〇ページ目 『前文』
この話は、この物語の世界観を説明したものとなります。
本編は次の話から始まりますので、「世界観? そんなの知ったこっちゃあねぇ!」という方は、次の話からご覧ください。
この世界にはかつて、国が存在した。
それぞれの国は領土を持ち、国民が暮らし、主権を主張していた。
かつては、だ。
今現在、この世界には存在しない。
七日間の戦争により、すべての国が滅んだ。
この七日間の戦争で勝者となった国には、これまでの戦争と同じように、広大な庭と莫大な資金と巨大な権力が与えられる予定であった。だが与えられなかった。予定は未定、とよく言われるものではあるが、まさにその通り。
なぜ与えられなかったかは、前述した通り、すべての国が滅んだからである。
互いに互いを攻撃しあい、保護しあい、道連れにしあった。その結果、すべての国が滅ぶこととなる。互いに互いを潰しあい、滅びあい、消しあった。その結果として、すべての国が一つ残らず破滅した。
与えられる側と与える側、その両方とも破滅した。
七日間の戦争によって。
七日間。
人類はその戦争を様々な名で呼ぶが、もっともポピュラーなのは『七日間戦争』であろう。
七日間戦争。
その戦争が終わってから随分と長い時間がすぎ、その戦争を自分自身の目と耳で直接知る者も随分と減り、わずかではあるが七日間戦争を知らない者もぼちぼちと出始め、さらには国という概念すら持たない者もかなり多くいる、現在。
そんな現在ではあるが、これだけは明記しておく。
国が存在していたのは確かであり、国がすべて滅亡したのも確かである。
さて。
さてさて。
本文に入ろう。
このページのすべての文章は前文でしかないが、前文の中の肝心なところを、今から語る。ついに語れる。
作者は先ほど『人類はその戦争を様々な名で呼ぶが、』と表記した。
つまり、人類は絶滅していない。
戦争によってすべての国が滅んだが、すべての人類は滅ばなかった。
国は消えたが、世界は、地球は、人類は消えなかった。存在している。
国は終わったものの、世界は終わらなかった。
語弊のないように解釈しておく。ここでの世界とは『国々』という意味ではなく『地球、この世』という意味である。
世界を手中に治め世界を管理していた国々が滅ぼうと、世界は続く、歴史は続く。
人類が生き残っているのならば、なおさら。
人類の物語は続く。
世界は継続する。
世界は終わらない。
戦争が終わった後。国が終わり、このまま世界も終わるのだと、そう思い舞台の幕が閉じるのをしばらくぼーっとしながら待っていた人類ではあったが、どうやら世界は続いちゃうらしいと、遅れながらも気付いた人類は行動を起こした。
まず人類がしたこと。
それは、世界の新たな管理者を決めることであった。
えっと......何故に?
今から説明する。
人類はまずこう思った。
『世界を管理していた国が滅んでしまった。管理せずに放置したら、世界は終わるかもしれない!』
......まあ、そう思うのも無理はなかろう。
人類はすっかりと、この世界は自分たちの所有物だと思い込んでいたのだ。
大切な所有物を管理していた国が滅んでしまい、管理者が消えたこの世界はどうなってしまうんだ?
管理せずにほっとくと、この世界はどうなるんだ?
不安、そして焦り。
この二つの感情を中心に、似たような感情がいくつもいくつも入れ混じり、人々は新たな管理者を探すことに躍起になっていた。
そんな混乱の中、さらなる混乱が発生する。
世界各地で。
不思議な病気(猫耳が生える病気とか、空に落ちる病気とか)が確認されるようになった。
なんとか残っていた医療学や化学を駆使しても、治療できない解明できない原因不明の病気。前例のない記録のない謎の病気。
それらの病気が現れたことにより、管理者決めの混乱に拍車がかかった。
困惑し混乱する人々の中、とある組織がついに挙手をする。
とある組織――企業である。
国は終わったが、世界と同様に企業もまた終わってはいなかった。国が滅んだ今現在、人類という絶対的な組織の中では、もっとも大きな組織でもある。
人々は世界の管理を企業に託した。もちろん反対する他の組織もいたのだが、先に挙手しなかったのが悪いと言われ口を閉じたそうな。
色々あったが結果的に、人々は世界の管理を企業に託した。
人類は、企業を、世界の新たな管理者に認定した。
国から企業へと。
世界は継承する。
前文はこれにて終了。
本文、
この世界で仕事のために旅をする、一人のシニガミと一匹の猫がいた。
読んでくださりありがとうございます。
本編も読んでくださると嬉しいです!