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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
23/67

幕間

2と3の間くらいの話です。


 トリアート=ニボックルスは彼の友人と帰っていった。

 ヤエト=マキュレイは深々と溜息を吐きだし、空になったグラスに酒を注ぐ。今は亡き恩人に、そして良き友に思いをはせながら、ちびりちびりと酒を飲んでいた。

 街にはいつの間にか夜の帳が下りている。遠くに雷鳴の音が聞こえる。空気がしっとりと湿っているのを感じて、雨がそこまで来ていることを肌で感じる。

 何故だか、今の自分の心境にぴったりだな、なんて考えていた。商人としては考えられないほど、センチメンタルになっている。今日の残った仕事は息子と娘に任せたきりになってしまった。

 こんなことではいけない。空になったボトルを片付けようと立ち上がる。

 ノックの音が店に響いた。

「ヤエト=マキュレイさんですね」

 いつの間にか雨が降り始めていた。黒いマントに黒いフード、少し雨に打たれたのか髪からは水滴が滴り落ちていた。二人の長身の男が露店のテントの前に立っていた。

「あなたたちは?」

「トリアート=ニボックルスの仲間、と言えば分って貰えるだろうか?」

「彼の……。どうぞ、入ってください」

 ヤエトは彼らをテントの中に招き入れる。彼らがフードを取る。

「俺の名前はサイト=レオンハート。昼間にここを訪れた娘の兄で、こいつはカイゼル=ディア=ライオット。近郊の貴族の三男だ」

「貴族の。しかし、トリアさんの仲間ということはハンターと言うことですよね」

「そうだ」

「相手が貴族なら、私が話を訊くとでも?」

「ハンターと言う職業にいい印象を持っていない上、トリアがハンターをしているのは面白くないはずだ。父親の後も継いでいない道楽息子、なんて思われても仕方ない」

 二人の間を険呑とした空気が流れる。だが、先に笑みを浮かべたのはヤエトだった。

「そうですね。世間はそう見るかもしれません。ですが違うのでしょう?」

「少なくてもあいつは真面目にやっているつもりだからな」

「試すような真似をして申し訳ありません。職業柄、交渉相手の値踏みは日常茶飯事でして」

「気にするな。俺たちも職業柄、試されるのは慣れている。ちなみに、カイゼルの出自を明かしたのは、黙っているのはフェアではないと思っただけだ。名乗れば、身分がバレるのは当たり前だからな」

 ヤエトに椅子に着くように勧められるが、サイトはすぐに出て行くと言ってこれを断る。それどころか、彼は床に手をつき、その額を床にこすり付けた。カイゼルは何も聞いていなかったのだろう、ただそこに立っている。彼らの行動に目を丸くしたのはヤエトだった。

「あなたをトリアの理解者になりうる方としてお願いがある」

「サイトさん、何を」

「俺は故あってこの世界の常識が足りない。けじめとして、これしか俺は思いつかなかった」

 サイトはその姿勢のまま言葉を続ける。

「トリアがハンターになったのは、俺が生きる道を示したからだ」

「どういうことでしょう? 私には話が見えません」

「あいつは、両親を殺されてからは抜け殻のようになっていた。それこそ、生きるのを拒もうとでもするかのようだった。だから俺が憎しみを教えた。復讐を動機づけた。その上で戦いを教え続けていた」

「そうですか。それで今日の彼があるのですね」

 ヤエトが拳を握りしめる。

「いえ、何も言えませんね。私とて、今日まで何も知らなかった身です。この私に何ができるのです?」

「トリアに生き方を示してほしい。俺がトリアに生きる為の動機を与えた。だが、もう復讐など無くてもあいつは生きていけるんじゃないかと、俺は思っている」

「復讐を忘れさせる、と?」

「そうだ。このままではあいつの生きる道に血は流れる。それじゃああいつはいつまでも解放されない。例えば商売のノウハウを教えることで、復讐ではなく両親の意志を継ぐ道を残すことはできないだろうか? これは『転生者』や貴族、ハンターにはできないことなんだ」

「それで私が生き方を、商人としての道を教えるということですね」

 ヤエトは口にしながら考える。だが、どれだけ考えても現実的ではなかった。

「サイトさん、顔をあげてください。私とて、あなたの願いを訊き届けたいという気持ちはあります。けれど彼はハンターを続けるでしょう? 商人とはハンターと両立できるほどやさしい道のりではない。リエトの忘れ形見の力にはなりたいが、彼がハンターである限りは私は力にはなれません」


「そうとは限らないんじゃない?」


 ヤエトがサイトに断りを入れようとした時、テントの中にやってきたのはフリーダだった。彼女は眼鏡に手を添えてサイトを診る。それだけで、今がどれだけ異常な状態なのかがわかったのだ。

「お父さん、私に任せてくれませんか? サイトさんが力になるのなら、私は彼の生き方を変えることはできなくても、道の選び方は変えることができますよ」

 フリーダはそう告げると、彼女なりの方法を三人に提示するのだった。

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