一ページ目 『怪物よ泣き叫べ』:一行目
暖かい目でご覧ください!
砂嵐の中、二人の男女が旅をしている。
正確には、タコ型の防塵マスクを着け、真っ黒なコートを着て、おまけにバイオリンケースを背負った二十代くらい男性一人と、同じくタコ型の防塵マスクを着け、真っ赤なポンチョを着て、さらにリュックサックを背負った十歳くらいの少女一人。少女の頭には『アレ』が生えていた。
「先生~、足疲れた~。まだ着かないの?」
少女が喚く。
「黙って歩け、シオリ。もう少しのはずだ」
『先生』と呼ばれた男が冷たい声でそう答えた。
「本当にこっちの方向で合っているの? 先生」
「合っている......はずだ。しかし、この砂嵐の中じゃあ、あったとしても見つけられないな」
「通り過ぎたかも?」
「その場合、お前のせいだな」
「なんで!?」
先生はシオリの頭に生えている『アレ』をビシッ!と指さして言う。
「『それ』は何のためにある? 俺は『耳をすませ』と言ったはずだ。人の声でも、車の音でも、銃声でも、人工知能の起動音でも、何でもいい。何か聞こえたらすぐに言え」
「あー、そういえば、だいぶ前に向こうから人の声が聞こえたよ?」
シオリが三時の方向を指さしながら言う。
ドヤ顔だ。
「............」
先生がシオリの腰に無言の蹴りを入れる。
「なんで!?」
少女が喚く。
こんな二人が主人公です。