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僕たちのリーダーは異世界からの転生者のようです  作者: ぜっとん
パーティの結成 『救いの手』
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巨獣『赤灰熊』の討伐1

今回からパーティー依頼スタートです。


「雨、やまないね」

 どこか気だるげに呟くエレクトラ。相槌を返しながら、僕は濡れてしまったローブを干していた。

 屋根をうつ雨の音、パチパチと燃える薪の音。色々な音があるはずなのに、しっかりと聞こえるのはエレクが脱いでいる衣擦れの音だった。

 山小屋の中にいるのは僕とエレクの二人だけ。僕の胸が激しく鼓動する。二人きり、雨、夜の山小屋。

 頭を振って雑念を振り払う。何を考えてるんだ、僕は。

「えへへ、毛布があってよかったよね。ちょっと恥ずかしいけど、トリア君と一緒で良かったよ」

 毛布を羽織り、はにかむエレク。僕は頭を軽く柱にぶつけていた。

「トリア君も一緒に火にあたろう? 風邪引いちゃうよ」

「そ、そうだね」

 二人で暖炉の前に並んで座り火にあたる。雨風が凌げるとは言え、夜になると少し冷え込んでいた。

 炎に照らされるエレクの横顔を見ながら、僕はどうしてこんなことになってしまったのかを思い返していた。


 ………………。


「俺たちの初の依頼が決まったぞ」

 サイトが依頼を持ってくるのはいつも唐突だ。

 その日もいつものように僕たち六人はギルドに集まりテーブルを囲んでいた。

「巨獣討伐依頼。レッドグリズリー」

 サイトがクエストボードから取ってきた依頼表を読み上げる。場所は街から半日くらいで行ける渓谷。

 最近、渓谷で商隊が教われる被害が出ているらしく、街の商業ギルドからのパーティー依頼となっていた。

「なんだ、魔物じゃないのか」

 少し期待はずれだ、と言わんばかりにミアが言う。サイトも言いたいことはわかる、と苦笑した。

「すまないな。だが、今回は完全に報酬目当ての依頼だ。まず討伐報酬だが、巨獣としては最高額の依頼になる。加えて、商業ギルドから討伐参加者一人ごとに個別報酬が用意される。さらに討伐したレッドグリズリーを持ち帰れば、素材は全て買い取ってくれるそうだ」

「討伐報酬、個別報酬、素材買い取り。結構な額になるけど、そこまで出せるものなの?」

「そうだな。通常の個別依頼なら、ここまでの条件は無い。だが、今回は緊急依頼ということで破格の条件を用意したようだ。渓谷は隣国との通商で必要なルートだ。そこに商品目当てのレッドベアーが居ついてしまうと、最悪の場合取引ルートを一つ失うことになりかねない」

「なるほど、商人にとっては死活問題か」と僕が納得する。

「おまけに、レッドグリズリーの毛皮や肉、骨、牙などは加工すれば高級素材になる。商業ギルドとしても、ハンターが素材を少しでも持って帰って来てくれれば、リターンの多い取引になるって訳だ」

「話はわかったが、一ついいか?」

 僕とサイトの話を聞いていたマイトが訊ねる。

「素材を持ち帰るのは良いけどよ、この人数だと限界があるんじゃないか? レッドグリズリーの巨体だと、現地で解体して持って帰れる分だけになるだろ。六人じゃ、たかがしれてるぜ」

「あぁ、その点は心配いらない。俺がいるからな」

 言いながらサイトが小さなガラス玉を取り出す。

「これが何か覚えてるか?」

 言いながらサイトが取り出したのは、親指と人差し指で持てるくらいのガラス玉だった。

「何って……。ただのガラス玉じゃないのか」

「そう思うなら砕いてみろ」

「訳わからんが、わかった」

 マイトはガラス玉を受け取ると指先で簡単に砕く。すると、中に圧縮されていた食材がテーブルの上に広がった。ざっと見ても一日では使いきれないほどの肉と野菜だ。

「圧縮魔法か。そう言えばそんなのあったな」

「そうだ。討伐したレッドグリズリーを一体丸ごと圧縮して持って帰る。商業ギルドの倉庫にでも運べば、一体丸ごとの素材の金額がもらえるって訳だ」

 言いながらサイトはテーブルの上に広がった食材を圧縮しなおしていた。後で聞いた話だが、サイトの圧縮魔法は空間ごと圧縮して固定化しているらしい。その為、圧縮されている間は時間は止まったままで、食材が腐ったりすることもないそうだ。

「俺にも訊きたいことがあるんだが、いいか」

「何だ、カイゼル」

「報酬に恵まれているのはわかったが、どうしてそこまで金にこだわる? 確かに破格の条件だが、レッドグリズリーの討伐は危険も大きい。こちらのリスクもゼロじゃない」

「確かにな。だがノーリスクの仕事など無いし、この程度ならリスクにもならない。それに、今回の目的は報酬の先にある」

「目的?」

「あぁ、俺たち『救いの手』は今回の討伐報酬で馬車を購入する」

 サイトの言葉に僕たちは驚く。

「もちろん小型馬車だが、俺たち六人と荷物を乗せられるだけのもの、馬車を引く為の馬、諸々の維持費を考えると、通常の依頼では3~4回は受注の必要がある。しかし、今回の依頼なら1回で経費のほとんどを賄える。馬の宿舎についても、ギルドの宿舎を借りられるのを、ルーシーに確認済みだ」

 いつの間に確認したのか知らないが、サイトがここまで言うからにはほとんどの手配が終わっているのだろう。下手をしたら、購入予定の馬車まで決まっている可能性がある。

「訊くがカイゼル。この街で受注できる依頼だけで、俺たちが今よりも成長できると思うか」

「いや、それは……無いな。将来的には王都や他国を回る必要があるだろう」

 ベルベックは街道沿いにあるとはいえ、所詮は王国の片田舎だ。他国への流通の中継点にもなるから拠点としては申し分ないが、大きな仕事を受注しようと思えば、必然的に王都に行く必要があった。

 そうなると、移動手段はどうしたって必要だった。

「本来なら巨獣討伐で数カ月はこの街だけでの活動になると思っていた。だが今回の討伐を成功させれば、一か月と待たずに王都を目指すことができる。このチャンスを逃す手は無い」

「なるほどな。合点がいった」

 これ以上誰も口を挟もうとはしなかった。全員を見渡して、改めてサイトが宣言する。

「それでは、『救いの手』の最初の依頼は『渓谷の赤灰熊討伐』とする。出発は明後日だ、今日明日のうちに出発準備、身支度を整えておくように」


 こうして、僕たちの最初のパーティー依頼が始まったのだった。

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