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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
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ベルベック市場とマネージメント2

今回はあんまり山場ないです。いつものこと、というツッコミはなしの方向でお願いします。

 僕たちにアドバイスをしてくれたメイドさんはフリーダさんという名前らしい。

 彼女は面倒事に巻き込んでしまった非礼に、という名目で僕たちを自分の所属している商店まで案内してくれた。

 市の中でも一際人気の商店の並ぶ市役所前の広場、その一角を確保して、マキュレイ商会という商店が露店を開いていた。王都でも最近人気のある商店で、ベルベット市でもよく聞く名前だった。

「フリーダさん、こんな凄いところで働いているんですね」

「フリーダで結構ですよ、トリアさん。私などはこの商店の末席に置いていただいているだけ。本当に凄いのは父や兄ですよ。私などはそろそろどこぞの商家に嫁げなどと言われる始末で――」

 世間話をしながら僕とミアは剣を扱っている場所まで案内される。その場には、さっきの露店に広げられていた倍以上の多彩な剣が所狭しと並べられていた。

「勿論、一山いくらで売れるような安物もありますが、()()()()()、それでは彼女の腕には耐えられそうにないですね」

「そんなこともわかるの?」

「ええ。これでも商売人としての目利きは確かだと自負しています。それに、ちょっとした反則も使っていますしね」

 そんな風に答えながら。フリーダは眼鏡に手を添える。どうやら、特別な道具のようだった。


 ………………。


 さて、そんな彼らの様子を、市役所の上から見ていたのはサイトとカイゼルの二人だった。

「どういう経緯かまったくわからないが、あの天然ジゴロはまた女の子とお近づきになったのか」

 なんて言いながらサイトが嘆息する。

「と言うより、あのメイドが世話をやいてくれたように見えたが」

「まあな。だが、経緯はどうでもいいんだ。どっちかと言うと結果の方が問題だ。さっきからミアからの伝達魔法が飛んでくるんだが、内容聞きたいか?」

「遠慮しておこう。今にも人殺しでもしそうな目をしているしな」

「無愛想で表情に乏しいだけで、不機嫌は隠そうともしていないからな」

 二人の言うとおり、ミアは黙ってトリアの隣についているが、さっきまでと比べると恐ろしいまでに冷めた目をしていた。そんなことも気がつかず、隣で平然とフリーダと話しているトリア。

 そろそろ話も切り上げればいいのに、剣の説明を親身になって聞いていた。

「ミア、これはどうかな?」

 一通り説明を聞いていたトリアが一組の双剣をミアに見せる。

 さすがにドワーフが作ったものには及ばないものの、王都の鍛冶氏が鍛えた一本で、金額やミアの腕にも充分足りる一組だ。

「いいんじゃないか」

「じゃあ、これを貰おうか」

 トリアが選んでくれた、ということも相まって、本当は剣を抱きしめたくなるくらいに嬉しい。それなのに、ミアは素直になれずに憮然とした表情をするばかりだった。

「ミアさん」

 そんな彼女を心配してか、フリーダが声を掛ける。ちょっと心配そうな顔だった。

「トリアさんを借りてしまってごめんなさい。ちょっと面白く無かったですよね」

「何を言っているのかわからない」

「そうですか。心配しないでくださいね。あの人はたぶん、あなたたちしか見えてない人ですから」

 ミアが首を傾げる。しばらくすると、会計を終えたトリアが戻ってくる。ミアの為の双剣を満面の笑みで持ってくれていた。


 ………………。


 しばらく店を案内して貰って、僕とミアは他にもいくつかハンター用の雑貨を紹介して貰う。

 そのうちお茶まで用意して貰って、僕たちは三人で世間話をしていた。

「色々と紹介して貰ってすみません。おかげで助かりました」

「いえいえ、私にとっても有意義な時間になりました。お得意様にもなっていただけそうですし」

 僕の言葉にフリーダが口元に手を添えて微笑む。なかなか強かな人だな、なんて印象をもっていた。

「なんだ、フリーダ。お客様か?」

 そこに小柄な男性が通りかかる。どこかフリーダに似た容姿の男性はどうやらフリーダの父親のようだ。

「お初にお目にかかります。私、ヤエト=マキュレイと申します。この商会の店主を務めさせていただいています」

「はじめまして。トリアート=ニボックルです。彼女はミア=レオンハートと言います」

「ニボックル?」

 僕の自己紹介に彼は何かに気づいたようだ。ハタと手を叩いて僕と握手を交わしていた。

「あぁ、あのニッボックル商店の方でしたか。お父上……、リエト様は元気ですか? 私、王都の商会で修行中の時代は共に勉強させていただいた旧知の間柄なのですよ。そう言えば、随分前にベルベックに店を構えたという話を聞きましたから、いつかお会いしたいと思っていたのです」

「え……」

 今度は僕が驚愕で目を見開く番だった。

「トリアの父親を知っているのか?」

 ミアが立ちあがり、ヤエトに訊ねる。彼はどうし僕たちがこんな反応をしているのかわからないようだったが、ミアの言葉に頷いて返す。

「ここ十数年は親交こそありませんでしたが、息子さんが生まれるまでは随分とお世話になったのですよ。恥ずかしながら、私は商売人としては凡人でしたので、独立まで随分とかかったのです。いつか立派な商人として独り立ちできた時、改めて挨拶をしようと思っていたほどで――」

「父は……、父は殺されました」

 上機嫌に話を続けるヤエトに、僕は言葉をやっと返す。今度は彼が驚く番だった。

「どういうことですか? 彼は、ベルベックに店を構えたと……。君は彼の息子では?」

「はい。僕はリエト=ニボックルの一人息子です。父は数年前、僕がまだ幼い頃に賊に襲われて殺されました。今はニボックル商店は店を閉じ、僕はハンターとして彼女たちと生活をしています」

「そんな。まさか――」

 ヤエトが空を仰ぎ見る。それから、目がしらを押さえてテーブルに手をつく。フリーダが彼を支え、椅子に座らせていた。彼の頬を一筋の涙が流れていた。僕たちは何もできず、彼が落ち着くのを待った。

「取り乱してしまい申し訳ありません。ただ、それほどまでに私がお世話になった方だったのです」

 それからしばらく、僕は彼の語る父親の話を聞くことになったのだった。


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