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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
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ギルドにて、次のステップに必要なこと

「おかえりなさーい」

 ハンターギルドに到着すると受付嬢のルーシーが僕たちをみて手をひらひらと振る。

「その様子じゃあ、今日も成果は上々って感じ?」

「さあな。とりあえず獲物の買い取りを頼む」

 サイトはルーシーのところに向かい、僕とミアは先にテーブルに着く。

 ギルドでのやり取りや依頼の受注手続きなどは、ほとんどサイトに一任することになっていた。 

 手続きをしている間に、僕は装備の点検を、ミアは双剣の手入れをしていた。

 

 さて、僕たちの住んでいるのはスピナ王国と呼ばれる王国の片田舎・ベルベックと呼ばれる街だ。王国の中心部からは遠く、大きな戦禍に見舞われたこともない。

 隣の友好国との交易で使われる街道沿いに位置しているから、少しは賑わいもあり、ハンターギルドを利用する人も多い。そんな街だ。

 そして、僕とミアはこのベルベックで登録したEランクハンター。

 ハンターはFからA、Sまでの七つのランクがある。僕とミアはまだ十歳になる前にギルドで登録したので、Fランクからスタートして、今年11歳になった時にEランクハンターに昇格したばかりだった。

 ちなみに、サイトは登録した時から魔法や剣での才能が認められてDランクからスタート。僕たちが昇格する頃にはCランクに認定されていた。サイトが言うには「転生者チート」というものらしい。僕たちにはよくわからないものだった。

「なかなか良い稼ぎになった今夜は豪勢になりそうだぞ」

 そんなことを言いながら戻ってきたサイトの手には何枚かの紙幣と小銭が握られている。

 テーブルの上にそれらを置くと、僕とミア、サイトと三等分する。今日の狩りで仕留めたのはサイトなのだが分け前は平等。それは、サイトが僕とミアを誘ったときに最初につくったルールの一つだった。

 僕はお金をしまいながら貯金を思い出す。少しは資金がたまってきた。そろそろ新しい杖が買えそうだ。

「そろそろ、次のステップに進むべきかもしれないな」

 僕たちの様子を見て、サイトが呟く。

「ミア、トリア、俺たちに今足りないものは何だと思う?」

「え? なんだろう……。足りないものはいろいろあると思うけど」

「知らん。もったいぶらずに教えろ」

 考えようとする僕と、考える気の無いミア。そんな僕たちを見ながらサイトは断言した。

「それはな、熱き魂を持ち、苦難を共に乗り越え、喜びを分かち合う。仲間だ」

「えっと……」

 熱く語りかけるサイトに困り顔の僕。

「アホだな」とミアは嘆息していた。

 そんな僕たちの様子に、サイトは肩をすくめると諭すように話を続ける。

「お前たちはいまいちわかっていないようだな。ミア、トリア、今までの依頼で、お前たちの技術や能力はかなり鍛えられた。それこそ、巨獣指定のブルルの討伐依頼をこなせるくらいにはなっているんだ」

「最後はサイトに助けてもらったけどね」

「次に進むということは、つまりは魔物の討伐依頼を受注するってことだ。しかし、依頼には個人依頼とパーティー依頼の二種類があるのを知っているだろう」

「そうだね。でも、パーティー依頼でも三人いれば大丈夫なんじゃないの?」

「それは違いますよ~」

 僕の言葉に間延びした声でルーシーが答える。いつの間にか、彼女も僕たちのテーブルまで来ていた。

「パーティ依頼を受けるためには、ギルドで正式にパーティ登録をしている場合に限るんです。サイトさんたちはいつも三人で行動していますが、受注しているのは個人依頼。個人依頼では巨獣討伐はあっても、ほとんどが採取依頼や輸送依頼になります」

「そうなのか。それじゃあ、パーティ登録をしたい」とミアが端的にこたえる。

 けれど、これにはルーシーがかぶりをふった。

「残念ですが、今の三人では要件を満たさないのでギルドマスターもお認めにならないと思います」

「条件?」

「はい~。パーティを組む以上、最低人数は4人から5人以上。ランクがDより上のハンターがリーダーを務める必要があります。実力があれば3人でも認められる場合もありますが、Eランク二人とCランク一人では、あまりにもバランスが悪いですね~」

 ルーシーの言葉にミアは眉間に皺を寄せる。対照的に彼女はほほ笑みを絶やさずに僕たちを見ていた。

「そこで、次のステップに進むために、新しい仲間を見つける必要があるんだ」

「なるほど。でも、そんなに都合よく見つかるのかな?」

「大丈夫。それについては、あてがある。その為にルーシーを呼んだんだからな」

 サイトの言葉にルーシーが頷く。

「はい~。サイトさんに頼まれて、私が調べてましたから」と彼女が胸をはった。

「Dランクハンターの一般的な狩り場の森に、最近、大剣を持った大男が出てくるそうです」

「大剣を持った大男? あの……、森の中で勝負をしかけてきて、問答無用で斬りかかってくるとかっていう?」と僕が反応する。そんな話を確かにギルド内で耳にしたことがあったのだ。

「トリアさんは相変わらず、いろんな話をきいていますね~」

 なんてルーシーはまたニコニコしていた。そのまま話を続ける。

「聞けば、その人はハンター登録こそしていないものの、かなりの実力者。噂通り、森にやってきたハンターに勝負をふっかけては何人も倒しているらしいです。倒されてるのはほとんどDランクのハンターらしいですが、こんなことが続くと、そろそろ討伐依頼でもだされるんじゃないかなぁー、って心配してたところなんですよ」

「えっと……。まさかとは思うけど、サイト?」

「ああ、そのまさかだ」

 サイトは僕の言葉にニヤリと口の端をつりあげる。

「Dランクの森の大男。こいつを新しい仲間として勧誘する。これはリーダーとしての決定だ」

「やっぱり。なんだってそんな危なそうな人を」

「アホか! やっぱりアホなのか!?」

 サイトの言葉に僕は天井を仰ぎみて、ミアも騒ぎ出す。けれど、サイトもその反応は織り込み済みだったのだろう。僕たちを手で制すと、言葉を続けた。

「考えてもみろ。俺たちの役割編成は、ミアが前衛、トリアが後衛。俺はどっちでもつけるが、前衛がもう少しいた方がいいのは確かだろ。そこに大剣を軽々と振り回す実力者が入れば、前衛が二人確保できるし俺も後衛として指示を出しながら動けるようになる」

「それは確かだけど」

「知らない奴とか無理だ。トリアと兄貴だけで十分だ」

 納得しかける僕と、既に人見知りを発揮し始めているミア。だが、彼女が駄々をこねたところでサイトが意見を変えたことは無い。サイトの中では、既にその大男を勧誘することは決定事項のようだ。

「わかったよ。でも、ちゃんと話をしてみて、一緒にパーティを組んでも大丈夫そうな人だったら、っていうのが前提だよ」

 そして、ついに僕も認める。ミアがどこか恨めしそうに僕を見ていた。

「決まりだな。それじゃあ、新しいミッション――、『森の大男を勧誘せよ』スタートだ」

 サイトが不敵に笑う。

 こうして、僕たちのパーティ登録の為の日々がスタートした。

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