常勝不敗2
今回は短いです。
「そいつがサイトより強い?」
サイトの言葉に反応したのは、エレクに回復して貰ったマイトだった。
愛用の大剣を手に、カイゼルの前に出る。
「君は?」
「俺はマイト=レイニーデイ。最強の拳闘士になる男だ」
「マイト……。あぁ、史上最低の筆記の点数で、Eランクハンターに登録になったと聞いている。剣の腕前ではDランクハンターでは相手にならないらしいな」
グサッと何かが深々とマイトの胸に突き刺さったような気がした。カイゼルが言っていることは何の間違いも無いのだろう。しかし、気には障ったようでいつものように大剣を構えていた。
「Cランクハンターらしいな。俺と勝負しろ。どっちが上かハッキリさせてやる」
「マイト、落ち着いてよ。それじゃあ、前と変わらないじゃないか」
「相変わらずのアホだな」
マイトを宥めようとする僕に、相変わらず我関せずといった様子のミア。
「いや、かまわない。勝負しようじゃないか」
そんな僕たちを止めたのは、マイトの前に進み出たカイゼルだった。
「あのサイトが自分からパーティを組もうとしている。そのメンバーの実力に俺も興味があったんだ」
「ん? どういう意味だ」
「サイトみたいな男が、足手まといにまとわりつかれ、凡夫に埋もれる様を見たくない、と言えばやる気も出るか?」
マイトのこめかみに青筋が走る。
「ぶっ殺す」と本気で叩きのめす気満々のようだった。
………………。
「それでは、試合のルールを確認する」
場所、ギルドの訓練場。大剣を持ったマイトと、ショートソードを持ったカイゼルの間に、何故か審判みたいな立ち位置でサイトがいた。
そして、訓練場には所狭しと観客のハンターがいる。今度は純粋に、カイゼルとマイト、二人のどちらが勝つか賭けが始まっているようだった。ちなみに、オッズはカイゼルが勝つ方が優勢のようだ。
「勝負は無制限一本勝負。魔法の使用を認めるが、他の者による支援魔法は認めない。拳闘士方式を採用し、先に相手を戦闘不能にするか、降参させた方が勝利とする。異存はないか?」
「ああ」
「問題無い」
二人が同時に頷くと同時に、サイトが「始め」と手を交差させる。
予想通りだったが、最初に仕掛けたのはマイトだ。
「うおるりゃぁぁぁぁぁぁぁああ!」
いつものように大剣を手に突撃のような一撃を叩きこみに行く。カイゼルは受け止める訳でもなく、避ける訳でもなく、マイトの大剣を受け流すように動いた。
大きな隙を作り出し、速い連撃でのカウンターがマイトを襲う。
「防御強化!」
連撃に対してはマイトは自分の腕に魔力をまとわせ、その光を持って剣を弾いていく。そのまま強引に大剣を振り回し、防御をとったカイゼルと距離をとっていた。
「どう見る?」
いつの間にか僕の隣にはサイトがやって来ていた。僕は素直に驚きを口にした。
「凄いね。マイトだって剣での戦いだったらかなり強いはずなのに、カイゼルさんの方が余裕がある」
「だろうな。ライオット家は騎士の家系だ。マイトだって拳闘士としての実戦的な戦い方もあるが、騎士としての伝統を持った剣術をハンターとして実戦に使っていったのがカイゼルだ」
大剣を持って重量級の攻撃を繰り出すマイトに対して、技術と速さでショートソードを使うカイゼル。正面から剣をぶつけ合えば、マイトに分があるのだろうが、カイゼルの技術が攻撃のことごとくを受け流していた。
そんなやりとりを繰り返すこと数度。徐々にマイトがイラつき始める。
「どういうつもりだ?」やがて、マイトが唸るように言った。
「何の話だ」
「どうして、魔法を使わない。使えないってことじゃないんだろ」
「そう言うお前も、攻撃には魔法を使っていないじゃないか」
「うっせぇ。そう言うのはいいから、全力を使ってこいってんだ」
マイトが大剣の切っ先をカイゼルに向ける。
「俺は最強の拳闘士になる男だ。ハンターだろうが、貴族の騎士剣術だろうが、最強の転生者だろうが、正面からぶっ潰す。それも、正々堂々と正面からだ。さっさと全力で向かってこい」
マイトの物言いにカイゼルが吹き出す。笑い終わった時、カイゼルがショートソードの構えを変えていた。
「思っていたよりも良い奴で良かったよ。やっぱり、サイトの仲間はそうでなければならない」
持ち手は右、右半身を前にしての前傾姿勢。騎士剣術ではない。カイゼルのハンターとしての構えだ。
「油断はしない。全力で持って相手をしよう」
カイゼルの体が深く沈みこむ。
「神速強化。剛閃撃」
呟いたカイゼルの姿は次の瞬間にはマイトの後ろにいた。それも、剣を振りぬいた格好で。
マイトの体がくの字に曲がり、訓練場に彼が倒れる。
「安心しろ、胴を叩いただけだ」
そう言うと、カイゼルは振り返りもせずに訓練場を後にする。マイトは起き上がらない。喧騒に包まれる中、僕はマイトに駆け寄るのだった。




