……。どうすんだよ。うちの資金、やばいんだろ?」

 ようやく事態の悪さに気づいたマイト。やれやれとフリーダが肩を竦める。

「大丈夫ですよ。資金は少ないですが、一回の討伐依頼の供託金を支払うくらいは残ってます。その依頼をちゃんと成功させれば、問題の無いことですから。供託金自体は依頼の成功で全額返ってきますしね」

「簡単に言ってくれるなぁ」とサイトは苦笑気味だった。

「兎にも角にも、現在の『救いの手』の状態をご理解いただけましたか?」

 フリーダの問い掛けに皆、神妙な面持ちで頷く。

「先ほど脳筋の仰ったように、ハンターや冒険者なんて言うのは自由な生き方をされる方が大半です。ですが、それは実力や実務能力があって初めてできること。私たちはまだスタートラインにもたってません。そんなひよっこの言う自由なんて言うのは糞くらえです」

 フリーダはそんなことを言いながら僕たちにウインクしてみせる。

「ただし、皆様はただのDランクパーティと呼ぶには些か特殊な人たちです。なので私がマネージメントを担当して、このパーティを一流のパーティにいたします。これが私の、商人としての皆さまに提示できる最大の利益です。ご理解いただけましたか?」

 彼女の言葉に最初に応えたのは意外にもカイゼルだった。ただ何も言わずに無言で拍手を返す。サイトもそれに追従すると、つられてミアやエレクも拍手を返していた。僕やマイトは困惑するばかりだった。

「過半数の支持を頂けた、という風に理解します。と言う訳で、私の最初のマネージメントです」

 言いながら、フリーダが一枚の依頼をテーブルの上に置く。

「まずは先立つものが必要。ということで、皆様には少し資金を稼いでいただきますね」とフリーダはニタリと笑みを浮かべた。

 依頼所には『ベルベック市の警護依頼』と書かれていた。

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